スペシャル 夢をつなげ!B&Gアスリート

No.017:小梶 孝行選手(平成29年度日本カヌースプリント選手権大会 カナディアンペア1000m・500m 優勝)東京オリンピックを目指し、世界の舞台で活躍するカナディアンカヌー選手
2018.03.13 UP

プロフィール

小梶 孝行(こかじ たかゆき)
1986年11月生まれ。滋賀県東近江市(旧:八日市市)出身のカヌースプリント選手。
東近江市立聖徳中学校から滋賀県立八日市南高等学校に進学。中学時代は水泳を行っていたが、高校ではカヌー部に入部した。
高校卒業後、立命館大学カヌー部に在籍。
現在は地元企業の「たねや」に籍を置き、近江八幡市安土B&G海洋センターで活動。2020年東京オリンピック出場を目指し、厳しいトレーニングや多忙な海外遠征など、日々練習に励んでいる。
今年度の日本カヌースプリント選手権大会でカナディアンペア1000m、500m ともに優勝を飾る。
2017年度カヌースプリント日本代表選手。

カナディアンカヌーとカヤックの違い ・カナディアンカヌー
片方のひざを立てた姿勢で漕ぐ種目。片側だけに水かきが付いたパドルで、ひざを立てた側のサイドを漕ぐ。

・カヤック
座った状態で漕ぐ種目。水かきが両端に付いたパドルでカヌーの両側を交互に漕ぐ。

後編:カヌーはやればやるほど道が開ける!東京オリンピックの抱負とカヌーの魅力

カヌー競技と仕事を両立し、日本代表の合宿や大会、海外遠征などをこなし、地元にいるときは近江八幡B&G海洋センターで日々過酷な練習に励んでいる小梶選手。今回は2020年東京オリンピックを目指す意気込みや、カヌーの楽しさと魅力、そして今ある課題と東京オリンピック以降の目標について伺いました。

- 東京オリンピックでは何を目指していますか。 -

海洋センターで使用している小梶選手のカヌー

海洋センターで使用している小梶選手のカヌー

 オリンピック種目の1000mシングル・ペア両方で東京オリンピック出場を目指しています。

 リオオリンピックまでは1000mのシングル・ペアと、200mのシングルがありましたが、東京オリンピックから女子のカナディアンも競技に入る関係で、男子カナディアンは1000mの距離でのシングルとペアに絞られました。

 何人東京オリンピックに出場できるかはまだ分かりませんが、今年の8月末にアジア競技大会があるので、オリンピックを見据えて出場を目指しています。

- 日本代表はどのように決まるのですか。 -

 2020年東京オリンピックの選考についての詳細は、直前になるまで分かりません。今現在は、2018年度の日本代表選手の選考の最中で、この選考は、1次から4次選考会まであります。

 1次選考会が去年の9月の石川県で行われた全日本選手権大会で、東京オリンピックの競技種目である、1,000mのレースでポイントが決まります。

トレーニングに励む小梶選手

トレーニングに励む小梶選手

 12月の下旬と1月下旬には、体力測定のような2次選考会と3次選考会がありました。ベンチプレス、ベンチプル、懸垂、エルゴマシーンの回数やワット数。また水泳のタイム、ランニングのタイムでランキングを決めます。

 そして4次選考会が、今回は3月の末に香川県であるカヌーのレースで、1次選考会のようにポイントを出して、総合ランキングを出します。その中から上位何名かが日本代表候補選手に選ばれます。その後の4月、5月に合宿をして、そこで基準タイムを切ることができた選手が2018年度の日本代表選手に決まります。

- 東京オリンピックへの意気込みをお聞かせください。 -

 やはり東京オリンピックは、自国開催でもありますし、本当にいろんな意味で特別な大会だと思っています。僕がスポーツするうえで今まで持ち続けた夢でもありますし、いつも応援してくださっている周りの方々にも恩返しできるチャンスだと思っているので、出場することが使命だと考えています。

- 東京オリンピック後の展望をお教えください。 -

 とりあえず今は東京オリンピックだけを考えるようにしています。しかし長期的な目で見てみると、東京オリンピックの次の年にはワールドマスターズゲームという大きな大会が関西で開催されますので、その大会にも出場したいです。また、2024年の滋賀国体は、地元の東近江市がカヌー競技会場なので、それにも選手として活躍したいですね。

 僕自身カヌーが大好きなので、その後もなんらかの形で携わっていきたいなと思います。もちろん選手として活動できることが一番ですが、次の世代を育てるのも一つの選択肢ですし、地域貢献でカヌーの魅力を知ってもらえるような活動をすることもありかなと思います。

