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No.031:吉川 貴史・山田 翔太52年ぶりのオリンピック出場が決まった男子ホッケー!滋賀県米原市出身の幼馴染コンビがチームをけん引する!
2019.12.19 UP

吉川 貴史・山田 翔太 52年ぶりのオリンピック出場が決まった男子ホッケー!滋賀県米原市出身の幼馴染コンビがチームをけん引する!

プロフィール 吉川 貴史(よしかわ たかし)写真右

1994年11月29日生まれ。
滋賀県米原市出身。
米原市伊吹海洋センターゆかりのアスリート
成績等 2020東京五輪 男子ホッケー日本代表
2018年 アジア競技大会 優勝
2015年~2018年 全日本選手権大会 優勝 2018年大会最優秀選手受賞
プロフィール 山田 翔太(やまだ しょうた)写真左

1994年12月21日生まれ。
滋賀県米原市出身。
米原市伊吹海洋センターゆかりのアスリート
成績等 2020東京五輪 男子ホッケー日本代表
2018年 アジア競技大会 優勝
高円宮牌2017男子ホッケー日本リーグ 優勝 ベストイレブン
全日本男子ホッケー選手権大会 優勝

ホッケーとは

60ヤード(55m)×100ヤード(91.4m)のサッカー場よりひとまわ小さいフィールドで、1チーム16人の選手が試合中自由に交代し、フィールド内11人の選手が木製のスティックでプラスチック製のボールを操り、相手チームのゴールを狙います。シュート時のボールスピードは時速150㎞~200㎞に及び、15分×4クオーターの試合時間でスピーディーな攻防で得点を競います。
(参考:公益社団法人 日本ホッケー協会) 

前編:やんちゃな幼馴染コンビが日本のゴールを死守する

1968年のメキシコオリンピック以来、実に52年ぶりのオリンピック出場が決まり、注目が集まる男子ホッケー日本代表。「開催国枠」での出場が決定していたものの、昨年のアジア大会の決勝戦では試合終了間際、土壇場での逆転劇を演じ優勝。実力でもオリンピック出場可能であることを見せつけた。そんなチームをけん引するのが滋賀県米原市出身の幼馴染コンビだ。吉川貴史選手(25)ポジションはゴールキーパー。身長を活かしたダイナミックな動きで好セーブを連発する若き守護神。山田翔太選手(24)ポジションはディフェンダー。ディフェンスの要でありフリッカーとしてチームの得点にも大きく貢献している。

2018年アジア大会で優勝したホッケー男子日本代表

「幼馴染オブ幼馴染」という言葉があるならば、最も当てはまるのはこの二人だろう。同じ幼稚園に通い、小中高大と同じ学校、同じホッケーチームでプレー。そして現在所属している岐阜朝日クラブでも一緒にプレーしている。そんな二人にインタビューを行った。

-ホッケーの魅力は何でしょうか -

吉川選手:
スピーディーな試合展開です。また、ホッケー独特のペナルティーコーナーっていうサッカーで例えるとフリーキックのようなプレーがあるんですけど、得点のチャンスなのでそこは注目して見てほしいですね!守備側は少ない人数でどう守るか、攻撃側はどうアタックをするのかという駆け引きが見どころです!

山田選手:
ホッケーは、ほんの数秒で得点が決まってしまうスポーツです。昨年のアジア大会の決勝では大差で負けていたんですけど、試合終了まであと十何秒ってところで追いついて、最後はシュートアウトというサッカーのPKのようなものがあるんですけど、それで逆転勝ちしたんです。試合が終わるまで何が起こるかわからないので、最後まで目が離せません。

2人がホッケーを始めたきっかけは、周囲の影響が大きい。吉川選手は姉二人が、山田選手はいとこ三人がホッケーを行っており両選手とも自然とホッケーを始めた。というのも米原市は「ホッケーのまち」だからだ。同市は昭和56年の「びわこ国体」でホッケーの開催地となり、それ以来全国大会など数多くの試合が行われており、ホッケーは米原市を代表するスポーツだ。現在では強豪国であるニュージーランドのオリンピックホストタウンとなっており、ホッケーを核とした交流事業など様々な取り組みを行っている。特に伊吹地区は、ホッケーが盛んで多くの日本代表選手を輩出している。

そんな「ホッケーのまち」で生まれ育った二人に幼少期の頃の話を伺った。

-幼い頃はどんな少年でしたか -

吉川選手:
僕は本当にやんちゃ坊主でした。先生に反抗とかもいっぱいしましたし(笑)

