地域の課題解決 先進事例の収集と発信

地域課題への取組み事例
2021.10.29 UP

地域課題への取組み事例 
世界初「DMV(デュアル・モード・ビークル)」の導入とまちづくり(徳島県海陽町)

徳島県海陽町が取り組む、世界初の線路と道路の両方を走れる「DMV(デュアル・モード・ビークル)」の本格営業運行に向けた取り組みを紹介します。

海陽町は徳島県の最南端に位置する人口約9千人の町。人口減少や少子高齢化が課題となっており、これまで観光振興や移住促進などの施策を展開してきたが、人口減少を克服できない現状があります。

また、海陽町を走る「阿佐東(あさとう)線」は、町と隣接する高知県東洋町を結ぶローカル線で、運行会社の阿佐海岸鉄道株式会社(第三セクター)は、1992年の開業以来赤字続きで、経営改善が課題となっていました。

線路と道路の両方を走れる新しい公共交通

これら長年の課題を解決するため、JR北海道が開発を進めていたDMVに着目し、2011年にJR北海道の車両を使った実証運行を実施しました。

2016年3月、「阿佐東線DMV導入協議会」が設置され、導入に向けた本格的な議論が始まりました。導入にあたっては、車両の製作、駅舎等の改築、運転保安システムの整備などのハード整備のほか、一般乗合旅客自動車運送事業の認可や運転士の中型二種免許の取得、運行ルート・ダイヤ決定、関係機関との調整など、その業務量は膨大なものでした。

阿佐海岸鉄道株式会社にとっては無謀ともいえる挑戦でしたが、徳島県をはじめ関係自治体の強力なバックアップもあって、2021年内の営業運行開始までこぎつけることができました。

DMVの特長として、

  • 乗客が鉄道とバスを乗り換えせずに利用できるシームレスな交通体系が実現できること
  • マイクロバスをベースに製造されているため、現行のディーゼル車両と比べて燃料費、維持費などを軽減できること
  • 線路と道路の両方を走れる利点を生かし、災害時の被災者支援に迅速に対応できること
  • 鉄道をはじめ全国の乗り物ファンの来訪などによる観光振興が期待できること

などが挙げられます。

  • 3台のDMV(バスモード)

    3台のDMV(バスモード)

  • 線路を走るDMV(鉄道モード)

    線路を走るDMV(鉄道モード)

運行ルートは、阿波海南文化村から阿波海南駅までをバスモードで、阿波海南駅から海部駅、宍喰駅、甲浦駅までを鉄道モードで、再度バスモードになって海の駅東洋町、道の駅宍喰温泉までの区間を往復運行。土-日-祝日は上記運行に加え、室戸方面への1往復を運行し、観光客などによる地域の賑わいの創出を図ります。

海陽町では、これを契機にDMV運行の発着点となる「阿波海南文化村」と「道の駅宍喰温泉」のリニューアル、駅周辺の整備、シェアサイクルの導入を行い、観光客の満足度向上に向けた取組みを加速させています。

  • リニューアルした阿波海南文化村の三幸館

    リニューアルした阿波海南文化村の三幸館

  • 三幸館の内観。「阿波や壱兆」監修の半田そうめんも味わえます

    三幸館の内観。「阿波や壱兆」監修の半田そうめんも味わえます

また、DMVが多くの方に受け入れられるよう、グッズ製作や国道沿いへの看板設置など機運醸成にも努めるとともに、地域住民の皆さんもPR動画の出演やイベントへの参画など、さまざまな形で協力。民間事業者には店頭への幟旗やポスターなどを積極的に掲示していただくほか、DMVにちなんだお土産品の開発にも注力いただいています。

海陽町役場
まち・みらい課 課長補佐 北村佳之さん

DMV導入の目的である阿佐海岸鉄道の経営改善や地域活性化に向け、町が持続的に発展していけるよう今後も取り組んでいきます。

DMVが地域の足、観光資源となって海陽町を駆け抜けます!

「地域課題への取組み事例」では、さまざまな社会課題の解決に向けた自治体の取組みを随時発信していきます。

事例