事業内容を知る 「子ども第三の居場所」

「体験の差」を解消し、健全な子どもの成長をサポート。
自立運営後も自治体や学校など子育て支援関係者と密な連携をとりながら“子ども第三の居場所づくり”を進める「b&g大町」

2023.01.06 UP

日本財団助成事業

豊かな自然に囲まれた子ども第三の居場所「b&g大町」

豊かな自然に囲まれた子ども第三の居場所「b&g大町」

長野県の北西部 北アルプスの麓に位置し立山黒部アルペンルートの起点として知られる大町市は、1982年に艇庫・体育館を備える「大町市B&G海洋センター」が竣工し、多くの市民に利用されています。そして2019年、B&G財団の助成により“子ども第三の居場所「b&g大町」”(以下「b&g大町」)が開設されました。
 「b&g大町」は、大町市と連携し、NPO法人キッズウィルが拠点運営を行い、常設ケアモデルとして、子どもたちの基本的生活習慣の育成に力を入れるとともに、地域の豊かな自然を活かした体験活動も積極的に取り入れています。

参考記事

「この町が大好き」と言える大人になってほしい。
大町拠点が取り入れる自然体験

※日本財団子どもサポートプロジェクト 2020年寄付活用レポート記事より

 b&g大町拠点マネージャー 甘利 直也さん

今回、開設当初から「b&g大町」の拠点マネージャーを務めるNPO法人キッズウィルの甘利直也さんに、拠点の運営についてお話を伺いました。

子どもたちの健全な成長のために「体験の差」を解消する役目を果たす

「b&g大町」は、平日は放課後13時、学校休業日は朝9時から、夜は21時まで開所。特に、“子どもたちの基本的生活習慣の育成”に力を入れています。これは、甘利さんが子どもや家庭の支援に携わる中で、“子どもにとって「体験の差」は成長に大きな影を落とすことになるのではないか”と感じているためです。

甘利さんは、「体験の差」について、
「生活環境に何らかの困難を抱えている家庭のお子さんの場合、体験の機会が失われていることが多いように感じます。ここでいう『体験』とは特別なことではなく、食事、歯磨き、入浴、洗濯、暖の取り方など、普段の生活で当たり前にしていることも含まれます。 生活習慣の確立は、日々の体験の積み重ねで出来るものです。普段の生活の当たり前の体験が、当たり前にできないお子さんもいる。その結果として、いつも疲れていたり、周りとトラブルになったりすることもあって、自信を無くしてしまう。基本的生活習慣が身についてくると、子どもは精神的にも身体的にも安定します。そうなって初めて、自然体験などに挑戦する余裕が生まれ、達成感や自己肯定感を得る機会にもつながっていきます。ですから『b&g大町』は、第一に『体験の差』の解消を目指しています。」 と話されました。

 b&g大町拠点マネージャー 甘利 直也さん

b&g大町拠点マネージャー 甘利 直也さん

この考えに基づき「b&g大町」では、21時までのあいだに、子どもたちが夕食はもちろん洗濯や入浴、歯磨きまで済ませて帰宅できるようスケジュールを作成。子どもたちの「体験の差」を、家庭や学校以外の場所でも解消できるよう支援しています。
 甘利さんは、「保護者・家庭の支援」について、
「支援は子どもだけでなく、保護者の生活環境を整えることにもつながります。『b&g大町』の支援により、保護者が職業訓練に専念できて就職につながったケースや、子どもへの不要な叱責が減ったというケースもありました。『b&g大町』は、健康的な生活習慣の確立や生き抜く力を養うことができる支援を継続して行うことができるよう、子どもだけでなく家庭の支援も見据えて活動しています。」
と話されました。

「b&g大町」運営成功の肝は、自治体の理解と連携を得られる関係構築

「b&g大町」は「子ども第三の居場所」事業の3年間の助成期間を終え、2022年度から自立運営に移行しています。
NPO法人キッズウィルは、「b&g大町」設立前から障害児通所支援事業に携わっています。その支援会議などを通じて、大町市の子育て支援課や学校など、関係各所と密に連携をとってきました。そのため、大町市から直接「子ども第三の居場所」拠点運営の依頼を受け、市の子育て支援課と連携しながら、学校などの各子育て支援関係者から周知・理解を得て、地域に根づいた子育て支援を実現できました。今年2022年度からの自立運営にあたっては、以前から指定申請している「障害児通所支援事業」および、新たに「支援対象児童等見守り強化事業」の受託により 国の助成を得ています。

子どもたちでにぎわう「b&g大町」の普段の様子

子どもたちでにぎわう「b&g大町」の普段の様子

甘利さんは、「今後の拠点運営」について、
「大町市は、2015年度から『大町市子ども・子育て支援事業計画』に基づき、子育て支援事業の充実を図っています(2020年度からは第二期開始)。地域の人からも、出産後の支援や学校での個別支援など、『大町市のサポートはしっかりしている』という話をよく耳にします。『b&g大町』開設も、大町市がその必要性を強く認識していたからこそ、スムーズにできたと思います。NPO法人が依頼を受けて子ども第三の居場所を開設、運営するにしても、自治体の理解と連携は欠かせません。」
と話されました。

  • 勉強を教えてもらう子ども

  • 子ども達と一緒に食事

10年先、20年先にも心のよりどころとなるような居場所をめざして

2種類の 国の助成を得て、スムーズに自立運営に移行した「b&g大町」。甘利さんは、多くの課題の中で、今の事業を“安定して継続すること”を第一に考えています。
「今は“子どもや家庭が安定した”という実績をどんどん積んでいく。それが『子どもの居場所づくりは大切』という認識が広がることにつながります。そうなれば、事業運営を継続し易くなり、子育て世帯も支援を受け易くなる。」と甘利さんは話されました。
 また支援の質を高めていくには、職員のスキル向上も欠かせません。「b&g大町」では、社会福祉士、保育士、相談支援専門員といった専門資格のある人材の確保に努めるとともに、資格取得をめざす若い世代の採用も積極的に行っています。

最後に甘利さんは、この様に語られました。
「子どもが安心して過ごせる居場所をつくるには、いろんなスタッフが交代で対応するより、常勤スタッフが揃っていて長い期間支援することが大切だと思います。だからこそ、若手のスタッフを育成したい。それは小学校6年間で終わるのではなく、10年先、20年先、大人になって何かにつまずいた時に、『b&g大町』に帰ってきたら同じ職員がいてくれる。そこで昔の生活を思い出して、ほっとできるような場所になれば良いなと、私は願っています。」

今後のb&g大町の展望を語られる甘利さん

大町市を故郷とする子どもたちの、心のよりどころとなる場所を目指して、「b&g大町」は、地域の皆様と一丸となって「子ども第三の居場所」づくりに取り組んでいます。

子ども第三の居場所の設置自治体を募集しています。ぜひ、お気軽にB&G財団 企画課(TEL:03-6402-5311 mail:kikaku@bgf.or.jp)までお問合せください。ご応募をお待ちしております。

2023年度「子ども第三の居場所」実施自治体を募集!

家庭環境や経済的理由などさまざまな事情により、家で過ごすことが困難な子どもたちが、放課後から夜間までの時間を過ごすことができる拠点として整備を進めている「子ども第三の居場所」。2025年度までに全国500ヵ所の設置を目指します。

 

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