【B&G職員リレートーク】忘れられてる?オリンピック施設の後活用


こんにちは、休眠預金事業チームの持田です。

 

東京オリンピックの開会式まで残り2ヵ月を切りました。

ただ、5月25日現在、コロナ禍は未だ収束が見通せず、行うたびに中止・再延期の意見が増える世論調査、政府や東京都・IOCなどの様々な思惑が交錯する中、「今ホントに開催2ヵ月前!?」と言うのが多くの人の実感ではないでしょうか。

 

 

先日の報道によると、予選の実施期限が6月末に迫る中、約11,000の選手枠に対して3割が未確定だそうです。私も長くカヌー競技の日本代表を務めていましたが、開催2ヵ月前に代表が決まっていない、選考会開催すらおぼつかないというのは、これまでなかったことです。

 

オリンピックは、アマチュアスポーツ、とりわけマイナー競技の選手や関係者にとって「4年に一度の日の当たる機会」です。しかし、感染予防対策として度重なる検査や行動制限を強いられるストレスフルな環境下では、本番で最高のパフォーマンスを発揮するためのコンディショニングやピーキングは困難と思われます。「アスリートファースト」として今大会が真に世界一を決める場になり得るか、はなはだ疑問です。

 

そして、いくらスポーツの祭典オリンピック・パラリンピックと言えど、大会期間はたった1ヵ月間、いわば瞬間最大風速、期間限定のイベントに過ぎません。

 

開催可否に議論が集中する中、既に多額の費用をかけて建設・更新された施設・設備について、今後重要となる「後活用」が忘れ去られているように思います。

 

 

 

施設レガシー活用の計画と現実

 

まず、国や都が新規や改装で整備した施設の、整備費、来場者目標、年間収支見込みです。

 

報道記事を元に作成

報道記事を元に作成

 

収支見込みは、2年前の2019年6月時点の報道からの数字で、それ以降の新たな試算は、情報として見当たりません。また、運営費用を捻出するためのネーミングライツの導入検討も、2020年2月20日の導入検討委員会の開催以来、目立った動きはないようです。

 

施設利用については、昨夏の開催延長を受けて、期間限定で競技団体や一般等へ供用された時期もあったようですが、現在は大会に向けた工事などの関係で、中止されています。

 

 

これに対し、コロナ禍において人々のアクティビティは大きく増加しているとの報告があります。

【参考】STRAVA 「Year in sport 2020」

 

実感としても、屋外の公園等の人出は継続して多いように見えます。私が利用している市の総合運動公園では、毎週末朝9時には656台収容の駐車場が満車になっています。

 

一方では、巨額を費やして建設された施設が、選手の練習はおろか市民の利用すらできずに遊んでいる状況。他方では、市民が利用する既存の施設はキャパオーバーにより密が生じているような状況。非常に違和感があります。

 

さらに踏み込んで言えば、外国チームの事前合宿を期待して準備された施設や設備も全国の市区町村には数多くあるはずですが、どれほど住民等に活用されているのかという疑問もあります。

【参考】オリンピック事前合宿中止相次ぐ(2021年5月19日付朝日新聞)

 

カヌー・スラロームセンター(東京都江戸川区) 写真はプレオリンピック大会(2019年10月)

カヌー・スラロームセンター(東京都江戸川区)
写真はプレオリンピック大会(2019年10月)

 

 

 

期待される幅広い活用

 

オリンピックの施設運営は、既に民間の指定管理者に委託されていますが、選定における「事業計画書」をご覧になったことはありますか?

 

実は、東京都体育施設の指定管理者候補者の決定について(オリンピック・パラリンピック準備局 2018年8月22日)で公表されている各社の事業計画には、提案課題3 〔スポーツの普及振興、利用者へのサービス向上等の事業に関する業務として〕として、競技以外の活用提案が明記されています。

 

例えば夢の島公園アーチェリー場においては、多目的広場を活用してのアウトドアフィットネス事業の開催であり、大井ホッケー競技場ではグランドゴルフやジョギング講座、ボッチャ体験が、海の森水上競技場ではヨガやダンスなど、フィットネスやレクリエーションプログラムが提供されるとのことです。私も昨年10月に海の森水上競技場のダンスの模様を垣間見ました。

 

いずれにしても、当初の事業計画では2021・2022年度の回数や定員が記載されており、大会の翌年度からが本格活用という位置づけなのでしょう。

 

 

なお、私の競技種目であったカヌー(スラローム)では、過去の他国のオリンピック施設でも、揚水ポンプの電気代コストが大きな課題でした。

 

夏が長い国・地域と違い、東京の夏は短く、一般市民が水辺に親しめる期間は決して長くはありません。そこでの活用拡大は相当に厳しいと予想しますが、事業者さんにはぜひ頑張って来場目標を達成して欲しいものです。

 

折しもコロナ禍で、昨年度、水泳授業中止や海水浴場の開設中止によって水難事故が増加したのは多くの人の記憶に新しいと思います。

 

オリンピック・パラリンピック「体験学習」の一環として、また防災目的の体験型の安全学習として、子供を対象にした川・流水の体験訓練も、施設活用のプログラムとして考えられます。

 

 

 

東京オリンピックを契機として全国に建設、整備された施設や器材、そのコストに見合った活用ができているか、「オリンピック後」に注目していく必要があるのではないでしょうか。

 

オリンピックの激流コースが……

オリンピックの激流コースが……

 

水を減らせばほど良い体験の場にもなります(1972年ミュンヘンオリンピックでの整備施設)

水を減らせばほど良い体験の場にもなります(1972年ミュンヘンオリンピックでの整備施設)

 

 


事業部 事業課 持田 雅誠

1 コメント

  1. 浜田市三隅B&G海洋センター 阿瀬川 より:

    お世話になっております。昨日、当事業団が指定管理するスポーツ施設で、県高校サッカー大会、今日は、中学生の市総体水泳大会があり、審判長を務めました。昨年から大会中止、無観客試合が続き、今日は、久しぶりの観客試合となり、選手数より保護者数が上まりました。まだまだ都会は休校、休部、大会も開催されないと聞きます。地域によって格差がこの一年で拡大しているように思います。オリンピックも一瞬、子どもたちの体験、成長も一瞬。未来を担う子どもたちのためにも、我々、全国B&G指導者が一致団結しそれぞれのブロックで格差の解消を担う事が必要と考えます。昨日、今日、選手のがんばる姿を見るとこちらもパワーが出ます❗️無くそう体験格差引き続き宜しくお願い致します。

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