地域の課題解決 先進事例の収集と発信

星の力でまちを元気に!?
宇宙と地域をつなぐ天文体験ミュージアム「岡山天文博物館」(岡山県浅口市)

2025.10.27 UP

岡山県浅口市は、日本でも有数の星空スポット。夜空がきれい、だけじゃなく、なんと国内初の大望遠鏡の設置地に選ばれた「星のまち」である。1960年、東京大学東京天文台岡山天体物理観測所(現在は国立天文台ハワイ観測所岡山分室)が開所し、188cmの大望遠鏡を中心に、多くの研究成果が生まれた。

国立天文台の開所と同時に岡山天文博物館(以下、博物館)が開館。ここは単なる博物館ではない。訪れた人は、「え、こんな大きな望遠鏡を触れるの!?」と目を丸くする。研究者と同じ視点で宇宙をのぞき込む貴重な体験ができる。

岡山天文博物館(外観)

岡山天文博物館(外観)

プラネタリウムで星空を眺めるもよし、太陽望遠鏡で昼間の太陽を観察するもよし。館内には、天文の最新研究から宇宙の神秘まで、思わず「へえ~!」と声が出る展示がずらりと並ぶ。

  • プラネタリウム

    プラネタリウム

  • 太陽望遠鏡

    太陽望遠鏡

さらに2018年には、アジア最大級の口径3.8mを誇る京都大学せいめい望遠鏡も登場。博物館と隣接する天文台との連携により、観望会や特別公開などの一般向けイベントも充実している。まさに「宇宙と科学を身近に感じられる場所」と言える。

博物館を中心に建ち並ぶドーム群

博物館を中心に建ち並ぶドーム群
右  :京都大学せいめい望遠鏡
中央上:国立天文台ハワイ観測所岡山分室 188cm反射望遠鏡
左  :同天文台の91cm反射望遠鏡
中央下:岡山天文博物館

大人も子どももワクワク🌟生きた天文学体験

この博物館の最大の魅力は、なんといっても世界レベルの大望遠鏡を間近に見ることができること。188cmの反射望遠鏡はもちろん、アジア最大級の口径3.8mを誇るせいめい望遠鏡、さらには太陽望遠鏡まで揃っている。
  観望会等イベントでは、研究者たちが、星にまつわるエピソードや最新の研究成果などを、わかりやすく解説してくれるので、大人も子どもも夢中になる。

  • 国立天文台188cm反射望遠鏡

    国立天文台188cm反射望遠鏡

  • 京都大学せいめい望遠鏡

    京都大学せいめい望遠鏡

館内の展示室では、研究成果を紹介する展示や企画展示がずらり。宇宙の最新情報に触れられるのはもちろん、星や銀河の写真を見ながら、「いつか本当に行けるかも…」と宇宙旅行を想像するのも楽しい。
  実験や体験型展示も充実しており、ちょっとした宇宙探検気分を味わえるのも魅力。専門家も初心者も、「なるほど、すごい!」と驚きと感動を味わえること請け合いだ。

  • 研究成果のパネルと望遠鏡のレプリカなどが展示されている

    研究成果のパネルと望遠鏡のレプリカなどが展示されている

  • デジタル映像で宇宙の不思議を体験

    デジタル映像で宇宙の不思議を体験

2018年、国立天文台の運用方針が変わったことをきっかけに、「188cm反射望遠鏡運用協議会」が発足。国立天文台、東京科学大学(旧東京工業大学)、浅口市の三者が協定を結び、研究面は東京科学大学が中心に行い、一般向けの観望会や公開イベントは浅口市が担当している。

  さらに京都大学ともタッグを組み、アジア最大級のせいめい望遠鏡を使った見学ツアーは、博物館が中心となって開催。研究と一般公開が両立していることで、まさに「生きた天文学」の世界を体感できる場所になっている。

毎年秋には、山全体を舞台にした特別イベント「あさくち天文台フェスタ」を開催。国立天文台や京都大学と共催の特別公開では、天体望遠鏡の操作体験や研究者の解説も楽しめるため、天文学者になった気分を味わえる。

研究者による望遠鏡の操作説明

宇宙を軸に観光振興と地域活性化を担う博物館

さらに博物館は、地域とのつながりづくりにも積極的に取り組んでいる。地元事業者と連携し、天文をテーマにした特産品やオリジナルグッズを開発。星をモチーフにしたお菓子や限定グッズなどは、観光客のみならず地元住民の関心も引き付け、地域ブランドの価値向上に寄与している。

星をあしらったグッズが並ぶミュージアムショップ

星をあしらったグッズが並ぶミュージアムショップ

また、天文イベントやコラボ商品の販売を通じて、地場産品の販路拡大にも貢献している。
  このように、博物館は単なる展示施設にとどまらず、「宇宙」を軸に観光振興と産業振興を同時に推進し、地域に新たな賑わいと経済循環を生み出す中核的な役割も果たしている。

宇宙と科学の楽しさ、夢を届ける学びの場

また、市内外の学校の見学受け入れはもちろん、市内の小学校への出前授業や出前観望会、体験学習への協力など、教育現場にも積極的に関わっている。
  星や宇宙に直接触れながら学べるこれらの体験は、子どもたちに科学への興味を芽生えさせ、学ぶ楽しさを実感させる絶好の機会となる。さらに、岡山理科大学の博物館実習生の受け入れも行い、次世代の研究者や科学人材の育成に貢献している。
  博物館は、地域の教育基盤を支えながら、子どもたちや学生に宇宙や科学の楽しさや夢を届ける場となっている。「ここだけの、本物に触れる体験をー」そう語るのは、岡山天文博物館館長の粟野諭美氏だ。

博物館では、単なる展示ではなく“生きた研究”に出会うことができます。大型望遠鏡や観測ドームが複数そろう場所は、国内でも極めて稀で、世界的にも貴重な存在です。
宇宙の謎に挑む研究の現場を肌で感じられる――そんな本物の体験を、多くの人に届けたいと考えています。

宇宙と地域をつなぐこの博物館で、星や宇宙の魅力だけでなく、地元の豊かな自然や歴史、文化に触れる特別な時間を、あなたも体験してみませんか。

「地方創生ブレイクスルー」は、さまざまな社会課題の解決に向けた自治体の取組を随時発信していきます。

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