2023.03.01 UP 休眠預金等を活用した体験格差解消事業 2022年度第3回実行団体全体会議を開催 (東京都港区)

休眠預金を活用した事業のシンボルマーク

休眠預金活用事業3ヵ年の最終年度となった2022年度の「実行団体全体会議」が、2月16日~17日の2日間 B&G財団事務局会議室(東京都港区)で開催され、「障害児等の体験格差解消事業」に取り組む10団体と関係者27名が出席し、3ヵ年の成果・活動報告と今後の活動計画発表、グループディスカッションなどを行いました。
 初めに、B&G財団常務理事古山透の開会挨拶、休眠預金等交付金の指定活用団体「日本民間公益活動連携機構(JANPIA)」岡田太造専務理事から来賓挨拶をいただきました。

  • B&G財団 古山常務理事

    B&G財団 古山常務理事

  • 日本民間公益活動連携機構 岡田専務理事

    日本民間公益活動連携機構 岡田専務理事

参加者アンケートの分析結果

続いて、東北大学加齢医学研究所瀧靖之教授から、2020年度から2022年度にかけて本事業参加者に実施した「自然体験と参加者の心理的健康の関係性」に関するアンケートの分析結果を報告いただきました。
 休眠預金を活用した「障害児等の体験格差解消事業」は、2020年度~2022年度の3年度間にわたり全国10ヵ所の実行団体と実施しました。

今回のアンケート調査の分析により、「子供が自然体験を行うことで日常的な不安感や緊張が有意に低下した」ことが明らかになりました。この結果は、「児童期における自然体験が、その後高校生、大学生になったときの不安や緊張を低下させた」という先行研究(山本俊光、2017)の結果と一致しています。また、「生活充実度が向上する傾向」が見られ、これは「中学生を対象としたキャンプの自然体験活動後に、学校生活の充実度が増加した」という先行研究(小谷正登、2016)の結果とも一致しました。
 さらに、子供のころの自然体験が豊富な大人ほど、やる気や生きがいを持ち、学歴が高く収入が多いことが報告(独立行政法人 国立青少年教育振興機構、2010)されており、児童期の自然体験が重要であることが示唆されています。

東北大学加齢医学研究所 瀧教授

東北大学加齢医学研究所 瀧教授

  • 資料映像

  • 資料映像

3ヵ年の成果・活動報告と今後の活動計画

各団体の発表要旨は、以下のとおりです。

宮城県障がい者カヌー協会(宮城県仙台市)

パラカヌー競技活動を通じて、障がいのある子どもたちだけでなく、協力団体や個人ボランティアの確保など活動の基盤作りが出来た。今回のプロジェクトを通じて、パラ(身体障がい者)だけでなくスペシャル(知的障がい者)の選手育成にも力を注いでいく。

龍ケ崎市B&G海洋クラブ(茨城県龍ケ崎市)

3年間のウィンドサーフィンや環境保全活動を通じて、市内の関係者に海洋クラブの活動が認知されるようになった。クラブに対する地元関係者からの期待は大きく、今後団体のNPO法人化を予定している。

認定NPO法人オーシャンファミリー(神奈川県葉山町)

本団体の「発達障害・知的障害児の体験格差解消事業」の成果を検証した神奈川大学人間科学部渡部かなえ教授の論文が、オーストラリアの学会で教育学分野の最優秀論文賞を受賞した。改めて自然体験の意義と重要性を認識し、今後もより多くの方々の海体験をサポートしていく。

認定NPO法人Ocean's Love(神奈川県茅ヶ崎市)

サーフィン活動を通じて、参加した知的障がい児・発達障がい児は、社会性・自尊感情の向上が見られた。保護者からは「普段の生活で出来なかったことが出来るようになった」など子どもの変化を喜ぶ声が寄せられた。2021年10月に放課後等デイサービスを設立し、多くの子どもが体験できるイベントと継続的に参加できる放課後等デイサービスの両輪で活動していく。

公益財団法人身体教育医学研究所(長野県東御市)

これまで水辺のアクテビティと縁のなかった山間部の当地域において、農業用ため池を特別な利用許可を得てカヌー・SUPなどの活動を実施できたことは非常にインパクトがあり、当初の想定を超えて修学旅行の代替や大学の実習受入れ、企業との連携など様々な広がりを見せた。今後もため池を新たな地域資源として活用し、様々な人・団体と連携して活動を継続していく。

有限会社SHIPMAN(静岡県浜松市)

体験格差事業の活動を通じてバリアフリー器材が充実し新しいことにチャレンジできるようになった。今後は特別支援学校や支援学級だけでなく、不登校児支援の拡充や外国人の児童支援にも力を注いでいく。

NPO法人海の達人(三重県津市)

コロナ禍の制限がある中での活動となったが、障がいを持った方でもマリンスポーツを安心・安全に楽しむことが出来た。活動ボランティアとして三重大学の自然環境リテラシー学の学生との協力・連携体制が築けたことは、今後の活動に有益であった。

NPO法人コバルトブルー下関ライフセービングクラブ(山口県下関市)

ひとり親家庭の親子を対象に3年間キャンプ活動を実施し、参加した子どもや保護者の心の変化(自己肯定感、非認知能力など)と一般的な親子との変化を可視化することで、今回のプロジェクトの有益性を実感した。

株式会社FEEL(山口県下関市)

自然体験活動を通じて、参加者の「できない」・「苦手」の克服、多くの施設・団体との連携が強化され、活動が広がった。今後は、施設や団体を卒業した障がい者等にも、体験機会を提供していく。

特定非営利活動法人あそびとまなび研究所(福岡県北九州市)

コロナ禍での活動ではあったが、子供たちや保護者に対し、自然の中での仲間やあそび、学べる場を提供や海洋環境保全活動など年間を通じて活動が出来た。今後は活動に携わっている団体とより連携し、地域の体験格差解消事業に取り組んでいく。

会議の様子

ディスカッション

次のテーマで参加者によるディスカッションを行いました。これまでの実行団体全体会議は、コロナ禍によりWeb会議でしたが、今回は参加者が直接対面するリアル会議となり熱の入った意見交換が行われました。

・スタッフ、協力者、ボランティアの募集と育成について
・行政のサポートや連携、資金の確保(参加費、補助金など)を含む事業の継続について

「障害児等の体験格差解消事業」の提言

最後に、3ヵ年度の事業経験を踏まえ、3つの提言がなされました。

1.子どもたちへの自然体験活動の推進
2.活動の発展、拡大のための仲間づくりの実行
3.オリジナリティを生かした魅力ある地域づくりの推進

2022年度をもって3ヵ年度の休眠預金活用事業「障害児等の体験格差解消事業」は終了しますが、10ヵ所の実行団体はもちろんのこと、全国のB&G海洋センター・海洋クラブにも本事業から得られた経験は活かされます。

B&G財団は休眠預金活用法に基づく「資金分配団体」の認定を受け、障害の有無や家庭の事情等から生じる、子どもたちの体験格差の解消を図ることを目的に全国20団体の応募の中から「実行団体(10団体)」を選定。
2022年度までの3年間、B&G財団がそれぞれの団体を支援し、各実行団体が障がい児や児童養護施設、ひとり親家庭等の子どもたちを対象に海洋性レクリエーションをはじめとした自然体験活動の機会を提供し、当該地域でのインクルーシブ社会の実現に向けた取り組みを進めています。

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