【B&G職員リレートーク】農業が教えてくれたこと
職員リレートークこんにちは、海洋センター・クラブ課の藤田です。
今年度から新たにB&G財団の一員となりました。
学生時代、「とにかくなんでも体験してみよう!」と思い、様々なアルバイトやボランティアをしてきた私。大きな影響を与えてくれたのが、ウーフという農業体験でした。
ウーフを通して触れた多様な価値観
ウーフ(WWOOF)とは主に農業体験を通した交流機会を提供するイギリスのNGO団体で、お金のやり取りを一切せずに“ウーファー”(参加者)が農場等を経営する“ホスト”に「労働力」を提供し、ホストが「食事・宿泊場所」を提供するという、物々交換みたいな仕組みを運営しています。お互いのコミュニケーションを大切にし、相互の知識・経験を提供しあう素敵な制度で、日本でも実施されています。私も、十代後半から二十代にかけて、ウーファーとなって日本各地の農家さんのお手伝いを体験しました。
ウーフを支えるホストにはどんな人々がいるのかというと、それはもう「良く言えば個性的、悪く言えば変人」みたいな人が多くて(笑)、とにかくユニークな人たちばかり。でも、ちゃんとポリシーを持って意識の高い生活を心掛けている人たちなので、誇りを持って農業や仕事をしている姿はとても刺激的でした。
ですから、農業のことを何も知らない未熟な私はただただ圧倒されるばかりでしたが、進路選択の時期に多様な価値観に触れ、将来の幅を広められたことは今でもとても良い経験だったと思います。
斬新なリンゴ栽培をする農家さん
ここで、18歳の時に数カ月間滞在した、長野県大町市にあるリンゴ農家さんでの体験をご紹介したいと思います。江戸時代から続く由緒ある農家さんでしたが、リンゴ農法については驚くほど先進的でした。長野県はリンゴに対する研究が盛んで、私がお世話になったたホストの農家さんでも「新わい化栽培」という新しい農法に着手していました。
「新わい化栽培」とは従来の栽培方法とは大きく異なり、リンゴの木を大きくせずに密植を行う型破りな農法です。定植2年目から収量が確保でき、木が小さいため密植でも日当たりが良く、秀品率が高い収穫と作業の効率化が得られます。
「古いものに縛られていては、良いものはできない」と語っていたホストのお父さん。どれだけおいしく質の良いリンゴが出来るのかを、常に一番に考えている方でした。
本質さえブレなければ、先祖代々の知恵とノウハウを受け継ぎながら新しい技術を導入すれば、より素晴らしい結果をもたらしてくれます。古いものと新しいものをうまく融合する博学さとセンスは圧巻でした。
「生きる」ことって何?
ウーフに参加しながら想いを持って生きるたくさんの人々と触れ合う中で、私はこんな学びを感じていくようになりました。
〝仕事をするということは生きるということ、そして、食べるということも生きるということ″
「美味しい作物を作ろう」とする想いがいい仕事へと結びつき、安心・安全、そして健康と幸せをもたらしてくれる。仕事をすること・食べることは、生きる上の根幹であって絶対に蔑ろにしてはならない、だから私も真剣に、そして真摯に自分の将来と向き合おうと強く思いました。
一方、日本の農業の将来はやはり芳しくない状況だと思います。就労者の高齢化と後継者不足は慢性化しており、安心・安全な日本の農作物がどんどん危機にさらされ、質の悪い品が市場に出回る。そんな悲しい現実がどんどん広がっています。
ですから、官民関係なく直ちに日本の農業を守る対策を行っていく必要がありますが、それ以上に私はもっと必要なことがあると自負しています。それは、本当に良いものを見極める自分自身の目を育てることです。
どんなに質の高い良いものが減ったとしても、完璧にゼロになることはない。本物の良いものは必ず生き残る。それをきちんと選び抜いていけるかどうかが私たちに問われているのです。本当に求められる能力はそこなんじゃないかと思います。
まだまだ必死に日々の業務をこなす毎日ですが、農業を通して得た様々な経験を生かしつつ、B&G財団でも精一杯励んでいきたいと思います。
—————————————————————————–
B&G財団では、児童養護施設・ひとり親家庭の子供たちの体験活動へのご支援をお願いしています。
寄付の方法について 詳しくはこちら をご覧ください。
当財団に対するご寄付は一定の税制優遇の対象となります。