特集 3.11 東日本大震災10年 episode 4

宮城県大郷町水害の町で水に親しむ機会を提供し続ける
大郷町B&G海洋センター

 

大郷町は宮城県のほぼ中央に位置する町。東日本大震災では、地震によって町内の約20%の世帯が何らかの被害を受けました。一方で古くから水害への自主防災の意識が高く、「令和元年東日本台風」では吉田川の堤防が決壊したにもかかわらず、1人の死傷者も出しませんでした。

 

震災から10年。水害の町で水に親しむ機会を提供し続ける姿勢と、コロナ禍で各種イベントを自粛し「次年度こそ」と意気込む思いを伺いました。

 

 

―― 震災から10年目を迎えるわけですが、地元の方々は特別な思いなどを抱かれていますか。

 

大郷町は内陸部に位置することから地震による被害だけでしたので、町や海洋センターは震災前の生活を取り戻しているように感じます。
10年が経ったことで記憶の風化が進んでいましたが、2月13日に発生した福島県沖を震源とした地震によって、東日本大震災の記憶を少し思い出したのではないでしょうか。

 

―― 震災によってどの程度の被害がありましたか。

 

屋根の鉄骨コンクリートの破損やアリーナ天井の一部落下、プールの一部が地盤沈下するなどの被害がありました。

 

―― 震災発生の一か月後には、海洋センターで100人規模の大学生ボランティアを数か月間にわたり受け入れたそうですね。

 

B&G財団から依頼を受け、日本財団学生ボランティアセンター(GAKUBO)と連携して、首都圏の大学生ボランティアの宿泊拠点として武道場を無償で提供しました。毎日、石巻市で泥かきやがれき撤去などの救援活動に取り組んでくれた学生たちの姿に勇気づけられたと、当時の担当者が話していました。

 

―― 震災以降、子どもたちへ意識して伝えていることはありますか。

 

10年が経ち震災を経験していない子が増えてきまして、そんな子どもたちに当時の状況を説明してもなかなか想像できないと思います。ですから、町の避難所や家庭での備蓄など、身近な防災意識を伝えています。

―― 震災によって、地域で水辺への意識の変化はありましたか。

 

大郷町は古くから水害への自主防災の意識が高い町で、「令和元年東日本台風」の際には吉田川の堤防が決壊しましたが、死傷者は1人も出ませんでした。震災とは関係なく、水辺への危機意識は高いと思います。

 

―― 水害の恐怖を伝えるだけでなく、水に親しむための取り組みも実施されているのでしょうか。

 

園児を対象とした水遊び教室や、小学生を対象とした水泳教室などを実施しています。また、地域の青年団の発案でナイトプールを開いたこともあります。

 

―― ナイトプールと聞くと大人向けのイベントを想像しますが、どういった内容だったのでしょう。

 

「地域の人々や子どもが楽しんで参加できるイベントを通して、地域の活性化を図りたい」というコンセプトで、水面にバルーンやLEDライトを浮かべて普段のプールとは違った非日常感を演出しました。また、SUPやゴムボート体験なども実施して、アクティビティにも触れていただきました。

 

 

―― 普段、プールに親しみのない方々も取り込めたのではないでしょうか。

 

とくに子どもの保護者さんは、初めて海洋センターのプールに入るという方が多かったですね。

 

――  改めて、震災10年を迎える2021年の目標を教えてください。

 

令和2年度は新型コロナウイルスの影響でプールの営業ができず、「水辺の安全教室」や柔道・剣道大会なども中止となりました。来年度こそは、子どもたちが活動できる場を用意してあげたいです。

 

 

取材協力:大郷町B&G海洋センター 鈴木 熙

 

 

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震災から10年、B&G財団はこれからも被災地に寄り添い、東北の各地とふるさとの海に笑顔が戻るよう、支援を続けてまいります。