事業内容を知る 「子ども第三の居場所」

第7弾 子どもファーストな居場所づくり!
ー多様な児童や家庭への関わり方ー 横芝光町拠点編

2024.02.22 UP

日本財団助成事業

「子ども第三の居場所」事業では、多様な子どもを支援しているが、明確な基準やマニュアルなどは存在せず、その関わり方も様々である。今回は、子どもが子どもらしく過ごせる居場所づくりをしている横芝光町拠点の事例を紹介する。

多様な子どもや家庭に関わる横芝光町拠点「えみふる」

夏休みに施設内で行われたプログラミング教室

夏休みに施設内で行われたプログラミング教室

千葉県山武郡横芝光町の子ども第三の居場所「えみふる」は、2023年4月から子どもの居場所事業を開始した。運営している特定非営利法人リンクは、子どもの居場所事業の他にも「中核地域生活センター事業」、「生活困窮自立支援事業」、「支援対象児童見守り強化事業」を実施しており、家庭訪問によるアウトリーチや、相談支援を実施しており、精力的に地域の子育て支援を行っている。その中で直面した課題や心がけていることなどを、拠点マネージャーの赤堀さんと自治体担当者の横芝光町健康こども課の佐久間さんに伺った。

保護者が支援に難色を示したときの対応は?

佐久間さん:
「家庭訪問や相談事業の中で、子どもに支援や第三者が関わっていくこと等が必要であると働きかけても、家庭環境や保護者の考えなどもあるので、難しい部分もあります。なのでまずは話を聞き、基本的には聞き役に徹し、子育ての不安などに耳を傾けることを繰り返し、拠点と関われば話を聞いてもらえる!という安心感を持ってもらえるように心がけました。そうすることで家庭との信頼関係を築いていきました。」

横芝光町の佐久間史子さん、拠点マネージャーの赤堀久里子さん

横芝光町の佐久間史子さん、拠点マネージャーの赤堀久里子さん

赤堀さん:
「電話や家庭訪問などで『子育てって大変だよね』『毎日ご飯を作るのも疲れちゃうよね、食堂に来たら?』『今日はお弁当を持ってきたよ』『話を聞くよ』と寄り添い、拠点やちいき食堂の利用を促しました。「ここに関わるといいことがある」という信頼関係を積み重ねていくに従い、少しずつ保護者の気持ちに変化が出てきたのではないかと感じています。何よりも子どもが拠点で遊ぶことを『楽しい!』と親に伝えたこと、実際に笑顔で活き活きと遊んでいる姿を目にしたことで、保護者は拠点を利用したいと思えるようになったのではないかと思います。」

さらに、保護者が子どもと積極的に関わりを持たない場合、家族で拠点を利用してもらえたときに、保護者が子どもと一緒に遊ぶ接点をつくる働きかけをしたという。 時間をかけて対話していくことで、「支援なんていらない」という状態から「子どものためになれば」「疲弊している自分たちも助けてもらえる」と、よい変化を生み出すことができた事例だ。

子ども同士のトラブルが起きたら……

コミュニケーション力が成熟していない子どもだと、自分の思っていることをうまく表現できなかったり、相手の思いをくみ取れないために、トラブルになることも珍しくはない。

赤堀さん「子ども同士のトラブルが起きた場合、何があったかを整理するために少し介入などはしますが、ケガや命の危険がない限りは、根掘り葉掘り聞いたりはしません。早期に解決を図るよりも、部屋を分けるなど距離を取ることを基本に、そばで見守る、寄り添う方向で対応しています」

トラブルの種類や子どもの様子にもよるが、起きたことをその場ですぐに整理できなかったり、言葉での説明がうまくできなかったりする子どもを追い詰めないような働きかけを大切にしているそうだ。

また、子どもたちへの対応としては「ダメ」という言葉は使わず、「こうしたらいいね」「これができたらかっこいいね」など、変わって欲しい姿へ導く声がけや関係づくりを心がけているという。

9月にB&G海洋センターで行われたカヌー体験教室

9月にB&G海洋センターで行われたカヌー体験教室

さらに、経験の中から、外や体育館の中などの広い場所で、思いっきり体を動かして遊ばせると、トラブルはほとんど起きないとのこと。「えみふる」では、海や川が近い立地を活かして海遊びやカヌー体験なども実施している。順番やルールを守らないなど多少のトラブルは起こるが、広い場所で遊んでいるときは、見守っているうちに沈静化するという。

子どもたちは、ゲームや動画視聴など部屋の中で過ごすことが多い傾向にあるが、拠点の中だけで支援を完結させるだけでなく、自由にのびのびと体を使う体験は子どもたちの心身によい影響を与えるようだ。

スタッフに必要な資質は「子どもと同じ目線で遊べる人」

町内の坂田池公園で遊ぶ子どもたちと若手スタッフ

町内の坂田池公園で遊ぶ子どもたちと若手スタッフ

「えみふる」には、社会福祉士と精神保健福祉士の資格を持つ赤堀さんをはじめ、有資格者も多くいるという。しかし赤堀さんが考える、多様な子どもたちに対応するために必要な資質は、「子どもの目線で一緒に遊べる」こと。ここでは、「自立」を促すよりも「子どもが子どもらしく過ごせることが一番」という思いのもと、カヌー体験など遊びを通じて、人生を育むためのスキルやコミュニケーションのネタを増やす場所であることをブラさないように運営を行っている。楽しいと思える遊び、得意だと思える遊びの体験が、いつか特別な思い出になったり、自分で誇れるような機会につながっていってほしい。

スタッフの困りごとの共有やフォローも大切

日々、多様な子どもや家庭と関わることで、スタッフが様々な場面に対応しているケースを見てきたという。「えみふる」では、定期的に職員会議を行い、スタッフの気持ちや困りごとを共有し、モチベーション維持に努めている。
また、日々のミーティングでは、その日に利用する子どもの情報を共有し、対応方法などを確認するほか、スタッフのフォローも適宜行っている。しかし、それだけでは十分ではないと考えているため、今後、課題のある子どもたちに支援者としてどのように関わるかという内容で、専門家との研修を町と企画中だという。

日々行っているスタッフ間のミーティングの様子

日々行っているスタッフ間のミーティングの様子

まとめ

「えみふる」は、拠点マネージャーの赤堀さんや横芝光町の佐久間さんが連携し、子どもファーストで精力的に活動していることで、子ども一人ひとり、そして家庭に寄り添い、必要な支援が必要な子どもや家庭に届けることができている事例だ。
さらに赤堀さんは、「えみふる」を拠点に、地域交流の場を作っていきながら、地域で子どもたちを支えていく仕組みも構築したいと話す。地域で見守ることができれば、多様な子どもたちや家庭への理解を得ることができ、孤立を防ぐことにもつながりそうだ。

「子ども第三の居場所」のお問い合わせはB&G財団 子ども支援課(TEL:03-6402-5311 mail:kodomo@bgf.or.jp)までご連絡ください。

家庭環境や経済的理由などさまざまな事情により、家で過ごすことが困難な子どもたちが、放課後から夜間までの時間を過ごすことができる拠点として整備を進めている「子ども第三の居場所」。全国200か所(2024年2月1日現在)に設置され、全国への更なる開設を目指す。

B&G財団は、引き続き子ども第三の居場所の設置自治体を募集しています。ぜひ、お気軽にB&G財団 地方創生部 子ども支援課(TEL:03-6402-5311 mail:kodomo@bgf.or.jpまでお問合せください。ご応募をお待ちしております。

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