私のカナヅチ対策エピソード

中高年世代のカナヅチ克服法「体調面に配慮しながら寄り添うことの大切さ」
 ~愛南町御荘B&G海洋センター 山本肖子さん~

泳げないけど、海やプールで泳いでみたい。皆さんも一度はそんな想いを抱いたことがあるでしょう。「私はカナヅチだから」と海やプールを敬遠していませんか。「カナヅチ」は必ず克服できます。今回は愛南町御荘B&G海洋センター(愛媛県)の指導員である山本肖子さんに「私のカナヅチ対策エピソード」を伺いました。

 

船舶免許取得のために「カナヅチ」を克服したい

 

山本さんは船舶免許取得のため、2017年8月にカナヅチを克服したいという当時56歳の女性と出会います。ご主人の転勤で北海道から引っ越してきて全くわからない土地に苦心しながら、その女性は海洋センターの体育館でラケットテニスから始め、プールにも興味が湧いてきました。

 

スイミング入会当初は、顔つけができる程度で浮くことすらできない状態。一日でも早く自分のものにしたい焦りからか体全体に力が入り、足が沈んでいました。そこで、手はビート板の浮力を使い、コーチである山本さんが足を持って補助するようにして、浮き身の姿勢をしっかり覚えてもらうことから始めました。

一人で浮き身の姿勢をとれるようになってからは、キックの練習を始めるのですが、脚が棒のように固くなってしまい、うまく前に進みません。バタ足の練習と鼻から吐いて口から吸うボビング練習を繰り返し、1カ月後にはビート板をつかって25mバタ足キックができるようになりました。

 

バタ足ができれば、次はクロールの形を作っていきます。歩きながら左右交互に大きく手を回し、腕の動きを覚えていただいたところで、5m前後を目指してノーブレクロール(呼吸無しクロール)を開始。その後、呼吸練習と背面浮き練習を繰り返し、リラックスして泳げるようになりました。

 

入会から8カ月ごろになれば、上達のスピードが加速し、本人も成長を実感することで喜びを味わうようになってきました。この頃から練習の量も増えてきて、週1回の教室に加えて自主練習を週3回励むようになりました。

 

2年後にはクロールと背泳ぎ、次いで平泳ぎとバタフライも25m完泳することができました。現在は休館日以外、体育館かプールで体づくりに励みながら、100m個人メドレーと500m遠泳達成を目標に日々研鑽されています。

 

 

コーチとの再会をきっかけに水泳の指導者へ

 

山本さんの水泳との出会いは、小学2年生にお姉さんの影響でスイミングスクールへ通ったことから始まります。小学6年生までの4年間、片道1時間かけて通っていました。泳ぐことは好きでしたが、中学入学を機に退会し、その後水泳とは授業で関わることしかありませんでした。

 

しかし、高校3年生の時に転機が訪れます。スイミングスクールで水泳を教わったコーチと6年ぶりに再会し「コーチの仕事をしてみないか」と打診されました。「大学に進学して体育教師になりたい」という夢があったため、最初は断ったそうですが、数回やり取りをするうちに、コーチに憧れを抱いていたことや当時の懐かしさを思い出し、大学進学を断念してスイミングクラブに就職する決意をします。

 

現在は海洋センターで勤務。入職から19年が経過します。子どもたちから中高年の指導までたくさんの人に水泳の楽しさを伝えています。

 

体調に配慮しながら声掛けを通して寄り添うことの大切さ

 

山本さんに中高年世代に水泳指導をする上での心得を伺いました。

 

「やはり一番は会員さんの体調面です。子どもたち同様に、少し目を離した際に重大な事態とならないよう、常に声掛けをしています」

練習前には「体調はお変わりないですか」と一声をかけ、会員さんから「大丈夫です」と意思確認をしてから授業に入ります。

コーチ1人に対して、会員さんは5名体制。個々のニーズやレベルに合わせ、同じメニューでも会員さんそれぞれでアプローチを変えています。

泳げない方が楽しそうに泳ぐ会員さんの姿を見て「私も泳げるようになりたい」という気持ちになって、水泳教室に入ってきます。

 

最後に山本さんは「楽しく指導しながら、一瞬たりとも気を抜かず会員さんに寄り添うことを心がけながら指導することが大事」と話します。

 

中高年世代は入会から泳ぎをものにするまで時間をかけて、じっくりと寄り添っていくことが重要です。体調面に気を使いながらも楽しむことができれば、日常が充実することは間違いないのではないでしょうか。

 

 

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