2022.11.24 UP 防災拠点事業 第二期 防災拠点事業 54自治体128名が参加し、地域の防災力向上を目指す「広域研修A」を開催(東京都港区)

日本財団助成事業

11月17・18日の2日間 ベルサール御成門タワー(港区芝公園)で、「防災拠点の設置および災害時相互支援体制構築」事業(以下、「防災拠点事業」)の一環として、全国54自治体の防災担当者・消防職員等128名の参加をいただき、「広域研修A」を開催しました。
 「広域研修B」では油圧ショベル等重機の実践的な知識や操作を学びますが、今回の「広域研修A」は、各拠点の情報交換、拠点間の協力体制構築、事業の方向性の確認を目的として開催されました。

会場の様子

広域研修A 一日目

開会にあたりB&G財団理事長菅原悟志から「B&G財団は、海洋センター建設・指導者育成を組み合わせ、さらにその組織化を図ってきました。防災拠点事業も同様に、ハード・ソフト・ネットワークをセットに、現在の54ヵ所から100ヵ所を目指します。」と挨拶を述べました。
 続いて、ご来賓を代表して日本財団専務理事前田晃様から「日本財団は、1995年阪神・淡路大震災を契機に、災害支援を始めました。2004年新潟県中越地震の際、現地の建設会社社長から“重機使用”の提案があり、その効果を認め災害支援に活用しています。現在、B&G財団の防災拠点に重機の配備が進んでいます。重機を活用した周辺自治体との救援・共助の体制に期待しています。」とご挨拶をいただきました。

  • B&G財団 菅原理事長

    B&G財団 菅原理事長

  • 日本財団 前田専務理事

    日本財団 前田専務理事

担当者からの防災拠点事業の説明に続き、株式会社フラップゼロαの「体験型防災アトラクション」が始まりました。“参加したくなる防災訓練”として開発され、これまでの9年間で7万人が参加したプログラムです。災害時に大切な「自助・共助・公助・近助」のうち、“共助・近助”にフォーカスし「グループで力を合わせ、制限時間内に、安全確保」することがミッションです。
 ルール説明、30グループに分かれての自己紹介、リーダー決めが短時間で行われると、会場が暗転、サイレンが鳴り響き、スクリーンに「特別災害警報」が発令されます。

防災アトラクション

各グループはミッションシートを受け取り、メンバーで分担して場内のヒントパネルから情報を集め回答を導き出します。正解すると次のミッションに進み、4つのミッションクリアを目指します。赤色燈が回転する暗い会場内を参加者が情報収集に歩き回ります。他のグループの進捗状況やスクリーンに映る残り時間のカウントダウンも相まって、初めのゲーム感覚から、いつしか真剣な雰囲気に変わりミッション達成に取組みました。ふりかえりでは、参加者から「焦った」、「何をしたらいいか戸惑った」、「グループのメンバーと協力することで解答できた」などの意見がありました。
 株式会社フラップゼロα代表取締役松田哲様は「公助依存の災害対策には限界がある。自助・共助を強化が大切。」とこのプログラムを総括しました。

防災アトラクション

次に東京消防庁警防部救助課佐藤良太様から「災害現場での活動事例について」と題して東京消防庁の組織、重機の活動事例、重機の教育体制をお話しいただきました。東京消防庁では、管内を10の消防方面に分け、その内5ヵ所の消防方面本部に設けられた「消防救助機動部隊(通称:ハイパーレスキュー)」と警防部直轄の「即応対処部隊」に、災害対応の重機を配備しています。これまでの重機出動事例の紹介と重機教育体制として「重機操作の指導者育成を目的とした重機レベルアップ研修」、「重機資格保有者を対象とした技能確認」の内容を説明いただきました。

東京消防庁警防部救助課 佐藤様

東京消防庁警防部救助課 佐藤氏

第1日目の最後は、「地域別防災課題解決グループワーク」です。カードを引いて選んだテーマに基づき、そこから連想されるネガティブな事象を付箋に記し、思いつく限り大判シートに貼ります。次に想定する災害で起こり得るトラブルとその対応策も同様に付箋に記し貼っていきました。体験型防災アトラクションでチーム意識が構築されたこともあり、活発な意見交換が行われ、大判シートにたくさんの付箋が貼られていきました。そこから、最も対策が必要な問題、最も考えていなかった問題を抜き出し、グループで話し合い、代表して3グループに発表いただきました

