活動記録 第17回 B&G全国教育長会議

「第17回B&G全国教育長会議」 「ポスト・コロナ期の教育を考える~オンライン時代に良質な実体験を~」をテーマに全国の教育長らが意見交換

日本財団助成事業

オンライン学習から子どもたちの豊かな成長へ繋げるために

2020年11月5日、笹川記念会館(東京都港区)4階大会議室で「第17回B&G全国教育長会議」を開催しました。全国40道府県87自治体の教育長が一堂に会し「ポスト・コロナ期の教育を考える~オンライン時代に良質な実体験を~」をテーマに、新型コロナウィルス感染拡大から発令された緊急事態宣言により前例の無い対応に追われた教育現場において、今後どのように進めるべきかの意見交換を実施。ポスト・コロナ期においても迅速な対応をするための材料を模索しつつ、子どもたちの豊かな成長へ繋げるためにはどうするべきかを考えました。

 

基調講演

千葉大学教育学部教授 藤川 大祐

子どものころから地域貢献に関わることが重要

講演:「ポスト・コロナ期の教育を考える 」

まずは、基調講演として千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏が登壇。問題解決社会に向けた「GIGAスクール」への対応などを説明されました。

藤川氏が校長を務める附属中学校では、教職員が毎日学校のホームページに情報を掲載して、それに基づいて生徒が自ら学ぶ体制とし、オンライン学習では「習うより慣れろ」に重点を置き、情報機器にトラブルが生じるのは当然のこととして、日常的に使うことが大切であると訴えます。

問題解決社会の教育においては「異質な集団で交流する」「自律的に活動する」「相互作用的に道具を用いる」という三つのキー・コンピテンシーに基づいて、実践的な問題解決学習として、小学校の段階から起業家教育の実施を求めます。子どものころから地域の課題に貢献するプログラムが重要であり、地域で学んだことが子どもたちのアイデンティティとなって、キャリア形成につながっていく。キャリア形成を進めるうえで立ちはだかる課題に対しては、ICTやプログラミングが道具として必要であり、そのためには教員や大人が楽しそうに問題解決することだと提言されました。

 


先進事例発表

東京都渋谷区立西原小学校指導教諭 後藤 勝洋

3つのステップを踏んでオンライン学習に対応

事例:GIGAスクール構想の実施で変わる学びの姿
~一人1台タブレットの導入から在宅オンライン学習まで~

続いて、西原小学校でICT教育現場の中心的役割を担った指導教諭の後藤勝洋氏が登壇しました。

渋谷区西原小学校では2017年9月より1人1台タブレットPCの貸与を開始。タブレットPCを導入したことにより作業の効率化を図れたと言います。

小学校の教室には、マグネットスクリーンやタブレット充電保管庫のほか、今年度から教員・児童用にそれぞれWiFiを設置。ヘルプデスクやICT支援員の配置などサポート体制も敷いています。

西原小学校では、子どもたちがオンライン学習に対応できるようにステップを踏んで取り組み、最終的には作文やプレゼンなどを自分で制作できるようにします。教職員についてもデジタル教科書の使用を奨励しました。

 

児童と教職員がつながる在宅オンライン学習では「せんせいからもらう」開いて課題に取り組み、出来上がった作品やノートを午後3時までに「せんせいにわたす」へアップロード(提出)する仕組みとしています。家庭の通信環境によっては接続が不安定になることもあり、児童が授業などに参加できないことが保護者からの声として紹介されました。参加者からは、サポート体制やオンライン学習による学力差、不登校児童や特別支援教育対象児童の対応に関する質問が多く寄せられました。

 


教育長事例発表

大分県中津市教育長 粟田 英代

コロナ禍だからこそ、子どもたちが笑顔で元気になる体験活動をさせたい

事例:コロナ禍だからこそ、最高の体験を
~教育委員会のコロナ対策とB&G事業の推進~

続いて、大分県中津市教育長の粟田英代氏が登壇。中津市は新型コロナウィルス感染拡大に伴い、小中学校の3カ月休校、夏休みの短縮、プールの閉鎖、運動会や修学旅行の縮小などこれまでに前例のない対応に追われました。そうした状況のなかで、教育委員会では「学びの保障」、「段階的な学校再開」、「感染症に対する正しい理解」、「感染防止対策の負担を軽減する環境整備」、「保護者との協力体制構築」、「家計急変世帯への支援」を実施するとともに、コロナ禍での子どもたちの体験活動の実施にも注力しました。

体験活動の中心的な役割を担った耶馬渓B&G海洋センターでは、プール閉鎖など対応に追われることになりましたが、「コロナ禍だからこそ、子どもたちが笑顔で元気になる体験活動をさせたい」という想いから、BG塾体験格差解消事業学生ボランティア養成事業など、自然体験活動を積極的に実施。子どもたちにとっては貴重な体験となり、子どもとの交流を通して大学生と地域との絆が生まれ、地域活性化にも効果があったと話されました。

 


文部科学省発表

文部科学省 今井 裕一

講演:GIGAスクール構想の実現について

続いて、文部科学省から同省情報教育・外国語教育課課長の今井裕一氏が「GIGAスクール構想の実現」について説明。日本は諸外国と比較した生徒の学習到達度において、科学的リテラシーと数学的リテラシーは世界トップレベル、読解力はコンピュータ画面上における長文読解の慣れから高得点のグループに位置するも低下傾向と調査結果を発表。これを踏まえ、新学習指導要綱の情報教育・ICT活用においては「1人1台端末」の環境を整え、「情報活用能力」を言語能力と同様に学習の基盤となる資質・能力と位置づけ、小学校プログラミング教育の必修化から、高等学校のデータベースの基礎学習までを充実させる。

新しいICT環境としてはクラウドの活用も示唆し、「1人1台端末・高速通信環境」を生かした学びの変容イメージを3ステップで示し、教科それぞれの本質に迫り、教科の学びをつなぐことで社会課題等の解決や一人一人の夢実現に向けて生かせる環境を整えると説明しました。

 

会議の最後には、「B&Gプランを推進する提言」を再確認。「課題や悩みの共有と同時にこれからの新しい生活様式の中での学校教育、社会教育の取り組みの見通しが持てた」といった声も寄せられ、全国教育長会議は無事閉会しました。

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