活かしてますか?まちの地域資源(温泉編)第3話
調査結果とエビデンス(科学的根拠)を活かして介護予防と健康づくりに取り組む。
楽しく体を動かす視点で、多世代の健康づくり事業をプロデュース!
温泉施設「御前湯」と運動施設「竹田市直入B&G海洋センター」を一体的に運営することで、2017年7月「温泉利用型健康増進施設(連携型)」として厚生労働省の認定を受けた大分県竹田市。
さらに2019年4月には、御前湯のある長湯温泉に、温泉利用型療養施設「クアハウス」を含む複合施設「クアパークながゆ」をオープンするなど、温泉を活かした健康づくりの場の充実が急ピッチで進んでいます。
これら、竹田市の地域資源(温泉と体育施設)を予防医療・健康づくりに活かすには、住民や利用者への橋渡しとなるソフトプログラムの提供と、何より、プログラムを実践指導する保健師、インストラクター等の人材が重要です。
竹田市の保健健康部門では、市内の国民健康保険加入者を対象とした医療費、特定健診受診率等の調査結果を分析したうえで、「市民が気軽に運動できる環境(人的・施設等)の整備」に着目。「組織活動の推進」や「場の提供」といった人々の横の繋がりの充実や活性化を通じて、市民の健康づくり意識の向上に努めています。
また温泉施設の活用の観点からは、健康運動指導士による各種運動プログラムの策定を進めると同時に、専門機関による「湯中運動」の効果検証を受けるなど、温泉を活用する利点・効果を丁寧に確認しながら、住民の方々に向けた教室等によりフィードバックを行っています。
行政(保健健康部門)の取り組み
(1)健康づくりに関する「組織活動の推進」「集団・仲間で健康づくりに取り組める場の提供・充実」
①課題と必要性
♦竹田市の、市民の自主的なサークル、サロン等の健康づくり組織は18団体39組織あり、加入者数は市民の3,544人
(人口の15.6%)。(2017年2.28時点)
♦市民アンケートの結果
・定期的な運動をしている割合:35.3%と低い
・運動の際、運動内容や運動量の指導を受けていない人の割合:8割以上が受けていないと回答
・運動時に安全に歩ける歩道や施設が近くにあるか:3割が「ない」と回答
竹田市保険健康課調査結果より
特定健診受診率の推移
一人当たり医療費の推移
【結果】
健康づくり組織に加入している人(加入群)・退会した人(退会群)と加入していない人(非加入群)の、一人当たりの医療費の推移を比較した場合、加入群・退会群のほうが非加入群と比較して伸び率が低くなっています。
上記の調査から、健康づくり組織加入者は、健康意識が高く、適切な健康行動により心身の機能維持や重症化予防が図れており、そうした意識や行動は組織退会後も継続されている傾向にある、ということが分かりました。
【出典:第2次竹田市健康づくり計画】
アンケートや調査結果を受けた保険健康課の取り組み方針
・市民が気軽に運動ができる環境を整備する(人的・施設ともに)
・健康づくり組織の普及啓発や、健康づくり教室等の実施・支援を行う
②「温泉と運動(B&G海洋センター)」を連携させた、組織・集団での健康の場の提供
♦湯中&筋力アップ体操教室(2019年度新規事業)
74歳までの前期高齢者を対象とした介護予防事業です。丈夫な足腰を目指し、「クアハウス」での湯中運動と「B&G海洋センター体育館」での筋力トレーニングを6回ずつ組み合わせた12回のコースを提供しています。
【参加者の声】
・若いころからスポーツをしていました。この教室に参加してから気分に張りが出てきたように思います。教室のある水曜日が楽しみです。(70代男性)
・右足が不自由でしたが、リハビリとトレーニングを続けて可動域が広がり、歩けるようになりました。これからも運動を続けていきたいです。(70代女性)
♦その他実施事業
・B&G健幸運動教室(2019年度新規事業)
内容:トレーニングルームでの筋力トレーニング、ストレッチ体操、ウォーキングなど
・健康ウォーキング教室(2019年度新規事業)
内容:ウォーキングコースを使用しての合同ウォーキング等
(2)温泉と運動を連携した取り組みにおける、安全かつ専門的な指導・サービスを提供できる人材(竹田市総合インストラクター)の育成と活用
①課題と必要性
「温泉と運動」を活用した竹田市独自の取り組みが進展するに従い、「温泉利用型健康増進施設」での提供プログラム指導をはじめ、健康づくり・湯中運動などに精通した人材の必要性が増してきました。
そこで、保険健康課が主導し、市の独自資格でありながら、全国に通用するようなインストラクター資格として、研修を開始。現在までに2期32名が4ヵ月に及ぶ講義・実技を受講し、資格を取得しました。
竹田市総合インストラクターは、市の自然や食などの地域資源を生かして健康づくりを推進し、また温泉に関する基礎知識を持ち、温泉入浴指導や水中運動の指導などを行うインストラクターで、市独自の資格です。
②「竹田市総合インストラクター」の活動
♦竹田市直入B&G海洋センター 「トレーニングルーム」管理委託業務
「B&G地域コミュニティの再生に関するモデル事業」の施設改修・備品配備により整備されたトレーニングルームにおいて、常駐のインストラクターとして運動指導を行っています。
トレーニング指導に向けた研修を積極的に実施
第2回竹田市総合インストラクター養成講座閉講式
第1回の20名に続き、12名が受講・修了されました。
(前列中央は竹田市 首藤市長)
担当課(保健健康部門)の感想
大分県 竹田市 保険健康課 保健師の皆さん
私たち保険健康課では、市民の皆さんの健康寿命延伸を目標に、骨折・転倒等を防止する下肢の筋力向上を目指す「筋力アップ教室」の提供などを通じて、運動習慣の定着に取り組んでいます。
また、竹田市の地域資源であり、専門機関や大学との連携で健康づくりのエビデンスが確認された「日本一の炭酸泉」についても、飲泉や湯中運動など「温泉と運動」を連携させたプログラムへの活用を進めています。
以前の市の調査から、健康づくりの継続には、グループやサークル、教室への参加が有効であると明らかになっていますが、B&G財団と連携して実施する「B&G地域コミュニティの再生に関するモデル事業」により、B&G海洋センターが「交流・コミュニティ活動」を合わせた健康づくりの場として機能し始めたのを実感しています。
また、トレーニングルームが整備されたことで「竹田市総合インストラクター」の日常的な活躍の場が確保でき、健康づくりプログラムの提供も軌道に乗ってきました。
引き続き、各健康づくり組織と連携をとりながら、コミュニティ・健康づくりの拠点としてB&G施設を活用していきたいと思います。
次回は、竹田市総合インストラクターの皆さんの活動や感想をご紹介します!
B&G財団は、まちの「B&G海洋センター」と連携した地方創生のアイデアを応援します!
「温泉」と連携したB&G海洋センターの活用は一つの取り組み事例です。
各自治体の、地域資源を活かす新たなアイデアがありましたら、ぜひB&G財団にご相談ください!
- 【お問合せ】
- B&G財団事業部事業課 TEL:03-6402-5313