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No.029:梶 鉄輝兵庫県猪名川町B&G海洋センターで練習を重ねたパラトライアスロン選手が東京2020大会出場を目指す!
2019.07.30 UP

梶 鉄輝 兵庫県猪名川町B&G海洋センターで練習を重ねたパラトライアスロン選手が東京2020大会出場を目指す!

プロフィール 梶 鉄輝(かじ てつき)

1999年12月17日生まれ。
パラトライアスロン、パラサイクリング(ロードレース)、シクロクロス、3種目のレースに参戦、現在も練習で猪名川町B&G海洋センターを使用している。
中学1年生の時ロードバイクで練習中、対向車線をはみ出してきた大型トラックと衝突。
右腕に大きな障害を負う。
所属 SONIC-RACING(マウンテンバイク 小5より)
チームブレイブ(トライアスロン 小6より)
日本写真判定
成績等 男子パラトライアスロン強化指定選手
世界トライアスロンシリーズ横浜大会 エイジ パラトライアスロンの部 優勝
中国シクロクロス第5戦 葡萄浪漫館 優勝

パラトライアスロン

スイム(水泳)、バイク(自転車)、ラン(長距離走)の3種目を連続で行い、順位を競う。障がいの種類や程度によってクラス分けを行い、同程度の競技能力を持った選手同士の中で順位を決める。

 

パラサイクリング

パラサイクリングはUCI(国際自転車連合)の規定する競技規則のもと行われる障害者の自転車競技であり、選手は障害の種類と使用する自転車により4つのクラスに分けられ、さらに障害の度合いにより分類される。参加選手の障害の種類は大まかに四肢障害(切断、機能障害)、脳性麻痺、視覚障害、下半身不随がある。

 

シクロクロス

オフロードで行う自転車競技の一つ。障害物が設置された短いコースを、決められた時間内に何周できるかを競う障害物レース。ところどころ選手が降車して自転車を担がなければならない箇所がある。

前編:人によって障害は様々。だから練習方法も無限。それがパラトライアスロンの面白いところ

- 自転車競技を始めたきっかけは何ですか。 -

父がオートバイが好きで。父の勧めで小学生の時にオートバイの教室に何回か通ったんですけど、アクセル回すのが怖くて(笑)ちょっと向いてないなって思ったんです。

それで自分が自由に操作できる自転車だったら向いているって感じたので乗り始めたんです。小学2年生の冬に自転車レースに出場したんですけど、その時初出場、初優勝してしまって!それから自転車にどっぷりハマりました。

- 自転車競技の魅力はなんでしょうか。 -

短距離もあれば長距離もあるし、種目がいろいろあってそれぞれ魅力はあるんですけど、ロードレースでは選手の駆け引きですね!時速40キロ~50キロで走るので、空気抵抗の影響をすごく受けるんです。だから前の選手のすぐ後ろを走ると風よけになってすごく楽なんですよ。どのタイミングで自分が先頭に立つのか、勝負を仕掛けるのかなど選手によって得意なレース展開がそれぞれ違ってその駆け引きが面白いと思います。

シクロクロスという競技では、コース中に階段があったり、砂浜のコースとかもあって。砂浜は自転車に乗れる範囲だったら乗っていたほうが速いので、どこから乗ってどこから自転車を担いで進むとか結構奥が深くて面白いですね。

数々の国際大会に出場している梶選手

- 中学1年生の時に交通事故により右腕に障害を負われてからも健常者の自転車競技大会に出場されていたんですね。 -

そうですね。パラの大会と出会うことがなくて。自転車競技は4種目か5種目ぐらいやってます。高校3年生の時にシクロクロスっていう競技でベルギーに2カ月留学もしました。

  • 入院中の一幕

  • 事故後懸命なリハビリの甲斐あって奇跡的に回復
    事故の翌年には早くもレースに復帰する

- パラトライアスロンを始めたきっかけは何ですか。 -

トライアスロンは小学生の時から年に1回お楽しみみたいな感じで、大会に出場していました。3歳から水泳もやっていましたし、自転車もやっているので、ついでにランニングもって感じで(笑)実はパラトライアスロンという競技を何で知ったかは覚えてないんです(笑)何かで知るきっかけがあって高校3年生の時にレースに出場してみました。その時に日本の強化指定選手といい勝負ができまして。自転車のスピードが評価され強化指定の育成選手に選ばれました。そこから合宿やいろいろなレースに呼んでもらって、ワールドカップにも出場し東京パラリンピックを目指せる位置まで来ました。

- パラトライアスロンの魅力は何ですか。 -

選手によって障害の種類や度合いが違うのでどうやって泳いでるんだ!?どうやって自転車乗ってるんだ!?みたいな選手がたくさんいるんでびっくりすると思いますよ!

