特集 3.11 東日本大震災10年 episode 1

福島県田村市震災直後も、コロナ禍でも「いつも通りにプールを開く」
田村市滝根B&G海洋センター

田村市滝根町は福島県の東部に位置し、鍾乳洞「あぶくま洞」の町として有名です。観光名所の「入水鍾乳洞」は、国の天然記念物にも指定されています。

 

震災当時、田村市の一部は福島第一原発20キロ圏内にかかるため「警戒区域」にも含まれていました。しかし、田村市滝根B&G海洋センター周辺は空間線量も低く、2011年6月から例年通りにプールを開き、近隣の子どもたちを受け入れました。

 

震災から10年。田村市滝根B&G海洋センターは、ウイルスという放射線と同様に「目に見えない脅威」に見舞われながらも「いつも通りに」プールを開きます。

 

―― 震災から10年を迎えますが、地元の方々はどのような思いを抱かれていますか。

 

福島県では風評被害による農産物価格の下落などがいまだに続いていており、原発の廃炉問題もまだ見通しが立っていません。より加速した復興と、風評被害の払拭を望んでいます。

 

―― 田村市滝根町は震災当時、どのような状況でしたか。

 

震災直後は田村市滝根町に限らず、未曽有の出来事に多くの人々が混乱したと思います。幸い、田村市滝根町に甚大な被害はなく大きな混乱には至らなかったように感じますが、市内では原発事故の影響により避難を余儀なくされた方々もいました。

 

―― 3月中には普段に近い生活に戻ることができましたか。

 

放射線量を意識して、少し暮らし方を変えながら生活していました。吹き溜まりや落ち葉など放射線量が高い場所も一部ありましたが、空間線量は比較的低い場所が多かったです。

 

―― 田村市滝根B&G海洋センターは2011年6月から例年通りにプールを開き、近隣学校の水泳授業を受け入れていますね。

 

市内の学校のプールはコンクリート製のため破損がひどく、一方で海洋センターのプールはアルミ製であったため、大きな修繕なしで使用できました。当時は屋外活動が制限されていたこともあり、屋内プールである当センターで学生や近隣の方々を受け入れました。
近隣小中学校の水泳授業利用は2~3年ほど続き、滝根小・中学校の水泳授業は現在も当センターのプールで行われています。

 

―― 当時の混乱を考えれば、プール開館には気を遣われたのではないですか。

 

施設整備や毎日の水質管理はもちろん、空間線量などの定点検査を続けて、安全にご利用いただけるよう取り組みました。

 

―― 震災以降、地域の皆さんの水辺への接し方は変化していますか。

 

福島県には猪苗代湖という大きな湖があるので、近年は湖水浴が増えているように感じます。湖水浴は沖にさらわれる心配もなく気軽に遊べる印象があるかもしれませんが、水上バイクとの接触事故も起きており、湖にも危険は存在します。「水辺の安全教室」などで安全に楽しく遊ぶ方法を伝えていきたいと思います。

 

―― 震災を経て、海洋センターはどのような役割を担っていくべきでしょうか。

 

福島県をはじめ、多くの地域で津波の被害を受け、現在もテレビ報道などで当時の映像を見ることがあります。このような海の怖い面は、正しく学んでいく必要があると思います。その一方で、海の美しさや多様な生物の存在、マリンスポーツの楽しさなどを地域の方々に伝えていきたいです。

 

―― 改めて、震災10年を迎える2021年の目標を教えてください。

 

2020年はコロナ禍ではありましたが、感染対策を徹底しながら例年通りにプールを開くことができました。今年も「通常営業」で、皆さんに海洋センターを利用していただけるようがんばっていきます。

 

 

取材協力:田村市滝根町B&G海洋センター 今野翔太・浅利友一

 

 

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震災から10年、B&G財団はこれからも被災地に寄り添い、東北の各地とふるさとの海に笑顔が戻るよう、支援を続けてまいります。