教えるって難しい?


小学校も夏休みに入り、私の小学二年生の娘も学校の宿題があります。

リビングのテーブルで算数のひっ算をしている娘から「この問題がわからない」と言われ、ドリルを見ながら教えることに。

娘からドリルを借りて例題を見ながら、説明をし、無事に教えることができ、娘は問題の正解にたどりつきました。

 

突然ですが、みなさんに質問です。

 

「目の前にじゃんけんをしたことがない人がいます。今から1分でじゃんけんの仕方を教えてあげてください」

 

いかがでしたでしょうか。

 

どのように説明をしたらよいのか、一瞬戸惑った人は少なくないと思います。

 

じゃんけんは日本人であれば、ほとんどの人ができると思います。

それなのに、どうして戸惑うのでしょうか。

 

 

私の担当している養成研修での話です。

昨今の養成研修修了者の後日談を聞くと、海洋センターに帰り、先輩から“養成研修で学んできたものを活かし、今度のカヌー体験会で指導するよう”言われたときに、「指導法は教わっていません」と答える修了者がいるそうです。

 

笑い話ではありません。

 

カヌー体験会の例では、自分自身が「できる」ことで終わっていて、それを「教えられる」ところまで消化できていないと考えられます。

 

 

もう一つ例を挙げると、養成研修でカヌーのフォワードストロークが真っすぐ進めるようになった研修生がいたときに、どうして自分が真っすぐ進めるようになったのかがわからないケースがあります。

 

この場合、フォワードストロークができるようになったけれども、人に教えられるレベルまで理解ができていない、自分の動きがどのように変わったのか、把握ができていない状態と考えられます。

 

指導における「できる」ことと「教える」ことには、大きなギャップがあることを常に意識しておく必要があると痛感しています。

 

「できる」

・自分の頭で理解して、身体を使って、実際に正しい動きをアウトプット、再現することができること。

 

「教える」

・自分の頭で理解したことを、口頭や資料などのツールを使い、他人に動きを理解させて、

かつ、理解した動きを正確にアウトプット、再現できるようにさせること。

 

 

「教える」ためには、次のことが求められると思います。

 

・人に説明できるまでに正しい動きの言語化ができているか

・相手がイメージしやすいような例え話や表現を伝えられているか

・理解した内容を資料にし、視覚化するなど、わかりやすく説明できているか

 

 

みなさんに質問をしたじゃんけんの例では、自分がしているじゃんけんをイメージしながら、正しく言語化できる人は、簡単に説明することができます。

 

 

海洋センターの現場で求められる即戦力の指導者ニーズに応えるため、「できる」ことよりも「教える」ことができることを重視し、今年度の研修からは、「指導法」の試験を新たに設けて、カヌー、水泳、水辺の安全教室の指導ができているかを実技試験として、確認することとしました。

 

カヌーの指導法試験の内容としては、カヌーの乗降艇の説明方法、パドルの持ち方の説明方法、沈・脱艇時の対処法、フォワードストロークの漕ぎ方など7つの項目があります。

7つの試験項目を1、2分で端的に説明した動画を別に撮影し、研修生が自由に何度でも視聴できるような環境を整えて、動画と同じ内容を試験で説明できるようにしました。

 

フォワードストロークの漕ぎ方の動画

 

「人に教える」事業に携わる一人として、「教える」ことの難しさを強く感じながらも、できていない相手に合わせて、指導者の方が様々な指導法、伝え方を考え、工夫する面白さも体感しています。

 

冒頭の娘との話に戻ると、教えたひっ算問題の答えを導き出した娘を見て、それだけで、うれしい気持ちになります。

 

9月13日から鹿児島県天城町にて、今年度2回目の養成研修が行われます。

養成研修に参加する未来の指導者には、教えることの難しさにもめげずに、教えることの楽しさに巡り合えてくれたら、指導者冥利に尽きます。

 

養成研修の指導実習でとびっきりの笑顔でSUPを楽しむ子供たち


事業部 事業課 鈴木 昭正

6 コメント

  1. 兵庫県 上郡町B&G海洋センター 種継 武 より:

    2回目の養成研修で検証し更に充実させて下さい。 応援します。

  2. B&G財団 より:

    種継様 種継様も研修に携わる者として、ともに充実させていきましょう。

  3. 甲賀市甲賀B&G海洋センター 大林真也 より:

    伝えること(指導法)の難しさとても共感させていただきます。私も、昨年養成研修で様々な種目の指導方法を教えていただきました。地元に帰っていざ指導させてもらう時(前に立った時)養成研修の教官や指導員の先生方のようにわかりやすく丁寧な言葉で指導するのがとても難しかったです。話し方のスピードや内容、それにテーマに対しての情報の量(ひきだし)をお伝えしても、人への伝わり方はそれぞれなので今、すごく指導者として勉強しながら活動させていただいています。とりわけ子どもたちへの指導は反応・集中力・要点(テーマとのリンク)・内容・振り返りを意識して行うのがめっちゃ大変です。養成研修でもあったように「ちょうちょ結び」を言葉で伝えるというお話もあり、指導(伝える)って難しいなと感じました。

    • B&G財団 より:

      大林様 海洋センターでは、参加人数が異なっていたり、対象者が違っていたりと、同じ現場はないと思います。その中で、課題意識を持って指導されており、素晴らしいと思います。これからも、伝え方など資質向上を図り、子供たちのために様々な事業で楽しさを提供していってください。

  4. 匿名 より:

    大林様 海洋センターでの事業でも、まったく同じ現場はなく、参加者人数が異なったり、対象者が違っていたりと、同じ指導方法が適さない場合もあります。大林様のように課題意識を持ち指導していることは素晴らしいと思います。指導者として、常に資質向上を目指して、子供たちにいろんな事業で楽しさを提供していってください。

  5. B&G財団 より:

    大林様 海洋センターでは、参加人数が異なっていたり、対象者が違っていたりと、同じ現場はないと思います。その中で、課題意識を持って指導されており、素晴らしいと思います。これからも、伝え方など資質向上を図り、子供たちのために様々な事業で楽しさを提供していってください。

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