私のカナヅチ対策エピソード

寄り添いながら水に対する恐怖心を無くすことが大事
 ~香美町香住B&G海洋センター 北村麻理さん~

泳げないけど、海やプールで泳いでみたい。皆さんも一度はそんな想いを抱いたことがあるでしょう。「私はカナヅチだから」と海やプールを敬遠していませんか。「カナヅチ」は必ず克服できます。今回は香美町香住B&G海洋センターの指導員である北村麻理さんに「私のカナヅチ対策エピソード」を伺いました。

子どもたちに水泳を指導する北村麻理さん

ペットボトルを使って水に慣れていきます。カナヅチ克服の第一歩です

顔を水につけることができれば

 

北村さんは、海洋センター勤務2年目。これまで水泳競技を経験し、水に対する楽しさや怖さを熟知されていました。そして「カナヅチ」に対しては、泳げないのではなく「水に対する恐怖心から来るもの」と話されます。ではどのように「カナヅチ」を克服させているのでしょうか。

 

「毎年感じることは、未就学児のほとんどが顔を水につけるのを怖がります。でも、顔を水につけることができれば、ほっといても自ら泳ぐことになりますね」

 

日々の指導において、北村さんはこのように体感されていました。「初回の教室で20人の4歳児がいたら、怖がらずに顔をつけられるのは2・3人程度」と驚きの数字を示します。どんな子どもたちでも「最初は水が怖いわけですけど、みんな水が大好きなのです」と北村さんは話します。

 

水の怖さを払拭させるために、北村さんは日常生活の身近な例を用いて、ひとりひとりの反応を見ながらアプローチをしていきます。

 

「毎回最初に実施をするのは『今日朝起きて顔を洗った人は?』と子どもたちに呼び掛けます。ほとんどの子どもたちが『はーい!』と叫びますので、次の段階としてプールの水を使い、いつもどうやって顔を洗っているのかをみんなでやってみます。顔を洗うことができれば、すぐに顔をプールの水につけることができますし、顔を洗えなくても、濡れた手で顔を触ることができればよしとしています。どちらにしても、子どもたちには『出来たね!』と大袈裟にアクションを起こすことが大事です」

 

これらの指導方針は長く従事していた指導員から教わったもので、当時は「顔を洗うことができる」を目標としていました。しかし、北村さんのお子さんが水嫌いだったこともあって「顔を洗うこと」だけでは通用しないことに気付き、「濡れた手で顔を触ることができれば」という指導を、北村さんが付け加える形で実践されていました。

これができれば、次の段階で一気にハードルを下げていきます。

 

「次に『あごをつけられる?』と聞けば、子どもたちから『簡単!』と。あごがクリアできれば『口を少しつけてみようか』と問いかけます。もうここまでくれば、子どもたちの水に対する恐怖心は無くなり、彼らのタイミングで顔をつけることが可能になります」

 

最後に「お風呂で練習する宿題」を出せば、子どもたちから進んで宿題に取り組みますので、次回の教室では「宿題やったよ」と逆に声をかけてきます。こうなれば「カナヅチの克服は80%クリア」と北村さんは話します。

 

あとは「深さに慣れること」です。「子どもたちの腰ぐらいまでの深さから始めていきます。仮に水深の深い大きなプールへ移ったとしても、プールにプールフロア(床)を入れておけば、4歳児や5歳児でも大きなプールに入れますし、深さにも慣れることが可能です。これが出来れば、子どもたちから深いところへ潜りたがるので、もう『カナヅチ100%克服』と言っても良いでしょう」とカナヅチ克服までのプロセスを示しました。

 

少しずつ段階を踏めば、必然的に『カナヅチ』から解き放たれて、子どもたちは安心して泳ぐことを楽しむことができるようです。

ビート板を使うことで安心して泳ぐことができますよ

飛び込みが苦手だった子どもの頃に寄り添って指導してくれた女性コーチの存在

現在は水泳を教える立場となった北村さんですが、水との出会いは決してポジティブなものではありません。

北村さんは幼稚園からスイミングスクールへ通うことになりますが、そのきっかけは「喘息を治すため」でした。

「私の喘息を治すために、母親から言われるがまま水泳を習い始めたので、水に対してはネガティブな始まりでした」

北村さんにとって水泳はマイナス思考からのスタートで、特に飛び込みが怖くて苦手だったそうです。

 

「幼稚園か小学校1年生の頃に飛び込みの練習が怖くて、自分の順番が回ってくるたびにトイレで隠れていました。そのうちコーチに連れ戻されるのですが、ある時に別の女性コーチからビート板を使って飛び込む練習を教えてもらい、そのおかげで飛び込みができるようになりました。怖がる私に女性コーチが寄り添った指導をしてくれたおかげです」と当時のエピソードを話します。

 

「コーチが寄り添っていくこと」は、現在指導する立場になった北村さんにとって大事な言葉となっていきます。

みんな楽しく泳いでいますね

子どもたちに安心感を与える指導

 

1.できないことを無理にやらせない

出来なくても大丈夫と言って、今出来ていることを褒めています。

 

2.何気ない会話をして子どもたちと打ち解ける

教室が始まる前に水泳とは関係ない会話を実施しています。

 

3.大袈裟に褒める

「凄いね」という言い方よりも「上手にできているよ」よか「出来たね!」を多く言っています。

 

これらの心掛けには「私たちの指導で怖い思いをさせてはいけない。子どもたちに安心感をあたえること」が根底にありました。子どもの頃に、飛び込みの指導で女性コーチが寄り添って教えてくれたことは、現在の北村さんにとって大きな支えとなっています。

 

「子どもたちから信頼してもらえれば指導もスムーズに進み、みんなが笑顔になります」

 

日常生活で慣れ親しんでいるところからスタートし、徐々にステップアップできれば必ず「カナヅチは克服できる」と北村さんから教えて頂きました。

 

 

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