私のカナヅチ対策エピソード

生徒さんの立場から学ぶ「言葉巧みに緊張をほぐすこと」
 ~富山市八尾B&G海洋センター 伊藤実花さん~

泳げないけど、海やプールで泳いでみたい。皆さんも一度はそんな想いを抱いたことがあるでしょう。「私はカナヅチだから」と海やプールを敬遠していませんか。「カナヅチ」は必ず克服できます。今回は富山市八尾B&G海洋センターの指導員である伊藤実花さんに「私のカナヅチ対策エピソード」を伺いました。

 

スポーツクラブに通い詰めて知った生徒さんの緊張感

 

伊藤さんは以下のことを念頭に置いて、水泳の指導をされています。

  • B&Gプールの教室に参加してくれたことに感謝、称賛する
  • 水に触れる感覚や浮くことや沈むことなど水の特性に興味をもってもらう
  • 陸上では体感できない、水中特有の感覚を味わってもらう
  • 水中では呼吸制限があり吸えないが、吐けることを理解してもらう
  • 水中の景色を見ることを意識してもらう

これらを踏まえ、水泳の型や動作を正しく伝えるために、伊藤さんは視覚や言葉を使って表現をしていました。

 

「実際の型、型にするまでの動作を見せること、言葉でも型がイメージできるものや感覚を表現していきます。ただ、言葉によっては個々の表現パターンが必要になるために正しい動作を掴んでもらうことで、身体のある部分から感覚を知ってもらうことが重要になります」

 

現在、指導者として海洋センターに勤務する伊藤さんですが、思わぬ場所でこの指導方法を習得することになるのです。それがプライベートで通っていたスポーツクラブでした。

 

インストラクターがどのように指導をしているのかを生徒さんの立場で知ることができました。指導者として緊張することはありませんでしたが、教えてもらう立場になれば緊張をすることに気付いたのです。

 

伊藤さんは教えてもらう立場を知ったことで、言葉を巧みに使って緊張感を説くアプローチを進めていきます。

 

なかなか上達しないと悩む方に対しては、水着に着替えてプールに入る行動に移したことを凄いと褒めますし、プールサイドを走る子どもに対しても「走らなくてもいいよ。急がなくても大丈夫だから」と声をかけていきます。息継ぎができない方には、水中で息を吸うことはできないから、止めるか吐くしかないと伝えた上で「止めるのは苦しいから、吐くことが大事」とアドバイス。上手く吐けるようになれば、息継ぎが楽になります。

 

こうして言葉の使い方ひとつで、教えられる立場になる人に安心感を与えることができるのです。

 

 

大学時代までは水泳が苦手だった

 

伊藤さんが通学していた小学校や中学校にはプール施設がありませんでした。高校に進学してから、ようやくプールで水泳授業がありましたが、当時は「水が怖かったわけではないが、泳法を知らなかったのでイマイチな感じでした」と振り返ります。

 

ただ、体育の授業が好きだった為に、高校卒業後は体育系の大学へ進学する決意をします。

 

体育系の大学へ進学はしたものの、水泳の講義は再履修。海浜実習において大遠泳には参加できず、小遠泳には参加したものの顔をあげての平泳ぎができず、レスキューチューブに助けられながら浜に戻ってしまうほど、伊藤さんは大学の時点で泳ぐことが苦手だったと話します。

 

大学卒業を控えた時期に、伊藤さんは大学の就職課から専門学校併設トレーニングジムのインストラクターを紹介されます。この段階でも水泳に関して苦手意識を持っていた伊藤さんですが、トレーニングジムから「今は泳げなくても練習して泳げるようになることで、その過程を生徒さんに伝えられれば大丈夫と。大人になってから覚えるので、その方が生徒さんには伝わりやすい」とアドバイスを受けます。

 

こうして伊藤さんは、水泳の指導者への道を進むことになったのです。

生徒さんの緊張を言葉巧みにほぐすことが重要

 

伊藤さんは改めて「生徒さんの緊張をほぐすことが重要」と話します。

 

初めての方はとても緊張しています。泳ぐことや教室に参加していることへの緊張をほぐすことが大事で、教える側からの一方通行にならないよう、お客様からも気軽に話せるよう配慮しないといけません。出来る側からの目線だと気づかないというか、スルーしてしまう部分が多々あることを常に意識する必要があります。

スポーツクラブに通うことで、伊藤さんは生徒さんの気持ちや心境を理解することで、現在の指導に生かしています。泳ぐことが苦手であれば、無意識に緊張することは当然だと考えられるでしょう。

 

「緊張することは当然」と互いに認識を持ちつつ、それを言葉巧みにほぐしてくれる指導者があなたの側にいてくれれば、たとえ初めてでも安心できるのではないでしょうか。

 

 

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