2025.3.11 UP 東日本大震災から14年
震災の教訓を活かした石巻市の防災力強化の取り組み

日本財団助成事業

石巻市の防災力強化と市民の意識向上

宮城県で仙台市に次ぐ第二の人口を誇る石巻市。東日本大震災では、津波の高さは約20メートル、死者3,188人の未曽有の被害が発生。避難者は一時5,000人を超え、避難所250ヵ所、在宅避難者を含めた最大食料配布人数は約87,000人分にも上った。広範囲で地盤沈下や液状化が発生し、市内の至る所に大きな爪痕を残した。

 震災から現在までに、破壊された防波堤や防潮堤、高盛土道路、内水排水施設等の整備のほか、迅速・安全に避難できる避難路や避難場所の整備を推進。同時に、個人と地域で安全な場所に逃げる体制を構築するため、地域防災計画の見直し、防災教育や自主防災組織等の強化などを行い、市民の防災意識は高くなっている。

また、防災意識向上の一環として、「石巻防災・震災伝承のつどい」を毎年実施。今年1月に開催した同イベントでは、能登半島地震で避難所の医療支援に当たった石巻赤十字病院の植田信策副院長が基調講演。「トイレ、キッチン、ベッドの48時間以内に設置することで災害関連死の軽減につながる」と説いた。そのほか、復興防災バスツアー、中高生の震災伝承セッション、VR動画による水没車両脱出体験などが行われた。

復興防災バスツアー

復興防災バスツアー

一方、1987年の竣工以来、多くの地域住民に親しまれてきた「石巻市雄勝B&G海洋センター」(艇庫・プール・体育館)は震災直後、体育館の屋根を超える、約20メートルの津波が襲い、壊滅的な被害を受けた。

  • 体育館の屋根を超えて津波が襲った

    体育館の屋根を超えて津波が襲った

  • 津波が襲った2F武道場

    津波が襲った2F武道場

  • 2F武道場から艇庫のあった地点を望む

    2F武道場から艇庫のあった地点を望む

  • プールの被災写真

    プールの被災写真

石巻市は海洋センターの再建を目指したが、高台移転などに伴う地域人口の減少などにより再建を断念、2021年3月海洋センターは廃止となった。

機動力を発揮し、県外の復旧支援にも対応する防災拠点

そうした中、B&G財団は2021年度から自治体と連携し、災害支援に即応できる機材と人材を備えた防災拠点を整備する「防災拠点の設置及び災害時相互支援体制構築」事業を開始。

 石巻市を2022年度第二期29ヵ所の防災拠点の1つに選定。防災倉庫の整備や油圧ショベル・スライドダンプなどの機材配備、重機オペレーターの人材育成などにB&G財団が総額3,900万円の助成を決定した。

 これまでに、広域消防署(石巻市大橋)の隣地に防災倉庫の整備を完了。人材育成では「小型車両系建設機械特別教育」の資格取得に加え、重機オペレーターのレベルアップ研修や防災士スキルアップセミナー、避難所運営研修などを定期的に行い、地域防災力の向上を図っている。

 さらに特筆すべき活動として、秋田県五城目町への復旧支援活動がある。2023年7月中旬、断続的な大雨により、五城目町は床上・床下浸水、農地の水没、道路や公共施設など、町内全域が水害被害に見舞われた。

 2週間後、五城目町は石巻市に支援を要請。斎藤正美市長から「すぐに行って助けてこい」との激励を受け、翌日、スライドダンプに油圧ショベルを積み込み、職員4人がダンプと公用車に分乗し現地に急行。

「現地に到着後、約500世帯が床上浸水した惨状を目の当たりにし、すぐに重機を下ろし流木と積もった土砂を撤去作業にあたった」と指揮を執った危機対策課の杉浦氏は当時の様子を語った。その後は重機を貸し出す形で、五城目町から依頼を受けた技術系NPOが活用。3カ月半、倒木や土砂の撤去、災害ゴミの除去などに役立てられた。

五城目町での復旧支援活動

五城目町での復旧支援活動

「重機の活動は本当に有難く、石巻市の皆さんに感謝の念に堪えません」と五城目町の担当者は語った。杉浦氏は「防災拠点はまさに時代に即した事業。各拠点間の輪を広げて強化することで救える命が必ず増えると信じている」と力強く語った。

 現在、防災拠点は全国各地で54ヵ所が稼働。年度内に15ヵ所が増え69ヵ所となる。これまでに「小型車両系建設機械特別教育」の資格取得者は54ヵ所の防災拠点で1,987人。年度内に設置される15ヵ所を含めると有資格者が大幅に増加する。今後も防災拠点の結束の輪が広がり、さらに威力を発揮していくはずだ。


 災害時の迅速な対応と地域の防災力向上を目指す取り組みは、今後ますます重要になる。全国に広がる防災拠点ネットワーク、技術と人材の強化により、災害時の即応体制が確立されつつある。防災意識を高め、地域全体で支え合うことが命を守る鍵になる。

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