2021.12.13 UP 【休眠預金活用事業】障害児等の体験格差解消事業 「第2回実行団体全体会議」を開催

休眠預金を活用した事業のシンボルマーク

11月29日(月)、休眠預金活用事業「実行団体」10団体の関係者による「第2回実行団体全体会議」をオンラインで開催しました。

昨年からスタートした、休眠預金活用事業が中間地点を折り返し、各団体の中間評価ヒアリングも終了したことから、活動の振り返りと4年目以降の事業継続などについて情報交換を行いました。

はじめに、各実行団体から「今年活かせた資源は何か(人・モノ・カネ・情報・その他)」というテーマで2年目の夏の活動について報告がありました。

各団体からの主な報告は以下のとおり。

どのような方が活動に参画したのか

・活動を通じて地域の小中学校、放課後デイサービス、養護施設など近隣施設との取り組みが実現し始めた。

・地元企業のCSR担当者や消防士、水辺の愛好家、インターンシップの学生たちがボランティア(有償・無償を問わず)で協力してくれるようになった。

・学習支援センター(不登校児童対策)からアドバイスをもらい、児童参加に向け動き出した。

・カヤック愛好家や競技経験者の協力が得られるようになった。

・寄付者がボランティアとして活動に協力してくれるようになった。

どのような器材等が役に立ったのか

〈自然体験活動〉
・クリアカヤック、水上自転車、浮桟橋、初心者用ウィンドサーフィン、水陸両用車いす、無線機+防水カバー

〈コロナ対策・熱中症対策〉
・更衣用テント、ラップ式ポンチョ型バスタオル、スポットクーラー、リモート会議用のネットワーク機器

助成金をどのように活用したか

・ボランティアスタッフ謝金、施設利用料、安全管理マニュアル作成費、動画制作費、ICT機器購入費、カヤックやビッグSUPなど不足器材の購入費ほか

どのような情報が役に立ったのか

・対象となる事業に参加する施設や団体との事前ミーティングで得た事情や要望

・他の実行団体の取り組み事例

・障害者スポーツ協会や社会福祉協議会からのアドバイス

・ボランティアスタッフからの意見
各団体から効果や成果について、ポイントを絞った報告がありました。

4年目以降の事業継続に向けて

次に、4年目以降の事業継続に向けてというテーマで、2団体が資金集めや仲間づくりについて発表しました。

NPO法人コバルトブルー下関ライフセービングクラブは、「大学生や社会人のボランティアを確保するため、実技研修を定期的に開催するとともに、研修後の活動機会の提供に力を入れている。また資金集めについては、県の補助金(宿泊施設の高付加価値化等支援事業)を活用し、新たにグランピング型宿泊施設の運営を開始。収益の一部を4年目以降の事業継続に活用していく」と説明しました。

夕日を眺めながらバーベキュー

認定NPO法人Ocean’s Loveは、「これまでの体験活動提供の経験を活かして『放課後等デイサービス』を新たに開設。知的障がい・発達障がいの子どもたちに夏場のサーフィンスクールだけでなく、室内トレーニングやビーチクリーンなど年間を通じて集える場所をつくることで、子どもたちの成長を支援するとともに、経営基盤の安定化につなげていく」との発表がありました。

放課後等デイサービス

中間評価の成果

続いて、東北大学の瀧靖之教授から、休眠預金事業の参加者アンケートの分析について、「児童用自尊感情尺度の『総合』因子の得点が事前から事後にかけて有意に向上している」ことが報告され、引き続き参加者アンケートの収集に協力いただきたい旨依頼がありました。

次いで、コバルトブルー下関ライフセービングクラブと共同して、ひとり親家庭の子どもたちのキャンプ事業に協力している、NPO法人皆繋(みなつなぎ)の林陽一郎代表理事から、「2年目の活動を概ね終了し、子どもの非認知能力や自己肯定感は参加当初より向上している。親の福祉抵抗性についても軽減が見られるので3年目の活動にも期待したい」と報告がありました。

子どもの自己肯定感 (2020年との比較と考察)

【自己肯定感に関しての考察】

子どもの社会参加の傾向を図る項目(社会福祉への抵抗性)を2021年で追加した。 2020年との比較で自己肯定感も同様に基礎値合計割合の上昇が見られた。
(2020年48.42P⇒2021年74.73P)基礎値で約1.5倍の上昇が見られた。

福祉抵抗性の軽減については前年度より参加していることあり、基礎値から高値であった。そのため活動後の点数の変化は少なかった。
項目別に見てみると
①孤立感の解消②対人関係・信頼性(親)③社会性・自立心
の順で効果的に変化が見られた。

孤立を感じている子どもが先進国の中で最も多い日本で「孤立感の解消」で一番効果が大きい活動に出来たことはとても大きな成果であると感じている。
活動の中でお互いがお互いを必要だと認め、仲良く過ごすことが出来、自分の存在を肯定できたことが大きいと感じる。結果、自尊感情や自己肯定感を高めた。

