特集 3.11 東日本大震災10年 episode 3

岩手県大船渡市津波被害を乗り越え、海とともに生きる
大船渡市三陸B&G海洋センター

 

三陸町綾里は養殖業が盛んな海とともに生きる町です。1896年の明治三陸大津波では本州の津波史上最高の38.2メートルを記録した場所でもあり、東日本大震災でも津波によって甚大な被害を受けました。

 

震災直後、大船渡市三陸B&G海洋センターは高台に位置するため、津波から避難してきた地域の方々を受け入れる役割を果たします。

 

震災から10年。大船渡市全体で唯一残った体育施設として、海への親しみを失わないよう尽力してきた日々を振り返っていただきました。

 

 

―― 震災から10年目を迎えるわけですが、地元の方々は特別な思いなどを抱かれていますか。

 

商業施設や宿泊施設などのハード面が整備されてきて、だいぶ復旧・復興が進んだと感じています。とくに学校の校庭や体育施設にあった仮設住宅が100%撤去されたことに、復興の実感が湧きます。「この場所はこうだったな」と、震災について振り返ることも少しずつ減ってきたように思います。

 

―― 大船渡市は津波によって甚大な被害を受けましたが、大船渡市三陸B&G海洋センターはどの程度の被害だったのでしょうか。

 

当センターは高台にあるため津波被害は受けませんでしたが、隣接する大船渡市三陸総合運動公園では地割れや地盤沈下による被害がありました。

 

―― 高台にある施設ということで、避難されてきた方も多かったのでは。

 

当センターは避難目標地点となる施設であり、あくまでも「ここに来れば高台で安全」と目印になる場所だったのですが、体育館や武道館があり駐車場も広いので地震から3日間ほど多くの避難者を受け入れていました。
バーベキューコンロに炭を焚いて暖を取ったり、停電しているなかでなんとか赤ちゃんのミルクを用意したり……断水でトイレも使えませんでした。とても大変な時間でした。

 

―― 震災後の大船渡市三陸B&G海洋センターは、どのような役割を担ったのでしょうか。

 

大船渡市全体で震災後に唯一残った体育施設でしたので、体育活動の拠点の役割を担ってきました。総合型地域スポーツクラブ「SUN陸リアススポーツクラブ」も設立され、当センターの職員が事務局の運営や指導を行っています。

子ども向け通年教室「放課後にこにこスポーツ塾」の様子

高齢者向け通年教室「高齢者いきいき健幸教室」の様子

―― 地域には津波による水への恐怖心などもあったと思われますが、プール開きはいつ頃から再開できたのでしょうか。

 

プールは震災の翌年から開放しています。私たちも当初は子どもたちが集まらないと想定しており、水を怖がらないように楽しい企画を実施して、少しずつ水への親しみを取り戻してもらおうと考えていました。
しかし、私たちが何もしなくても、想像以上の子どもたちがプールに来てくれました。結果的に様々なイベントも実施でき、たくさんの子どもたちにプールを利用してもらえました。

震災以降、市営プールは大船渡三陸B&G海洋センターだけに……

 

―― そのほかにも水辺に親しむために行われていることはありますか。

 

少しでも恐怖心が無くなることを願い、海への感謝と地域貢献も兼ねて海辺での清掃活動を行っています。津波被害はありましたが、大船渡市と海は切っても切れない掛け替えのない関係です。綾里中学校の生徒さんと共同で、毎年9月上旬に「水辺の安全教室」と同時開催で綾里漁港の清掃を続けています。

 

「海の清掃活動」の様子(2020年)

水辺の安全教室の様子(2020年)

―― 震災後の清掃活動はいつごろから実施されているのですか。

 

震災の翌年から、入れる場所の範囲で実施しました。子どもたちも「自分たちは何もできないけれど、海の近くのゴミくらいは拾える」という心持ちで参加してくれました。

「海の清掃活動」あとの集合写真(2020年)

 

―― 震災10年目に際して、実施されることはありますか。

 

大船渡市は2月16日から3月7日まで「感染拡大防止特別期間」に設定されていたため、様々な活動が自粛されており、当センターも休館中です。震災10年目ではありますが感染防止が優先されており、追悼式は関係者のみ(一般献花あり)と密を避けたかたちで行われる予定です。
※インタビュー実施は3月3日

 

――  改めて、震災から10年目を迎える2021年の目標を教えてください。

 

地域として令和元年の夏から海開きを再開できたので、水辺の活動をより大事にしていきたいと考えています。とくにコロナ禍によって子どもの活動の場も減っていますので、子ども向けの教室に力入れていきたいです。

 

 

取材協力:
大船渡三陸B&G海洋センター 菅生光輝

 

 

 

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震災から10年、B&G財団はこれからも被災地に寄り添い、東北の各地とふるさとの海に笑顔が戻るよう、支援を続けてまいります。