2025.3.07 UP 東日本大震災から14年
B&Gネットワークが結ぶ、岩手県山田町と青森県南部町の強い絆

日本財団助成事業

山田町の震災から現在に至るまで

山田町は岩手県沿岸中部の三陸地方に位置する、太平洋に面した町。東日本大震災では津波の高さは18メートル、火災による人的被害は死亡者数及び行方不明者を合わせて825人、家屋被害は全半壊1,167棟にも及んだ。

大きな爪痕が残ったが、現在の復興に至るまでに「観光・養殖・祭事・交流」が大きな牽引役となった。観光では荒神・浦ノ浜・オランダ島といった三陸でも屈指の海水浴場がある。船越湾と山田湾に囲まれた湾内は波が穏やかでコバルトブルーに輝く美しい海が広がっており、県内外から年間2万人の観光客が訪れる。

山田湾に浮かぶ美しい無人島「オランダ島」

山田湾に浮かぶ美しい無人島「オランダ島」

養殖も盛んでサーモン、カキ、ホタテ、ホヤ、ワカメなどが有名。この中で特に「オランダ島サーモン」は一大ブランド。6ヵ月間で幼魚から約50センチ、2キロにまで育てて、首都圏を中心に年間約6万尾を出荷している。「他の養殖業者にも活力を与えている」と三陸山田漁業組合の関係者は誇らしげに話す。

祭事では昨年、県の無形文化財となった「山田祭り」(9月14日~16日)が町民の活力源になっている。最終日には243年の歴史を誇る大杉神社例大祭が行われ、沿道の大歓声を割って神輿を海の中まで威勢よく運び船に乗せて山田湾を1周。その後、大杉神社に神輿を力強い男たちが持ち帰る。大声援の中の神輿担ぎは迫力満点で、他県からも環境客が訪れるほど人気が高い。

県指定無形文化財「山田祭り」

県指定無形文化財「山田祭り」

山田町と南部町の強い絆

忘れてならないのは、震災直後から現在まで続く青森県南部町との交流だ。話は1984年にさかのぼる。この年、南部町にB&G海洋センターがオープン。海洋センターの責任者でB&G指導員でもあった、南部町長の工藤祐直氏(B&G財団評議員、B&G全国指導者会 会長)が海洋センター艇庫のある山田町にマリンスポーツ体験会(1泊2日)の実施を依頼したことをきっかけに両町の交流がはじまった。

  南部町に海はなく、マリンスポーツができる水面がないため、子どもたちは“海に行く”というだけで、期待を膨らまし喜んだと工藤町長は当時を振り返る。山田町でマリンスポーツを楽しんだり、子ども同士で交流することは、普段の生活では得ることが難しい、かけがえのない経験になるはず。よそに出て、あらためて地元の良さに気づくのではないかと語った。

  • マリンスポーツ交流会

    マリンスポーツ交流会

  • マリンスポーツ交流会

    マリンスポーツ交流会

以来、東日本大震災(2011~2015)、新型コロナウイルス(2020~2022)の期間を除き、交流はずっと続いている。すでに今年の計画も決まっており、総勢40人(両町20人ずつ)で浦ノ浜海水浴場での海水浴、オランダ島でのカヌー・SUP・バナナボートなどのマリンスポーツを満喫する予定だ。

 山田町の子どもたちも毎年1月にアイススケート交流会で南部町を訪れる。「子どもたちが地元を離れ、経験したことがないことを体験できる貴重な機会。今後も継続していきたい大切な交流事業だ」と山田町長の佐藤信逸氏は笑顔で抱負を語った。

また、南部町は東日本大震災のとき、津波で甚大な被害を受けた山田町に震災5日後から支援を実施。保健師を派遣し傷病者などの対応にあたらせたほか、救援物資として防寒着や肌着のほか、コメ23トン送った経緯がある。B&Gネットワークで結ばれた両町の絆は非常に強い。

復旧支援に向かう南部町職員

復旧支援に向かう南部町職員

海洋センターの現況

山田町B&G海洋センター(艇庫・体育館)の活動は順調に回復してきている。津波被害で甚大な被害を受けた艇庫は2016年に再開。春先から無人島オランダ島へのシーカヤックツーリングを皮切りに活動開始。艇庫や小学校のプールで「水辺の安全教室」を実施し、背浮き、ライフジャケット体験、ペットボトルを使った救助体験などを行い、セルフレスキューの重要性を子どもたちに伝えている。

夏休みの7月から8月にかけて、全6回の「マリンスポーツ体験教室」を実施。小学校4年生以上を対象にカヌー、SUP、バナナボート、ローボート、ヨットなどのアクティビティを行う。毎年20人を超える子どもたちがこの教室に参加し、地元の海を堪能している。

マリンスポーツ体験教室

マリンスポーツ体験教室

「海洋センター艇庫が再建して今年で10年。現在、指導スタッフは40人規模に増え、子どもたちには海遊びをしながら、海の危険や対処方法を理解させている」と話し、「この教室を通して子どもたちの笑顔が増えている」と担当者は語った。

また、同センターの体育館でもバレーボールやバトミントン、縄跳びなどの各種大会を開催。他にも各種教室やイベントを実施し、運動やスポーツを通じた町民の交流の場となっている。

縄跳び大会

縄跳び大会

山田町の震災からの復興を遂げる過程で、南部町との交流が大きな役割を果たしてきた。強い絆で結ばれた活動は、未来に向けた町づくりの原動力となっている。今後も山田町の海と人々が織り成す温かいつながりが、町の発展を支え続けるに違いない。

関連ページ

B&G財団メールマガジン

B&G財団の最新情報をメールマガジンにてお送りいたします。ご希望の方は、登録ボタンよりご登録ください。