真相BGメン
災害に負けない地域をつくる
~平時の絆が支える、災害に強い地域づくり~
2025.10.29 UP
~平時の絆が支える、災害に強い地域づくり~ 2025.10.29 UP
「防災拠点の設置および災害時相互支援体制構築(以下、防災拠点事業)」は、平時からの備えと連携を通じて、災害に強い地域づくりを支える取り組みだ。
前編では、防災拠点事業の仕組みや特徴を紹介したが、実際の災害現場では、このネットワークはどのように力を発揮しているのだろうか。
全国の防災拠点から派遣される職員や重機は、農地の排水や道路復旧、倒木撤去など現場で着実に力を発揮しており、後編では、実際の支援事例を通して、防災拠点のネットワークが復旧活動でどのように役立っているのか、その効果を詳しく掘り下げていく。
ー目次ー
■ 台風・豪雨・豪雪に対応―全国で活躍する「B&G防災拠点」
〈事例1〉台風15号による竜巻・突風災害(2025年9月)
〈事例2〉九州地方・大雨災害(2025年8月)
〈事例3〉青森県・豪雪災害(2025年1月)
〈事例4〉秋田県・大雨災害(2023年7月)
〈事例5〉福岡県・大雨災害(2023年6月)
■ 研修とネットワークで加速する災害対応
■ 防災拠点がつなぐ、地域のつながりと備え
台風・豪雨・豪雪に対応―全国で活躍する「B&G防災拠点」
〈事例1〉台風15号による竜巻・突風災害(2025年9月)
台風15号に伴う竜巻や突風により、静岡県牧之原市では住宅や建物約1,700棟が被害を受け、うち住家全壊49棟を含む甚大な被害が発生した。街路には倒木やがれきが散乱し、浸水した住宅や商業施設も少なくなかった。
市内に整備されたB&G防災拠点では、配備された油圧ショベルやスライドダンプをすぐに派遣し、倒木の撤去やがれきの搬出、災害ごみの運搬など、被災地域の復旧作業を進めた。
さらに、防災拠点ネットワークの連携により、山梨県中央市や岐阜県可児市の拠点からもスライドダンプが派遣され、災害ごみの運搬やがれき処理など、被災者の生活再建を支える重要な役割を果たした。各地から集まった重機と人員が連携することで、地域全体の復旧活動に大きな力が生まれた。
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要請の翌日、山梨県中央市の拠点を出発するスライドダンプ
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配備機材を活用し、がれきの撤去作業を進める様子
〈事例2〉九州地方・大雨災害(2025年8月)
記録的な豪雨により、九州各地では土砂崩れや浸水が相次ぎ、住宅や農地が深刻な被害を受けた。B&G防災拠点を整備する熊本県湯前町は、油圧ショベルやスライドダンプをいち早く被災地に派遣し、がれきの撤去や排水作業など、復旧活動にあたった。
また、鹿児島県霧島市や熊本県内各地でも、災害NPOや地域住民と連携しながら、倒木の撤去や浸水した農地の排水など、被害の拡大を防ぐため迅速かつ懸命な復旧作業が続けられた。
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被災家屋から住民の大切な品物を探す作業
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農地に重機が入り、田んぼに水を送れるようになった
〈事例3〉青森県・豪雪災害(2025年1月)
青森県平川市を中心に記録的な豪雪が発生し、停電や道路の通行障害などの被害が発生した。秋田県男鹿市と岩手県久慈市の防災拠点では、配備された重機を派遣し、3日間にわたり公共施設の除排雪作業を実施。重機による除雪作業は効率的に行われ、住民や平川市職員の負担軽減につながった。
作業にあたった男鹿市の担当者は、「大変な雪の量で、住民の方々も大変だと思う。少しでも力になりたい」と話し、被災地への思いを語った。
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除雪作業で道路の安全を確保する重機
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重機を使った除雪作業の様子
〈事例4〉秋田県・大雨災害(2023年7月)
断続的な大雨の影響で、秋田県五城目町では住宅の床上・床下浸水や農地・道路の冠水被害が相次いだ。現地には人手があったものの、重機や車両が不足しており、復旧作業は困難を極めていた。こうした状況を受け、石巻市のB&G防災拠点から油圧ショベルやダンプカーなどの重機・車両が貸し出され、技術系NPOと連携して、倒木や土砂の撤去、災害ごみの搬出などの復旧活動が本格的に行われた。
被災地で作業にあたったスタッフは、研修で習得した技術と連携の手順を最大限に生かし、迅速かつ安全な作業を実現。浸水被害の広がった住宅や道路が短期間で片付けられ、農業被害の拡大を防ぐなど、現場での対応力が被災地復旧に大きく貢献した。
倒木の撤去作業の様子
〈事例5〉福岡県・大雨災害(2023年6月)
梅雨前線の影響による集中豪雨で、福岡県久留米市では住宅や道路の浸水、土砂崩れなどの被害が相次いだ。こうした状況を受け、熊本県湯前町のB&G防災拠点から油圧ショベルやダンプカーなどの重機が現地に貸し出され、現地では技術系NPOがこれらの重機を活用して倒木や土砂の撤去、浸水地域の排水作業などの支援活動を実施。経験豊富なスタッフによる迅速な作業で、復旧の遅れていた道路や住宅周辺の状況が短期間で改善され、地域住民の生活再建に貢献した。
倒壊家屋のがれきを取り除く重機
研修とネットワークで加速する災害対応力
これらの事例は、防災拠点事業の研修制度やネットワークの成果を示している。担当部署の枠を超えた自治体職員の重機オペレーターなどの人材育成支援をはじめ、広域研修では、行政職員だけでなく消防関係者も参加し、実践的な訓練を通じて災害対応力を向上させている。こうした研修やネットワークの積み重ねが、全国各地での迅速な支援活動につながっている。
広域実技研修
また、災害時相互支援協定により、車両や重機の迅速な貸出や専門人材の派遣が円滑に行える体制が整備されている。これにより、被災地では初動対応が格段に早まり、倒木やがれきの撤去、排水作業といった復旧作業の効率も大幅に向上する。
防災拠点がつなぐ、地域のつながりと備え
全国に広がる防災拠点のネットワークは、各地の災害対応力を高めている。平時には、自治体職員や消防関係者が実践的な操作を磨くほか、住民参加型の防災ワークショップを通じて住民同士の絆を深め、地域防災力をさらに強化している。
そして、災害発生時には、平時の積み重ねを生かし、迅速かつ安全な復旧活動を支えるとともに、被災地間での連携も向上する。こうした取り組みによって、防災拠点は単なる備えの場ではなく、住民と行政、地域同士をつなぐ“災害に強い社会”をつくる確かな力となる。
日頃からの訓練とネットワークづくりが、いざという災害時に力を発揮する。災害に備える力は、行政だけでなく、地域全体で育むもの。B&G防災拠点の活動は、日頃の備えや地域のつながりの大切さを示しており、住民一人ひとりが防災に向き合うきっかけになるはずだ。