特集 3.11 東日本大震災10年 episode 5

宮城県登米市自然に親しむ機会が減る危機感と「水辺の安全教室」
登米市中田B&G海洋センター

 

2021年5月放送のNHK連続テレビ小説の舞台として注目される登米市。東日本大震災では建物の倒壊等の被害が発生した一方で、沿岸部から避難された人々を受け入れました。町は元の姿を取り戻しましたが、人々の意識や生活には変化も感じられるそうです。

 

震災から10年。町では海水浴の機会が減るなど水辺を訪れる機会が失われつつあるなかで、自然と親しむ機会を提供し続ける姿勢を伺いました。

 

 

―― 震災から10年目を迎えるわけですが、地元の方々は特別な思いなどを抱かれていますか。

 

登米市は内陸部に位置しており、南三陸や気仙沼、石巻などから避難されてそのまま移住された方も多いです。実際に津波を経験された方は、恐怖が先立って「地元には戻らない」という方も少なくないと思います。

 

―― 海洋センターにも被害はありましたか。

 

地震によってプールが閉鎖となってしまいました。古い構造のプールでしたので損傷部分の修繕も大掛かりになってしまい、市内の子どもの減少や他施設のプールが充実したことを踏まえて閉鎖という判断になりました。開業当初の利用率は朝から晩まで人が絶えないほどでしたので、非常に残念です。

 

―― 町並みに震災の影響は残っていますか。

 

登米市内の商店街のなかには全損により空き地のままになっている部分がありますが、ほとんどもとの町並みに戻っていると思います。市内には県からの要請で仮設住宅地が3か所設置されていましたが、現在はすべて撤去されています。

 

―― 登米市は海にも比較的近い環境と思いますが、震災以降の海水浴の機会に変化はありますか。

 

大きく減っていると思います。沿岸部では防潮堤の整備が優先され、海水浴場の整備が後回しになっていました。海水浴場の整備が始まったのがここ4、5年で、最近になってようやく海開きが実現したという話を聞きます。

 

―― 地元の方に水辺に親しんでもらえるよう、どんな取り組みをされていますか。

 

当センターでは、北上川での舟艇による川下りを通して、水深の違いによる水温や流れの変化を体感してもらったり、ライフジャケットでの浮遊体験をしてもらっています。全国的に河川の氾濫などの水害も増加していると思いますし、もしものときの対応を学んでほしいです。

 

 

―― 小学校で授業の一環として実施された取り組みもあるそうですね。

 

昨年は公民館の青少年教育事業の一環で、近隣の小学校の授業時間に「水辺の安全教室」を実施しました。授業時間を割いていただき、プロジェクターでスライドを映して「自分の命は自分で守る」ことの大切さを伝えました。

 

 

―― 改めて、震災10年を迎える2021年の目標を教えてください。

 

コロナ禍で近隣学校のプールも閉鎖中ですので、感染対策を万全にして許される範囲で、子どもたちへ水に親しむ機会を提供したいと考えています。現在、小学校へカヌーを持参し、プールでのカヌー体験や背浮き指導を計画しています。
北上川での舟艇体験も市内外問わず受け入れ可能ですので、ぜひ多くの方に参加していただきたいです。

 

 

取材協力:
登米市中田B&G海洋センター 本宮秀年

 

 

 

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震災から10年、B&G財団はこれからも被災地に寄り添い、東北の各地とふるさとの海に笑顔が戻るよう、支援を続けてまいります。