対人関係・信頼性(親)では、海での親子活動に+して
①ハンドアロマ体験②朝食作り(おもてなし)を行った。
アロマ体験では、コロナ禍に顕著になっている親子が抱える自覚するストレスまた自覚していないストレスなどを緩和する機会にした。
親子で自然に手を触り合う機会がパーソナルスペースを狭くした。
活動の中では親子らしい雰囲気が見られ、「触り方が上手」「気持ち良い」などと親御さんに褒められた子どもは兄弟、スタッフの手を取り反応を見てくる様子などもあった。
褒められると自信に繋がり、親の両手を姉妹で取り合うなど仲睦まじい様子が広がっていた。親との関係性がより深くなった結果に関しては、プログラムの成功に繋がると考えている。

最後に、拓殖大学の太田実教授から、各実行団体の中間評価報告にあったヒト・モノ・カネ・情報に関して、今後の円滑な事業運営や継続を図る上で、団体が共通して今後取り組むべき課題についての助言をいただいた他、10団体それぞれの工夫や努力を情報として共有することが、コロナ禍や実行上の課題を乗り越えることに繋がるとの、事業中間にあたっての総評をいただきました。

中間評価の成果では、予定した時間を過ぎるほど熱のこもった質疑応答が行われました。実行団体の皆さんから「次回はぜひ対面での会議開催に期待したい」との声を多くいただいて会議は終了しました。

B&G財団は休眠預金活用法に基づく「資金分配団体」の認定を受け、障害の有無や家庭の事情等から生じる、子どもたちの体験格差の解消を図ることを目的に全国20団体の応募の中から「実行団体(10団体)」を選定。
2022年度までの3年間、B&G財団がそれぞれの団体を支援し、各実行団体が障がい児や児童養護施設、ひとり親家庭等の子どもたちを対象に海洋性レクリエーションをはじめとした自然体験活動の機会を提供し、当該地域でのインクルーシブ社会の実現に向けた取り組みを進めています。

実行団体の事業概要

No. 団体名 事業名
事業概要
宮城県障がい者カヌー協会 カヌーを通じての共生社会、インクルーシブの実現を目指す事業
障がい児と健常児と分けることなく、カヌー体験を提供することで、受動的な入口(体験)から、能動的(趣味や競技としてのカヌー)活動へ橋渡しを行う。
龍ケ崎市B&G海洋クラブ 障がい児やひとり親家庭のための運動支援
運動・スポーツを通じて発達障害のある青少年の余暇を支援し、地域とつながることを最終目的に、参加者が主体的に取組めるアプローチを行う。
認定NPO法人 Ocean’s Love 障がい児等の体験格差解消事業
知的障がい児・発達障がい児を対象にサーフィンスクールを開催し、子供たちがソーシャルスキルを獲得できるようにスクールのプログラムを進化させる。
認定NPO法人オーシャンファミリー みんなの海project ~地域のすべての子に海辺での楽しい体験を~
海に行く機会がないなど見えない制約がある子、通級指導教室に通う子などに海辺での自然体験に参加する機会を設ける。
公益財団法人 身体教育医学研究所 障がい児等の体験格差解消事業
障がい児や児童養護施設の子供、一人親家庭の子供等を対象に自然体験活動を実施。健常児との交流を通して子供自身が育ちやすい地域や仕組みを整える。
有限会社 SHIPMAN 障がい児等の体験格差解消事業
個々に必要な合理的配慮の基に、水辺での活動などを通して、規律や協力を体験的に学びながら子供たちの成長を促し、自分の力を最大限に発揮できる支援の環境づくりのモデル施設となることを目指す。
NPO法人 海の達人 障がい児等の体験格差解消事業
障がい児や児童養護施設の子供などを対象に、海洋性レクリエーションを主とした自然体験活動を通じ、子供たちの心身の成長を促し、社会性や自立心を育むとともに、他の子供たちとの交流や活動団体間の交流等を通じて、支援の環境づくりを行う。
株式会社 FEEL 障がい児等の体験格差解消事業
発達障害や四肢障害、母子家庭や貧困家庭、不登校や養護施設で暮らす子供たちなどを対象に、水辺の体験活動を定期的かつ複数年体験してもらい、体験不足の子供たちの体験格差を解消する。
NPO法人コバルトブルー下関ライフセービングクラブ プロジェクト豊夢(ホウム)
経済的困窮など家庭内に課題を抱える子供や日常生活や成長に困難を抱える子供たちに海の楽しさや怖さを伝える親水教育を通じて、人との関係や心の育成を促すため、大学のボランティアサークルなどの人たちを巻き込み、若者の能力の向上を促しつつ子供たちを育成する。
10 NPO法人 あそびとまなび研究所 もじうみ里海探検隊 障がい児等の体験格差解消事業
体験格差の解消を目指し、安全に通年の海辺や水辺の体験活動を行える仕組みを作り上げる。

 

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