グループワーク

広域研修A 二日目

第2日目は、兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科教授青田良介様の基調講演「防災・減災を進める上での課題と人材・体制づくり」から始まりました。
 青田教授は、兵庫県職員として1995年阪神・淡路大震災を体験し、「行政の限界とボランティアの活躍」を目の当たりにして、働きながら神戸大学大学院で学び、県職員を退職し2015年から「被災者・避難者支援、防災行政、防災復興ガバナンス」の専門家として活躍されています。青田教授は、災害大国日本の状況を説明し「ハザード(危険要因)と災害は分けて考える必要がある。災害を防ぐことは困難で減災を目指す。災害への脆弱性、曝露、継続性を念頭に“すべきこと”ではなく、身の丈に合った“できること”を増やすべき。自治体の防災体制には限界がある。自治体内や自治体間の支援体制を構築すると共に、ボランティアなど外部人材の活用と住民の“自助”能力を高めることが必要。」の旨話されました。

兵庫県立大学 青田教授

兵庫県立大学 青田教授

講演後の質疑では、熊本県南阿蘇村担当者の「①自治体の規模により危機管理担当者の適正な人数の目安はあるか? ②被災した経験で災害の軽減に役立つことがあるか?」との問いに、「①適正人数は決められない。実際問題として役場の職員体制から人数を割くことに限界がある。いざという時に動ける人材を増やすことが大切。 ②災害の経験を自分の言葉で発信し風化させないことが大切。役場職員の災害時の記録は減災につながる。」と回答。長崎県南島原市担当者の「本市でも、この会場を見ても防災担当者は男性職員ばかり、女性職員の配置が必要ではないか?」との問いに「女性を危険な部署には配置できないという役所の発想がある。実際はふるさとに貢献したいという女性も多く、大学に“防災女子クラブ”ができたり、地域で“防災母さんの会”が活動したりしている。女性が利用する避難所運営では特に女性担当者の視点が必要になる。」と回答。

基調講演の様子

北海道鷹栖町担当者の「①市民防災力の向上には自治会が重要と考えている。その仕組みづくりに大切なことは何か?②避難所設置に関して、改善された点はあるか?」との問いには、「①防災の取組みに熱心な自治会とそうでない自治会の差はある。街づくりに熱心な自治会は防災にも熱心である。住民だけでなくそこで仕事をする人、通学する人など関係する人を広く募って“街づくり協議会”として、防災に取組む方法もある。②日本の避難所も少しずつプライバシー確保が進んでいるが、海外ではプライバシーや食事も充実している。日本の男社会では“みんなでガマン、ガマンは美徳”と言う感覚が残る。避難所運営員の半数は女性に担ってもらった方が良い。」と回答されました。

続いて、防災拠点が設置された3自治体から事例発表を行いました。
 1例目、北海道滝川市から、避難所開設研修で得られた、市民による自助・共助と次のステップとして「滝川市防災サポーター(仮称)」制度について発表いただきました。
 2例目、宮城県亘理町から、今夏の宮城県豪雨で被災した松島町の防災拠点に配備された重機・ダンプを貸し出した事例について根拠となる協定や機材の保険補償を発表いただきました。
 3例目、熊本県湯前町から防災拠点に配備された重機を活用する消防団との連携体制づくり、県内で発生した災害の相互応援対応事例について発表いただきました。

事例発表を行う湯前町 椎葉氏

事例発表を行う湯前町 椎葉氏

最後に担当者からの2023年度事業予定の説明に続き、B&G財団常務理事朝日田智昭から研修をふりかえり「防災体制の構築には、顔の見える関係・ネットワークづくりが自治体内においても、自治体間・外部団体との関係でも有効となる。防災拠点事業では300万円×3年間のソフト支援を行うので、様々なことにチャレンジしていただき、4年目からの自立に向けた実績づくり・準備を進めて欲しい」と閉会の挨拶を述べました。
 B&G財団は、万一の災害に備えた機材整備と人材育成、そして周辺自治体他と連携した災害支援体制づくりを今後も進めていきます。

B&G財団 朝日田常務理事

B&G財団 朝日田常務理事

B&G財団は、2021年度から自治体と連携し、災害支援に即応できる機材と人材を備えた「防災拠点」を整備し、油圧ショベルとダンプカー、救助艇などの機材を配備すると共に、機材の操作方法と災害対応の研修を受けた人材を育成しています。
 全国の「防災拠点」担当者が、どこの拠点でも同じ機材と手法で災害支援活動ができる体制を整え、平時には「防災拠点」に備えられた段ボールベッドや災害用トイレ、ドローンなどを使用して、地域住民の防災訓練や避難所運営訓練を実施し、災害時だけでなく平時も活用される新たな防災拠点を目指します。
 防災拠点は、2021年度第一期の25ヵ所、2022年度第二期29ヵ所が決定しました。

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