地域の課題解決 先進事例の収集と発信

ロサンゼルスでも公演した「神楽」
ユネスコ登録の「花田植」
伝統×観光の新しい挑戦(広島県北広島町)

2025.09.26 UP

広島県北広島町の「神楽」と「花田植」は、豊作祈願や収穫への感謝から生まれた伝統芸能。勇壮な舞と太鼓の音が響き、豪華な衣装に身を包んだ迫力ある演舞は、多くの人を魅了する。
  さらに、その中でも「壬生の花田植」は2011年にユネスコ無形文化遺産に登録され、その価値が世界からも高く評価されている。

     ロサンゼルスでの神楽公演

神楽は、出雲で生まれた「石見神楽」が北広島町に伝わり、農耕文化の神事を基本にしつつ、舞台芸術的な要素を持つ郷土芸能で、勇壮な舞、絢爛豪華な衣装は初めて神楽を見る人をも惹きつける。そのエンターテインメント性の高さから、近年では日本全国の都市部だけでなく、海外公演も行われるなど、活躍の場が広がっている。

花田植は、豊作を祈り田の神を祭る稲作儀礼に由来する伝統行事。太鼓や篠笛の囃子に合わせ、飾り牛や色鮮やかな衣装の早乙女たちが苗を植える姿は華やかで、人々を魅了する。特に「壬生の花田植」は2011年にユネスコ無形文化遺産に登録されており、国際的にも高く評価され、他の地域の田植え行事にはない特別な地位を確立している。

町中が神楽でいっぱい

町内には神楽団や田楽団が活動しており、特に神楽団は63にのぼり(2025年9月現在)、これほど多くの団体が息づいている町は全国的にも珍しい。まさに北広島町の誇るべき特長だ。
  「神楽も花田植も、町のアイデンティティそのもの。地域みんなで守り、広めていきたい」と話すのは、北広島町商工観光課の大成純一郎氏。

神楽は、古代出雲の地で生まれた「石見神楽」が北広島町にも伝わり、長い年月の中で独自の発展を遂げてきた。農耕文化に根差した神事を基盤としつつ、物語性や舞台芸術的な要素を取り込み、地域の人々に受け継がれてきた郷土芸能だ。

ロサンゼルスで披露された神楽の舞

豪快で勇壮な舞、絢爛豪華な衣装、そして太鼓や笛が奏でる迫力ある囃子が一体となって観客を魅了し、初めて神楽の世界に触れる人でさえも、その荘厳さと躍動感に思わず夢中になる。
  そのエンターテインメント性の高さから、最近は日本全国の都市部や、海外公演も行うなど活躍の場が広がっている。

田んぼがステージ🌱壬生の花田植

花田植は、豊作を祈り、田の神をまつる稲作儀礼に由来する、豪華絢爛な伝統行事。かつては田植えの労をねぎらい、五穀豊穣を願う村人たちの年中行事として受け継がれてきた。
  太鼓や手打鉦、篠笛で構成された囃子の軽快な調べに合わせて、鮮やかな装束をまとった早乙女たちが苗を植え、華やかに飾られた飾り牛が優雅に代掻きを行う光景は圧巻で、古来からの農村文化の豊かさとともに、訪れる人々を圧倒する。

     ユネスコ無形文化遺産に登録された「壬生の花田植」

未来の舞台はわたしたちにおまかせ!

しかし、その華やかさの裏には、後継者不足という現実がある。少子高齢化の波が神楽団や田楽団の担い手にも影を落とす。「若い人にもっと参加してもらいたい」町の関係者は口をそろえる。

  そこで町では、伝統芸能を未来へつなぐ新たな取り組みがスタートした。
  その名も「神楽と花田植を活用した活力創出プロジェクト」。芸能団体や観光事業者と連携しながら、新しい挑戦に踏み出した。
  ・若者向けの神楽や花田植体験会
  ・海外公演など世界に向けた情報発信
  ・道の駅を拠点にした公演やワークショップ
  ・SNSやWebを使ったデジタルプロモーション など

  神楽や花田植のイベントに出演し、汗を流すこどもたちは、太鼓や笛の音に合わせて体を動かすたび、少しずつ自信をつけていく。仲間と息を合わせて舞う姿に、見ている大人たちも思わず笑みがこぼれる。伝統芸能に触れながら笑顔で練習する子どもたちの姿は、地域の活力の象徴でもある。

  • 舞台で神楽を演じる小学生

    舞台で神楽を演じる小学生

  • 伝統の舞に挑む小学生たち

    伝統の舞に挑む小学生たち

  • 壬生の花田植会場までの道行で披露する田楽団の小学生たち

    壬生の花田植会場までの道行で披露する田楽団の小学生たち

  • はつらつと舞う子どもたち

    はつらつと舞う子どもたち

舞台に立つ子どもたちは、祖父母や地域のみんなが守ってきた神楽や花田植を、誇らしげな笑顔とともに、次の世代へとつないでいく。
  「伝統を守りつつ、時代に合わせた形で洗練させていくことも大切」と大成氏。若者の新しいアイデアが加わるたびに、町全体が少しずつ活気づいていく。

  田んぼを渡る太鼓の音、舞台にきらめく衣装の色彩、どれも北広島町に息づく大切な伝統芸能。伝統を守りつつ、若い担い手たちが加わることで、北広島町ならではの魅力としてこれからも受け継がれていくことでしょう。

「地方創生ブレイクスルー」は、さまざまな社会課題の解決に向けた自治体の取組を随時発信していきます。

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