山田選手:
はい。彼は本当にダメなやつでした(笑)

吉川選手:
あとは近所に川があったので川遊びとか、ホッケー場で遊んだり。でもホッケーばっかりでしたね。

幼い頃の吉川選手:後列一番左 山田選手:後列一番右

-なるほど。山田さんはどんな少年時代を過ごしていましたか。 -

山田選手:
僕も貴史ほどではないですけど本当にやんちゃでした。みんなで集まって川遊びをしたり山に行ったり、東京ではできないような遊びをしていました。

-まさにB&Gが推進する自然体験活動!!では海洋センターでの思い出はありますか -

吉川選手:
中学生の時に体育の授業で使っていましたし、小学校の時もよく遊びに行っていました。

山田選手:
ホッケーのグラウンドのすぐ近くに海洋センターがあったので、練習終わりにみんなでプールによく行っていましたね。

小学校時代、彼らにとってB&G海洋センターは恰好の遊び場となっていたようだ。また、現在米原市伊吹B&G海洋センターの所長である岩山氏にもホッケーを教わっていたそうで、一つ一つわかりやすく丁寧で優しい指導が印象的であったそうだ。

-東京オリンピックを契機にホッケーを核とした街づくりに取り組む米原市についてお話しください。 -

吉川選手:
国際交流や日本代表選手の招聘事業もあり、私たちが地元に招かれニュージーランドと試合しました。地元の人たちに自分たちが頑張っている姿を見てもらえるのはありがたいですね。またニュージーランドのホストタウンになっていて、そういう強豪国の選手らが米原市に来てくれることによってホッケーが有名になりますし、ジュニア世代が成長するすごく良い取り組みだと思います。

山田選手:
自分たちがニュージーランドと戦った時、たくさんの方が応援に来てくださいました。まだホッケーをしてない子供たちも見に来てくれて、その子供たちがホッケーをやってくれたら、どんどんホッケーが盛んになっていくので、ありがたく感じています。

米原市で行われたニュージーランドテストマッチに招聘された吉川選手、山田選手

アジア大会で悲願の初優勝!日本の強みと課題

2018年9月1日、インドネシアのジャカルタで行われたアジア大会決勝戦では3点差をひっくり返し逆転優勝を収めたホッケー男子日本代表。この大会は東京オリンピックの予選も兼ねており、優勝国は東京オリンピックの出場権を手にする。日本はすでに開催国枠でオリンピックの出場が内定していたが、選手たちに気のゆるみは一切なかった。優勝してやるという気持ちで臨んだ結果が「ジャカルタの奇跡」へとつながった。

現在の日本代表チームの課題はディフェンスであると二人は口をそろえた。キーパーも含めたディフェンスの細かいコミュニケーションを意識しながら練習に取り組んでいる。ホッケーは一瞬で失点してしまうスピーディーなスポーツであるため、小さなミスが命取りとなる。長年一緒にプレーしている二人でも、コミュニケーションが足りないと感じる場面があるという。世界と戦うにはそれほど緻密で正確なディフェンスが求められるのだ。逆に日本の強みはカウンターから得点を量産することだ。今後さらに磨きをかけ大きな武器にしたいと語った。

オリンピックまで1年を切った今、練習は過酷さを増していく。月に2週間は合宿を行い朝から夕方までみっちり練習。夕食後のミーティングも欠かさない。監督からの指示を聞くだけでなく、選手間で意見を出し合い、不足気味とされている試合中の意思疎通をクリアにして次のプレーに活かしていく。

 

-代表でのご自身の役割は -

吉川選手:
もちろんゴールを守ることも役割の一つなんですけど、ディフェンスをまとめることが大事だと思っています。一番後ろにいるので選手全体を見渡して的確な指示を出せるようにしています。

キーパーとして広い視野が求められる

山田選手:
ディフェンス同士の声掛け、守備を第一に考えつつ、前線に上がって攻撃に加わります。そういう面ではアタックも大事かな。自分で攻めて、ロングパスを通してアシストしたりミッドフィルダーと連携を取ってチャンスを作ったり、攻撃の起点となることも多いです。また、フリッカーとして得点に貢献することも大切な役割だと考えています。

守備、攻撃両方をこなす山田選手

代表合宿が終われば自分たちが所属する朝日クラブで週六日練習に励んでいる。代表の練習と所属チームの練習の違いについて伺った。

 

吉川選手:
朝日クラブでは5名の代表選手、女子も2名の代表選手がいて、コーチを含め11人で質の高い練習を行っています。所属チームでは個人のスキルアップがメインです。今私は自分のスキルを上げたいという思いがあるので、朝日でやっている時の練習は楽しいですね。

山田選手:
代表ではディフェンス同士のコミュニケーションなどチームスキルを上げる練習が多いので、個人のスキルアップという点では朝日クラブの練習で磨かれています。

 

オリンピックが間近に迫り、代表選手選考の真っただ中にある二人はそれぞれ、自身の役割を把握し、代表チームの戦力アップ、個人のスキルアップのために何をするべきか理解し、それを実行していた。

後編:信頼し合える二人だからこそ辿り着ける高みへ!

