地域の課題解決 先進事例の収集と発信

地域課題への取組み事例
2022.04.11 UP

全国初の既存公共建築物ZEB化の取り組み(福岡県久留米市)

福岡県久留米市が、既存公共建築物では全国初の『ZEB(ゼブ)』(net Zero Energy Building)認証を取得した環境部庁舎の改修に向けた取り組みを紹介します。

『ZEB』認証を取得した久留米市 環境部庁舎

『ZEB』認証を取得した久留米市 環境部庁舎

久留米市の環境部庁舎は建築から30年経過しており、空調などの設備は建築当初から更新されておらず老朽化が進行していました。また、断熱が不十分で、特に冬場は室内が冷えやすい環境にありました。

これらを改善するため、施設維持費の抑制と温室効果ガス削減が両立できるZEB化改修に取り組みました。

ZEB認証は、建物の省エネルギーに関する指標の一つで、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーの導入により年間の一次エネルギー消費量収支ゼロを目指した建築物。削減率によって『ZEB』・Nearly ZEB・ZEB Ready・ZEB Orientedの4段階に分類されます。

ZEBランク 建物用途 一次エネルギー消費量削減率 その他要件
省エネのみ 創エネ含む
『ZEB 』 すべて 50%以上 100%以上
Nearly ZEB すべて 50%以上 75%以上
ZEB ready すべて 50%以上
ZEB Oriented 事務所、学校等 40%以上 延床面積1万㎡以上未評価技術導入
上記以外用途 30%以上

建物のエネルギー消費量を正味ゼロに

建物のエネルギー消費量を正味ゼロに

ZEB化改修にあたっては、まず、1階駐車場がピロティ形式で吹きさらしであったため、2階床スラブ裏に35mm厚のウレタン系断熱材の吹付を実施。次いで、窓ガラスを単層ガラスから真空の複層ガラスに交換して、床と窓の断熱性能を強化しました。

空調設備については、ガス吸収式冷温水機を電気式パッケージに更新するとともに、換気設備もダクト用換気扇から全熱交換換気扇に改修することで空調の大幅なダウンサイジングを実現。あわせて館内照明をすべてLED化しました。

さらに、「リチウムイオン蓄電池付太陽光発電システム」を導入し、停電時に自動で自立運転し、災害時においても防災拠点として機能を発揮できるようになりました。

  • Low-E ペアガラス

    Low-E ペアガラス
    通常の単層ガラスと比較して、約3倍、熱や冷気を通しにくいガラス建物の断熱性能が大幅に向上

  • LED照明

    LED照明
    高効率LED 照明、照度センサ導入消費電力量は、同仕様の建物に対して約77%減

  • 太陽光発電設備

    太陽光発電設備
    発電容量:52.1kW
    予想発電量:58,340kWh/年

  • 蓄電池

    蓄電池
    蓄電容量:89.2kWh
    蓄電池の導入により停電時においても災害拠点施設として機能を発揮

  • 高効率空調

    高効率空調
    能力合計:103kW
    断熱性向上により空調負荷を大幅削減。消費電力量を約60%削減

  • 全熱交換換気扇

    全熱交換換気扇
    換気の際に排出される、涼しさ・暖かさを回収。全熱交換換気扇導入により空調負荷を大幅低減

これらの改修を通して、一次エネルギー消費量を省エネで67%、創エネで39%削減し、エネルギー削減率106%を達成。2020年7月にZEB認証を取得し、10月にはZEBリーディング・オーナーに登録しました。

2021年度には、中央図書館、企業局合川庁舎のZEB化改修(どちらもZEB Ready認証取得)を終え、合計3施設のZEB化を実現しました。こうした取り組みが評価され、「2021エコプロアワードで国土交通大臣賞」と「2021省エネ大賞で資源エネルギー庁長官賞」を受賞。

全国初の取り組みであったため、他自治体からの視察依頼、民間企業からの問い合せが現在でも多く寄せられています。

久留米市 環境政策課 堤 綾子 さん
ゼロカーボンシティの実現を目指し、今後も市有施設での省エネ化等の取り組みを進めていきます。市内の事業者の皆さんに建物の脱炭素化の必要性やZEB化の効果を伝えていくことで、民間建築物のZEB化など脱炭素につながる取り組みを増やしていきたいと考えています。

「地域課題への取組み事例」では、さまざまな社会課題の解決に向けた自治体の取組を随時発信していきます。

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