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魚も鳥も仲間!大崎町の海洋クラブで育つ子どもたち(後編) 2025.09.04 UP

鹿児島県大崎町に発足した「B&G大崎わんぱーく海洋クラブ」。自然豊かな大崎海岸を舞台に、子どもたちが水辺のアクティビティを通して、環境と命、そして地域とつながる新たな学びの場が育まれている。
前編では海洋クラブ設立の背景や町の環境教育の歩みを紹介したが、後編では実際の活動に密着し、海とともに育つ子どもたちの姿と、地域が一体となって支える取り組みの実像に迫る。

絶滅危惧種のコアジサシが産卵、子育てできるよう、大崎わんぱーく海洋
クラブをはじめ、地域一体となって保護活動などを実施している。

絶滅危惧種のコアジサシが産卵、子育てできるよう、大崎わんぱーく海洋クラブをはじめ、地域一体となって保護活動などを実施している。  画像の使用許可を得て掲載(提供:大崎町役場 )


ー目次ー
■川で魚を見つけてごみも拾っちゃおう!
■絶滅危惧種の鳥「コアジサシ」を守ろう!
■「B&G拾い箱」でつながるみんなの輪
■子どもも大人も、みんなで学べる海洋クラブ
■体験が変える、子どもとまちのミライ

川で魚を見つけてごみも拾っちゃおう!

「ライフジャケット、ちゃんと締めた?」「水の上では焦らず、ゆっくり漕いでみようね」。
 5月下旬、大崎町内を流れる菱田川。小学生たちが次々とカヌーに乗り込み、インストラクターの丁寧な指導を受けながら、水面に静かに漕ぎ出していく。はじめはおぼつかない様子だった子どもたちも、しばらくすると自分のペースでパドルを動かし、水上での移動を楽しみ始める。

子どもたちがカヌーに乗って水上清掃に取り組む

この日のプログラムは、カヌー体験に加え、水辺での安全講習、自然観察、水上清掃活動を組み合わせた一日体験。子どもたちは小魚を見つけて喜び、川岸のごみを拾いながら、自然と人間のつながりを学ぶ。「川ってこんなにきれいなんだ」「ゴミを拾うと魚も喜ぶね」と、自分の行動が環境に影響することを実感する。

「最初はちょっと怖かったけど、漕げるようになってすごく楽しかった」「魚がたくさん見えたし、ゴミ拾いもできてうれしい!」と話すのは、初参加の小学5年生。子どもたちの真剣な表情や笑顔を見守る保護者たちも、成長を感じて思わず目を細める。体験を終えた後には、「また家族で川に来てみたい」と話す子もおり、自然との触れ合いが学びを深めるきっかけになった。

水上清掃を終えて みんなで集合写真

絶滅危惧種の鳥「コアジサシ」を守ろう!

海洋クラブの主な活動の一つに、絶滅危惧種であるコアジサシの保護など、地域の自然環境を守る取り組みがある。コアジサシは砂浜や河口に巣を作る小型の海鳥で、近年は生息地の減少や人間活動の影響によって数を減らしている。

コアジサシ保護活動

海洋クラブでは、子どもたちが鳥の模型作りや観察を通してコアジサシと向き合う体験を行っている。開発によって本来の繁殖場所である砂浜や河川の中州が失われているため、砂地にコアジサシの模型を置き、「ここで繁殖しても大丈夫だ」と鳥に認識させることで、実際の繁殖を促している。

子どもたちが色を塗ったコアジサシの模型

一方、森では子ども夢基金の助成を受け、「昆虫採取が楽しめる森をつくろう」というテーマで活動を展開している。子どもたちはカブトムシの幼虫を育てる木製の飼育箱を自分たちで作り、その中で幼虫を育てながら成長の過程を観察する。単に昆虫を飼うだけでなく、森の生態系や昆虫の生活環境について学ぶことができるのが特徴だ。

 この活動では、木の扱いや土の管理といった作業を通して、自然との関わり方や命の大切さを体感することができる。子どもたちにとって、教科書だけでは得られない五感を使った学びの場となっている。

  • カブトムシの幼虫を育てる飼育箱

    カブトムシの幼虫を育てる飼育箱

  • カブトムシの幼虫を大切に飼育箱へ移す

    カブトムシの幼虫を大切に飼育箱へ移す

「B&G拾い箱」でつながるみんなの輪

さらに2025年度には「B&G拾い箱」の設置が決まっており、砂浜に打ち上げられたプラスチックやペットボトル、漁具などの漂着ごみを、みんなで回収できる拠点となる。これまで個人の善意に任されていたごみ拾いを、地域全体の取り組みとして広げていく。 全国各地でさまざまな工夫を凝らした、B&G拾い箱が設置されており、大崎町ではどのようなごみ箱が設置されるのか、今から楽しみだ。

現在、町でデザインや機能を検討中!

海洋クラブ責任者の中山美幸氏は「拾い箱は単なるゴミ箱ではなく、環境教育の入り口。子どもたちが自分たちの手で町をきれいにする体験が学びにつながる」と語る。こうした活動を通じて、子どもたちは地域の環境課題に触れるだけでなく、自ら行動することの意味や責任感を学び、住民同士のつながりも自然と深まっていく。

子どもも大人も、みんなで学べる海洋クラブ

海洋クラブでは、上級生が下級生を手助けしたり、地域ボランティアが子どもたちを見守ったりすることで、協調性や思いやりを学ぶ機会が多くある。前編で紹介した夏休みの「遊びの学校」では、地域住民が授業や体験活動に参加し、世代を超えた交流が自然に生まれる。
 子どもたちは地域社会の一員として、自然や人々と関わる楽しさや大切さを学ぶ。保護者にとっても、子どもを通じて地域の人と話す機会が増え、薄れつつあった地域のつながりを取り戻すきっかけになっている。

  • 海辺の活動「志布志湾の魚を知ろう」

    海辺の活動「志布志湾の魚を知ろう」

  • みんなで一緒に登る開聞岳

    みんなで一緒に登る開聞岳

体験が変える、子どもとまちのミライ

こうした活動を通して、子どもたちは単に自然の知識を得るだけでなく、自ら考えて行動する力や仲間と協力する力、地域を思いやる気持ちを育んでいる。海や川、山の中での体験は、教科書では学べない「生きた知識」として、確かに心身に刻まれていく。

  さらに町全体にとっても、子どもたちの活動は、環境意識を高め、持続可能なまちづくりへの理解を深める大切な役割を果たしている。海洋クラブで得た学びは家庭や地域に還元され、次世代の環境教育や地域活動の循環へとつながっていく。

  海や川と触れ合いながら学ぶ子どもたちの姿は、自然を大切にし、地域を思いやる心が育っている証だ。B&G大崎わんぱーく海洋クラブでの経験は、子どもたち自身の成長だけでなく、町全体の地域への関心を高める力になっている。こうした小さな一歩の積み重ねが、地域の未来を支える大きな力となり、次の世代へと受け継がれていくに違いない。

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