幼稚園から一緒だった二人に聞かずにはいられないこの質問...

-お二人にとって、お互いはどういう存在ですか -

吉川選手:
それはよう言われるやつです。

山田選手:
これは言われる、よく言われる。よく言われるよ!

-よく言われますか。本人の前で言いづらいですかね。 -

吉川選手:
そうなんですよ!まぁでもずっと一緒にやってきて、僕がキーパーで後ろから指示したことをすぐ理解して、どうディフェンスするかをわかってくれるのですごくやりやすいです。助けてくれることも多いですし、ずっと一緒にやっているからこそできるところなのかなって思います。敵にはしたくないって思いますね。お互いの信頼がなかったら多分ここまでできていなかったと思います。多分もっとケンカもしてますね。

仲良さげな二人

山田選手:
キーパーとして後ろにいてくれているので本当に頼りにしています。お互いがどう守ったらいいかすぐにわかるので、本当にやりやすい。でも自分のフリック練習でキーパーに貴史が入って勝負する時は本当に嫌ですね。お互い知り尽くしているので。その時はやりにくいですね!これだけ一緒にやっていると敵に回したくないですね。

吉川選手:
「ヤマショー」って呼んでるんですけど、試合中に「ヤマショー!!」って言ったらやりたいことをやってくれる。手を上げて、自分が思っていることをやってくれるときがあるんですよ。阿吽ですね。

山田選手:
名前呼ばれて、多分こっちに行ったほうがいいなっていうときは、手を上げてその通り動いたら当てはまるみたいなときはありますね。

吉川選手:
小さい時からずっとですからね。マンガみたいや。特に大学4年間が大きかった。大学で一緒にやってきたことが社会人になって活かされていますね。

-お互いが思う選手として素晴らしいところは -

吉川選手:
彼のペナルティーコーナーのフリックはすごいです。国際試合でも決めているし、日本一のフリッカーだと思っています。あとは、なんていうか野性的なディフェンスするんですよ。

山田選手:
それみんなに言われるんです。なんか反射スピードがちょっとだけばかげてるって。

吉川選手:
他の人にはない野性的な読みがすごいなと思います。アタックの時にチャンスを作るのはヤマショーが起点となるとこもあるので、チームにとってすごく重要な選手だと思います。

-べた褒めですね。 -

山田選手:
カットで(笑)
貴史の声は他の代表キーパーに比べて断然大きいんです。声質が通りやすいっていうのもあるんでしょうけど。自分だけじゃなく他の選手も信頼して動いていますし、あとセービング能力は貴史が一番だと思います。アグレッシブなセービングをするので周りも奮起しますね!

吉川選手:
どうも(笑)

-逆にこれだけは直してほしいという点はありますか -

吉川選手:
うーん、何やろ、強いて言うなら最近フリックが入らないので。決めてくれ。

山田選手:
そうなんですよ(笑)
直してくれっていうか、僕らは見てて面白いんですけど。ミーティングの時に口げんかのスイッチが入るときがあって。監督と言い合うんですよ。それ入ったら僕らも止められなくて。

吉川選手:
これはやめれんっす。昔のやんちゃが出るときがあるんです。

山田選手:
いや、やめろ。

 

二人の掛け合いが小気味よく、コートの外でも仲の良さが伺えた。またプライベートについても話を伺った。

吉川選手は現在絶賛恋人募集中とのことで、ラインのIDまで公開してくれそうな勢いであった。(それは後々面倒そうなのでお断りした。)

オフの日は部屋の掃除をしたり最近は料理にはまっているそうで、その腕前は山田選手も認めている。また趣味はドライブということで、ここまでかなり女子ウケを狙った回答が並ぶ。その他映画を見たり、家電を見に行ったりと若者らしい?趣味の持ち主である。

