真相BGメン
笑顔を取り戻せ!B&Gの被災地支援(前編)
2025.09.24 UP
大規模な自然災害が起きるたびに、地域の中でどのように日常を取り戻すのかが問われてきた。避難所や仮設住宅が生活の中心となる中で、心身の健康や地域コミュニティを支える拠点の再生は、どうしても遅れがちになる。
全国各地にあるB&G海洋センターは、自治体から避難所指定を受けている施設が多く、災害時には地域住民を受け入れる重要な役割を担っている。
東日本大震災、熊本地震、そして能登半島地震。それぞれの被災地でB&G財団とB&G指導員が展開した活動を振り返ると、支援の形が時代とともに変化してきたことが見えてくる。前編ではまず、東日本大震災と熊本地震の支援活動の歩みをたどる。
ー目次ー
■東日本大震災における海洋センターの復旧支援
■熊本地震:被災地へ駆けつけたB&G指導員の迅速支援
■子どもたちに笑顔と安心を届ける支援
■再び現地へ、B&G指導員の復旧支援
東日本大震災における海洋センターの復旧支援
2011年3月11日、未曾有の東日本大震災は三陸沿岸を中心に甚大な被害をもたらした。津波により多くの市町村で住宅や学校が流され、生活の基盤が奪われる中、地域住民の健康づくりや交流の拠点である海洋センターも大きな被害を受けた。
まず、2011年から2012年にまでに、一部損壊の被害を受けた8センター・10施設に対し、総額9,740万円の緊急復旧修繕助成を決定。屋根や壁、プール設備の修繕を行い、地域の人々が安心して利用できる環境を整えた。
津波で壊滅的な被害を受け、使用できなくなった4つの海洋センターについては、総額約5,650万円の災害復旧修繕助成を決定。2014年から2019年にかけて、国の補助金などを活用し、順次再建が進められた。
・岩手県洋野町種市B&G海洋センター(艇庫)*2014年新設・復旧
・岩手県山田町B&G海洋センター(艇庫)*2016年新設・復旧
・岩手県陸前高田市B&G海洋センター(屋内温水プール)*2018年新設・復旧
・宮城県亘理町B&G海洋センター(艇庫)*2019年新設・復旧
この再建の取り組みは、住民にとって単なる施設の再建にとどまらず、震災で途切れてしまった日常を取り戻すきっかけとなった。陸前高田市では、津波で全壊した屋内温水プールが再開すると、子どもから高齢者まで幅広い世代の市民が集まり、久しぶりに笑顔を交わしながら交流する光景が見られた。人々の笑い声や歓声がプールに響き渡り、地域のつながりがゆっくりと取り戻されていった。
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再建された洋野町種市海洋センター(艇庫)
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陸前高田B&G海洋センター(屋内温水プール)は、複合施設「夢アリーナたかた」の一部として再建された
東日本大震災で培った経験をもとに、その後の「熊本地震」における支援活動は大きく変化した。
熊本地震:被災地へ駆けつけたB&G指導員の迅速支援
震災からわずか5日後の4月22日、彼らは南阿蘇村へ救援物資を届ける活動を始めた。医薬品や衛生用品、肌着に加え、海洋センターのある鹿児島県長島町と与論町から届けられた支援物資など、被災直後に必要とされる物資をトラックに積み込み、次々と運び入れた。
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救援物資を搬入する様子
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救援物資を運び入れた湯前町・あさぎり 町・玉名市のB&G指導員
同じく22日、鹿児島県B&G地域海洋センター連絡協議会(以下、鹿児島県連協)も南阿蘇村への救援物資搬入を開始。鹿児島県連協を代表して、志布志市のB&G指導員たちがマットや包帯、医薬品などを届けた。
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救援物資を搬入する様子
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自衛隊員と協力して救援物資を搬入
被災直後に物資が届くことは、住民にとって生活面だけでなく精神面でも大きな支えとなり、被災者の不安や孤独感を和らげるとともに、災害時の地域の回復力を支える基盤となる。
子どもたちに笑顔と安心を届ける支援
その後、熊本地震では、被災した子どもたちの心身のケアを重視した活動を展開した。南阿蘇村の幼稚園児を対象に数回にわたり行われた「フロアリズム運動教室」では、音楽に合わせて体を動かすことで、緊張や不安でこわばった心と体をリフレッシュする取り組みを行った。
笑顔で運動する子どもたち
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元気いっぱいに体を動かす子どもたち
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会場は終始笑顔であふれた
また、宇城市と菊池市では、マリンスポーツなどを満喫できる「B&Gフェスタ」を開催。カヌー、バナナボートなどを安全に楽しむ機会を設け、子どもたちに「遊び」と「笑顔」を取り戻す場をつくった。地域のボランティアや保護者も参加し、地域とのつながりを再び築くきっかけにもなった。
B&Gフェスタin宇城市
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バナナボートを楽しむ参加者
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魚のつかみ取りも実施
さらに、震災翌年の夏休みには、熊本市・宇城市・南阿蘇村の小中学生と保護者を対象に「B&G帆船クルーズ」を実施。帆船に乗った子どもたちは「こんなに楽しいのは久しぶり」と弾ける笑顔を見せ、その光景は指導員たちの心に残った。
帆船みらいへ
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船上での記念撮影
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海水浴を楽しむ子どもたち
こうした体験プログラムは、被災によって失われた安心感や日常を取り戻す手段として、子どもたちや保護者が再び地域でつながり合う場を生み出す役割を果たす。笑顔あふれる時間は、震災で途切れた地域の絆の回復を後押しする。
子どもたちに笑顔と安心を届ける支援
震災から5ヵ月が経過した9月から「B&G指導員ボランティア派遣事業」を4回にわたって実施。全国のB&G指導員をブロック単位で組織的に派遣し、未だ不自由な生活を強いられている南阿蘇村の倒壊住宅のがれき撤去作業などを行った。
夜行バスで現地入りし、朝から夕方までボランティア活動に取り組んだ。体力的にも精神的にも厳しい作業だったが、仲間との連帯感が派遣者の支えとなった。全国のB&G指導員が現地で作業する姿は、被災者の前向きな気持ちを取り戻す力になったことだろう。
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がれき撤去作業の様子
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全国から復旧作業に駆け付けた指導員たち
東日本大震災では、拠点を再建することが最優先だった。一方、熊本地震では、指導員たちが物資の搬入やボランティア活動に積極的に取り組むとともに、子どもや地域住民に寄り添ったプログラムも展開した。
後編では、2024年元日に発生した能登半島地震を取り上げ、子どもから高齢者まで幅広い世代に寄り添った支援活動を追う。