また、自転車だったら片足切断の選手で義足を使う選手もいれば使わない選手もいます。僕は右手のまひなんですけど、自転車はほとんど健常者と同じように乗れます。でも水泳は腕が回らないので、片手だけで泳ぐんです。片手で泳いでる選手もいれば、手は一切動かさずにバタ足だけという選手、両手がない選手もいます。選手それぞれが異なる障害を持っていて自分に合ったスキルを磨いている。自分なりに工夫したことが競技に活かせるということがパラトライアスロン、パラの選手の特徴だと思います。そいうところが魅力ですね!

- パラトライアスロン競技におけるご自身の強みはなんでしょうか。 -

水泳とバイクですね!もともと自転車競技をやっていたので自転車得意なんですけど、海外の選手とレースすると割とそういうことでもなくて。そこで水泳を強化したら実力が伸びたので、水泳とバイクでどこまで順位を上げて、ランで順位を落とさずに終えるかというレース展開が自分の持ち味だと思っています。

左手を大きく動かし力強く泳ぐ梶選手

- 課題はなんでしょうか。 -

課題はランニングですね。レベルアップが必要かなって感じています。ランニングは山形大学の方に強化指定選手としていろいろ教えてもらえる機会があるので、よい参考にしながら練習しています。

- 練習日の大まかな1日のスケジュールを教えてください。 -

朝6時半からB&G猪名川海洋センターで泳いで、昼前ぐらいから2~3時間バイク練習をして、最後に軽くジョギングするという流れが多いです。追い込む日は1日4~5時間練習するんですけど、パラトライアスロンのレースが1時間ぐらいで終わる短距離のレースなので、そんなに長時間練習する必要はないんです。1日2種目練習することが多くて水泳と自転車をやったり、自転車とランニングをやったりとか。1日3種目やると全部が中途半端になってしまうんです。

- 一番苦労する練習は何ですか。 -

ランニングですね。もともと自転車をやっているのでバネがないんですよ。地上で競技をしてないので足のバネが少なくて。ずっとペダルをこいでいるだけだったので、地面を蹴るっていう動作がものすごく負担なんです。だからランニングが苦手というか。最近は苦手意識をなくすようにしています。

- 海洋センターでの思い出はありますか。 -

朝スイムっていうイメージですね!海洋センターで泳いでから学校に行くっていうのを中学校3年間ずっとやってきました。私が所属しているトライアスロンチームのチームブレイブは猪名川海洋センターを拠点として活動しているので、現在でも練習で海洋センターのプールは利用しています。

- 猪名川海洋センターの指導者である松永さんとはどういったご関係ですか。 -

普段はチームの監督に練習を見ていただいているんですけど、監督が休みの時などに水泳を指導していただいてます。パラの場合は健常者にとっては当たり前の練習方法や理論が当たり前じゃないんですよ。またパラの速い選手を真似ればいいというわけでもない。体のバランスが左右で不均等であったり、選手によって複雑な要素がたくさんあります。だから松永さんや、いろんな方からアドバイスをもらって自分の中で整理して、どうしたら速くなれるか工夫しながら練習しています。そういうところがこの競技の面白いとこだと思うので。

松永コーチからのアドバイスを積極的に取り入れ練習している

- 今までで一番印象に残ってる大会はありますか。 -

2018年のアジア選手権です!いつもいい勝負になるライバルがいるんですけど、去年は本当に接戦だったんです。1時間のレースでいろんな駆け引きがあって0コンマ何秒という差で勝って優勝することができました。

普段は水泳とバイクで引き離してランで逃げ切れるかっていうレースが多かったんですけど、去年は水泳で僕が遅れるという初めての展開でした。しかもバイクはいつもよりリードできない状態で。相手はランニングが得意で、僕は苦手(笑)。バテるのを覚悟で僕が先に仕掛けたんですよ。ロングスパートをかけて、相手のペース狂わせて僕のテンポで行かないと負けるって分かったんで。何メートルかリードできたんですけど、すぐにまた追いつかれて。最後はスプリント勝負で並ぶようにゴールしてぎりぎりの戦いで楽しかったです。

※後編に続きます

(文:中村 克也

後編:ライバルは皆強敵!だからこそやりがいがある。

猪名川町B&G海洋センター

海洋センター(屋内温泉プール)は、猪名川町の玄関とも言われる施設能勢電鉄日生線の始発駅日生中央駅の向かい側にあり、徒歩2分という近さです。車での来場は、国道173号線山下より県道川西三田線を3分程度の所にあります。
屋内温水プールということもあり、年間を通じて訪れる人が多く見られます。