「子ども第三の居場所」 明石市長に聞く!「子ども第三の居場所」の重要性

子ども第三の居場所
明石市長に聞く!「子ども第三の居場所」の重要性
2022.06.15 UP

日本財団助成事業

明石市では、2021年9月から子ども第三の居場所「あかしフリースペース・トロッコ(以下「拠点」という)」の運営を開始し、現在約20名の子どもたちが通い、自分らしく過ごしています。

明石市は、全国でも子育て支援施策に力を入れている市町村の一つで、高校3年生まで医療費の無料化や第2子以降の保育料の完全無料化など子育てに対して手厚い支援を行っています。

今回は明石市の泉 房穂市長に「子ども第三の居場所」の役割や重要性などについて話を伺いました。

兵庫県明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

明石市二見町生まれ。東京大学教育学部を卒業後、NHKに入局し、その後、弁護士を経て衆議院議員に当選。2011年5月に明石市長に就任され、障がい者、子ども、高齢者をはじめ、 「人」に「やさしい」施策を積極的に推進。特に子どもに対する施策に熱心に取り組まれています。

兵庫県明石市長 泉 房穂(いずみ ふさほ)

―明石市ではこれまでにも様々な子ども支援策を推進されていると思いますが、「子ども第三の居場所」に申請したきっかけを教えてください。

子どもの居場所づくりに、市単独で取り組むかどうか考えたときに、B&G財団にしっかりと応援いただく体制を作った方がよいと考え申請しました。B&G財団から資金面でも運営面でも応援いただきながら、現在、教育委員会や教育部局、民間が連携を取りながら運営ができているので、とてもありがたいと思っています。

子どもにとっても、いろいろな居場所があった方が多くの選択肢の中から居心地のいい空間を選ぶことができ、子どもを取り巻く環境整備として、「子ども第三の居場所」は大事な選択肢の一つであると感じています。

―昨年9月から運営を開始し、主に不登校児童を中心に支援している中で、「子ども第三の居場所」を通して見えた子どもたちの変化やエピソード等をお聞かせください。

何よりも大きいのが、拠点に居心地がいいと思って通っている子どもが何人もいることです。学校側から「学校に来てほしい」というだけでなく、学校側から紹介されて拠点に通っている子どもたちもいて、その点に関しては良かったですね。

今では学校と拠点を行き来する子もいるし、拠点をベースに活動している子もいて、両方が子どもたちの居場所になっており、子どもたちが安心して過ごすことのできる空間になっている。私自身も拠点に行って子どもたちと食事をするときにそう感じます。

その子にとって良い環境となるよう、学校の教職員と拠点スタッフとの連携もうまく取れています。

拠点に通う子どもたちは年齢もさまざまで、年上の子が小さい子の面倒を見るなど、拠点内での支え合いが始まっています。運営当初は、みんなよそよそしいところもありましたが、時間が経つにつれて、拠点スタッフとも仲良くなり、馴染んでいっているんじゃないかと思いますね。

運営を開始してみると、とてもニーズが高く、定員を新たに増やし受け入れ態勢を広げる方向で考えています。「子ども第三の居場所」がもう一か所あった方がいいのではないかと思えるくらい必要とされている場所です。

―運営していく中で感じた、子ども第三の居場所の重要性や必要性を教えてください。

子どもにとって居心地のいい空間とは何なのかを考えたときに、多くの子どもにとって学校はいい場所であったとしても、児童全員がそう感じているわけではないからこそ「子ども第三の居場所」は必要です。

「大人の目線か子どもの目線か、どちらからものを見るか」

大人の目線だと、一律で「学校に来なさい」「学校でこうしなさい」となりがちですが、世界ではその考え方は珍しく、他の国では「子どもの育ちを応援する」というのが主流で、私もその考えです。

運営を開始するにあたって懸念したことは、拠点に来ている子どもたちが学校と切り離されてしまって学校にいかなくなることだったのですが、今回の取り組みでは「学校もいいところだが、学校以外のところで過ごすのも一つの選択肢だよ」というスタンスで、学校か拠点かの二択ではなく、行ったり来たりできるのが一番の強みです。

行政が間に入り、学校・地域・民間(運営者)が連携を図り、子どもが拠点と学校の行き来ができ、いろいろ試しながら自分の居場所を探していくことができる環境を整えています。公が責任を持つ、運営は民間にしっかりやっていただく、そこに学校が連携していくといういい形でスタートできて、こうした体制が全国に広がっていくことが望ましいですね。

子どもの人生は親や先生が決めるものではなく、子ども自身が選び取って決めるものであり、成長過程において大人から見たら危ないものや間違っていることも多いと思うが、そうはいっても最終的には子どもの人生は子ども自身に決めさせることが必要だと思います。選択肢がないと選ぶことすらできないので、選択肢を与えるという意味でも「子ども第三の居場所」は大きな意味がありますね。

―今後、どのように取り組んでいきたいとお考えですか。

ニーズがあるので、まずは定員を増やして対応していきたい。不登校など学校に行きづらい子どもたちへの対応のほか、そうでない子どもの居場所としても活用していきたいと考えています。

毎日学校に行ってはいるが家庭や親子関係に問題を抱えており、家に帰る前に気持ちが落ち着く居場所に行って、スタッフに悩みを相談したり、仲間と過ごしてホッとする時間が欲しい子どももいる。

保護者としても、自分の子どもが学校に行きづらい状況が続いて、世間体も含めて悩みを抱えている方が多いので、保護者に対するフォローもしっかりしていく必要があります。

保護者への丁寧な対応は、運営者側も十分認識しており、保護者会や相談会を開くなど個別の対応を始めています。今後、さまざまな状況にある子どもたちが安心して過ごせる居場所として、その果たす役割は非常に大きいと思っています。

6月17日(金)・22日(水)・29日(水)の14:00から「子ども第三の居場所」のオンライン事業説明会を開催します。ぜひご参加ください。

子ども第三の居場所は、子どもたちが安心して過ごせる環境で、自己肯定感、人や社会と関わる力、生活習慣、学習習慣など、将来の自立に向けて生き抜く力を育む事業です。
現在日本財団と協力し、2025年までに全国500拠点開設を目指し事業を拡大しています。

 

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