マンガふるさとの偉人
抹茶の産地(西尾茶)として、また「三河の小京都」として知られる愛知県の西尾市が、2022年度「マンガふるさとの偉人」事業の製作自治体として、岩瀬文庫の創設者「岩瀬弥助」を題材に『岩瀬弥助物語-岩瀬文庫を作った男』を製作した。
誰でも簡単に楽しく地元の偉人「岩瀬弥助」を学べることをコンセプトに、今年度より郷土教育の教材として偉人マンガを活用してもらえるよう、小・中学生の学習用タブレットから閲覧できるようにした。
偉人マンガの製作検討委員会のメンバーである、西尾市鶴城小学校の教務主任を務めている真鍋先生に話を伺ったところ、岩瀬弥助については偉人マンガが出来上がるまで、岩瀬文庫のパンフレットや、学校の教員自身が集めてきた資料等を使用し授業を実施してきたが、それらは小学生には難しく、マンガのように誰もが読める資料が求められていたようだ。
「偉人マンガができて、偉人マンガを授業に導入したことで、子ども達が圧倒的にその全体像、例えば岩瀬弥助氏の生涯のこと等について、つかむのが早くなりました。これによって授業の時間が短くなり、効率化が図れました。あと、マンガですので、子ども達が感情移入しやすく、人物の気持ちを少し考えやすくなった気がしました。偉人マンガがこの地域にとって貴重な教材になっていくことを期待しています」と、真鍋先生は偉人マンガが学校授業にもたらした変化と今後への期待を語ってくれた。
また、学校授業で学ぶだけではなく、岩瀬弥助への理解を深めるため、生徒たちに実際に岩瀬文庫に足を運んでもらうような岩瀬文庫見学も実施されている。今回は12月19日(火)に実施された、市内にある鶴城小学校4年生全クラス約120名の生徒に向けた岩瀬文庫見学の様子を取材してきた。
偉人マンガ製作を主担当していた岩瀬文庫の学芸員上野さんの話によると、偉人マンガが完成する以前も岩瀬文庫で小学生や中学生の団体見学を実施してきたが、岩瀬文庫や創設者の岩瀬弥助の凄さが十分に伝わっているか、心もとなく思うことがあった。偉人マンガが出来てからは、誰もが岩瀬文庫や岩瀬弥助について簡単に理解できるようになったので、より質の高い案内ができるようになったそうだ。
また、見学時の案内方法も変化が起きたようだ。「マンガがなかった時は、もともと掲示しているパネル等を用いて説明していたが、マンガが出来てからは、マンガのページを見せながら、「このページに描かれている建物や古典籍の実物がこちらです」というように、案内しやすくなりました。また、マンガを活用することで、より興味や親しみを持ってくれるような印象があります。「今回もマンガを読んでくれた人はいますか」と問いかけたら、みんな手を挙げてくれて、弥助さんのこと知っている人が着実に増えているという実感があって嬉しいです」と、偉人マンガが岩瀬文庫にもたらした変化について語ってくれた。
岩瀬弥助が作った旧書庫(国登録有形文化財)の見学
まず見学したところは岩瀬文庫のシンボルとなっている煉瓦造りの旧書庫。偉人マンガに描かれた旧書庫の着工から完成までのストーリーのページを印刷し、岩瀬文庫の学芸員がそれを生徒たちに見せながら旧書庫の歴史を振り返った。その後実際に旧書庫の中に入り、蔵書をきれいに保管できるよう岩瀬弥助が工夫したところを見学した。
岩瀬文庫閲覧室へ マンガに描かれた岩瀬弥助が集めた古典籍の見学
旧書庫の見学を終えた後、2003年に新たに建設された本館の2階にある閲覧室に移動し、偉人マンガに登場する岩瀬弥助が集めた古典籍の現物を見学した。
この閲覧室は18才以上なら、誰でも・いつでも・すべての蔵書を閲覧できる部屋で、貴重な資料にもかかわらず本を実際に手に取ってよむことができるのは、世界中の博物館を見ても滅多にない取り組みで、「誰もが自由に本が読める場所を作ろう」という岩瀬弥助の意思が引き継がれていることが強く伝わった。
岩瀬文庫の更なる活躍 常設展示室の見学
最後に、日本の「本」の長い歴史やゆたかな文化について学ぶことのできる常設展示室を見学した。マンガに描かれている岩瀬弥助が書いていた読書ノートや、当時の図書カード(蔵書を管理するためのカード型の目録)などが展示され、生徒たちは展示室を回りながら熱心にメモを取っていた。
当日の見学に参加した西尾市鶴城小学校の生徒たちが、「マンガが読みやすかった!」「マンガにあった古い本の実物が見れて楽しかった!」等、偉人マンガに対する好評の声を上げてくれたほか、「弥助さんが8万冊の本も集めてすごい!」、「旧書庫の中をみてびっくりした」等、見学した感想も話してくれた。また、「弥助さんはお金持ちなのに贅沢な生活はせず、本が読めない人たちにもいろんな工夫をして文庫を作ってすごいなと思った」、「弥助さんは自分のためにお金を使ったのではなく、本を未来に残すために努力したのがかっこいいと思った」等の感想もあり、マンガを読んだ子ども達の、岩瀬弥助に対する理解がとても深く、岩瀬文庫を作った岩瀬弥助の信念が強く子ども達に伝わったイメージを受けた。
西尾市では偉人マンガを活用し、岩瀬文庫の創設者「岩瀬弥助」の生涯と活躍を今後も永く、地域の子供たちに伝えていくことを目指す。
教科書では学べない “郷土ゆかりの偉人” に関するマンガを制作し、地元の小中学校等での活用を通じて、ふるさとへの興味関心の向上(郷土教育)、将来の生き方や生活を考えるきっかけ(キャリア教育)につなげることを目的に「偉人マンガの製作と活用事業」を実施。2021年度から2023年度までに全国100自治体で実施している。
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