山田選手は結婚していて奥様もホッケーをしており、大学で女子ホッケーのコーチをしている。夫婦で指導を行うなどまさにオッケー三昧である。ちなみに結婚記念日にもホッケーをしていたそうだ。その他奥様の影響でディズニーランドへはよく足を運ぶとのこと。

「黒い瞳のスパイダーマン」&「リアルターミネーター」が語る今後とは

ホッケー専門メディア『マイホッケー』に記載されている二人のキャッチフレーズを見てみると、吉川選手は「黒い瞳のスパイダーマン」、山田選手は「リアルターミネーター」とある。この由来について尋ねてみた。

吉川選手:
代表に入って2年目の時にマレーシアでアズランシャーカップっていう大会があったんです。その時に飛び回って止めたりとか、ダイナミックなセービングをしていたら、現地のテレビ局の人が「ジャパニーズ・スパイダーマンだ」って言い出して(笑)その試合の最優秀選手に選ばれて「ジャパニーズ・スパイダーマン」ってマレーシアでは一時期有名人になったんです。一瞬で終わりましたけど(笑)今『マイホッケー』の記事を書いている人が当時の日本代表にいて、そのエピソードを元にこのキャッチフレーズを付けられました。

山田選手:
俺、リアルターミネーター?

ダイナミックなプレーで好セーブを連発

吉川選手:
これ僕が説明しましょうか。ターミネーターってめちゃくちゃ強いじゃないですか。ボール食らっても効かないんですよ。鉄っす。

山田選手:
アジア大会の決勝でも頭にボールが当たったんですよ。その時はさすがに脳振とう起こしてコートから出たんですけど、2、3分で戻って来て。頑丈なんです。それで多分その名が付いたんじゃないかなと思います。

強力なフィジカル!放たれるフリックは日本随一

-今後の目標は -

吉川選手:
オリンピックで金メダルを目指すことは当たり前ですが、まずオリンピックに出られるようメンバー争いに残ること。たくさんの方々の助けがあってここまで来ることができました。応援してくださっている方、サポートしてくださっている方々に恩返しできるように普段の練習から意識して、何としても出場メンバーに選ばれてオリンピックで優勝したいです。

山田選手:
オリンピックで金メダル取ることが目標ですが、貴史が言ったように出場メンバーはまだ確定していません。フリックを磨いてゴールの確率を上げ、代表に残れるようにアピールしたいですね。これまで支えてくれた家族のためにも、オリンピックに出場してメダルを持って帰りたいです。

オリンピックでもこんなシーンを見たい!!写真はアジア大会

-将来の夢は -

吉川選手:
小さい頃からオリンピックに出ることが夢でした。それが現実になりつつあります。それが叶ったらさらに先を見てホッケーの普及、ホッケーをどんどん広めたい。サッカーのように日本人が当たり前のように知っているスポーツにするのが夢です。次のパリオリンピックも目指しているので、そこでも結果を残して、ホッケーの認知度を上げたいですし、指導者として日本を強くしていきたいなと思います。これ、メディア初出しや。

山田選手:
代表の選手として目指せるとこまで上を目指していきたいですね。それが終わってからは子供たちに教えることが好きなので、指導者としてホッケー界に携わっていきたいです。

-ゆくゆくは指導者を目指すお二人から、ホッケーを行っている子どもたちにメッセージをお願いします。 -

吉川選手:
しっかり夢を持って諦めずにやることが大事。叶わなくてもやることに意味があるし、一つのことに対して一生懸命やるっていうことはすごく大事なことだと思います。あと僕が好きな言葉で「keep tryin'」」っていうのがあって。「挑戦し続けろ」って意味なんですけど、挑戦して学ぶこともあるので、子どもたちには失敗を恐れずどんどん挑戦してほしいなと思います。

山田選手:
子供たちには諦めずにやってほしいって思いますね。私が小学校、中学校の頃上手くはなかったんです。実力が伸び始めたのは高校の後半ぐらいからでした。それでも諦めなかったことが今に繋がっているのかなと思います。だから諦めずにやり続ける、挑戦し続けたら成長します。あとは後悔がないようまじめに練習に取り組んでほしいですね。今になってあの時もっとまじめにやっていればと思うこともあるので。

2020年7月25日から開催される東京オリンピックのホッケー競技。熾烈な代表メンバー争いを勝ち抜き、二人が東京の大舞台で躍動する姿を期待せずにはいられない。

 

 

(文:中村 克也

米原市伊吹B&G海洋センター

吉川 貴史選手、山田 翔太選手ゆかりの
米原市伊吹B&G海洋センター(滋賀県 米原市)