- 日本代表の監督やコーチをしたいとか、そういう思いはありますか。 -

 ありません。僕はどちらかと言うと、一流のアスリートを受け持つというより、初心者を始め色々な人と触れ合って、カヌーの楽しさを伝えていけることが一番合っていると思います。カヌーはハードなスポーツだから、「もうやりたくない、やめたい」と思われるよりも、「楽しいからもう一回やりたい」と思ってもらえるような、子供たちがカヌーを始めるきっかけを提供したいです。

 しかしもし、そこからカヌーのスプリント競技に興味を持ち、強くなって勝ちたいという子が現れれば、それはそれで手助けもしたいと思っています。

- カヌーの楽しさ、魅力を教えてください。 -

2018年初日の出を西の湖でみる(右から3番目)

2018年初日の出を西の湖でみる(右から3番目)

 カヌーの魅力は、自分の力で漕いで水の上を進むことです。頑張らなかったら、もちろん動かないですし、頑張って自分の力で漕げば漕ぐほどスピードが出る乗り物なので、とても楽しいスポーツだと思います。

 また、身近に水に触れ合う機会は日常では、なかなかないと思います。陸の上から水を見ることはありますが、水の上から陸を見ることはあまりありません。そういう普段見ることができないところを見ることで、自分の世界も変わることもカヌーの魅力です。

 僕はカヌーがきっかけで、全国のいろいろな人に出会い、様々な経験や情報を得ることができました。それによって、僕は常に向上心を持ち、自分自身で道を切り開こうという思いが強くなっています。「強くなりたい、こうなりたい」と自分の中で思い行動に移せば、それは次につながっていくと思うし、やればやるほど道は開けていきます。やらなかったら何も変わりませんし、やろうと思えばその頑張りに応じて手助けしてくれる、応援してくれる人も出てきてくれると思います。

 サポートを受けながら、人は成長していき、また、自分の頑張りが周りに良い影響を及ぼしていきます。カヌーは人として、心身ともに成長できるスポーツだと思います。

- 競技で感じている課題はありますか。 -

 技術面でまだまだ自分の中では足りないと思っています。毎回練習をするたびに、色々な人に話を聞いたり、アドバイスをいただいたりすると、自分がまだまだやらなければいけないことが分かってきます。どんどんレベルが上がるにつれて、その次のレベルに向かうために何をしなければいけないかが、次々に出てきます。

 技術を習得することはなかなか難しいですが、今はやりたいこと、やらなければいけないことが明確にあり、今よりもレベルアップできる可能性があるので、とてもありがたいことだと思います。

試合の様子

試合の様子

 しかし、技術は1日、1週間ではレベルアップできるものではありません。頭ではわかっていても、体で実際それを再現することが難しいです。まず陸でやってみますが、次に水の上でカヌーのスピードにつなげられる動きができるかといえば、すぐにはできません。

 自分のイメージと水との感覚がばらばらになってしまったりするので、完璧にするのは本当に難しいですね。

- 毎日過酷な練習や試合を続けていくうえで、支えになっているものは何ですか。 -

 昨年結婚し、妻もできまして、自分の家族と妻の家族がとても応援してくれているので、本当に支えになっています。その他、会社の人をはじめ、いろんな人の集まりに行くと、カヌーの話をたくさん聞いてくださるので、「応援しているよ」と言ってくれることが僕の支えになり、「頑張ろう」という原動力になってきます。

 しかしその分責任感を持って、より頑張らなければいけないとも思いますね。

- とても大きな体ですが、栄養管理はしっかりしていますか。 -

 もちろん体作りで栄養面はとても大事だと思いますが、考えすぎると大変になってくるので、食事はできる範囲で偏り過ぎないように、野菜も肉も魚もご飯も満遍なく食べています。例えばもし1品足りないなと思ったら卵や納豆を足したり、野菜が少ないなと思ったら、適当にレタスなど簡単なものを食べます。

 お昼にラーメンを食べに行ったときでも、炭水化物が多めなので卵などをちょっとプラスをするなどして、足りないものを補うようにしています。

  • 鍛え抜かれた体

  • 海外遠征中での食事

- 趣味は何ですか。 -

 空いた時間があれば、Youtubeなどでカヌーの動画を見たりしているので、それが趣味ですかね。カヌーの動画は義務的に見なければいけないというよりも、自分が今日練習したことが、実際他の選手と比べてどうなのかを確認します。生活の一部ではないですが、常に空き時間があったら、そうやって自然に見ています。

 また、駅とかでゴルフのスイングしているおじさんのように、勝手に体が動いて、気付いたらガラス越しでカヌーのパドリングをしてしまいます(笑)。

- 好きな芸能人は誰ですか。 -

 芸能人は自分の手が届かない存在だと勝手に決め込んでしまっていて、「テレビの人だ」というイメージがあるので、あまり興味はありませんが、あえて言うとすれば、こじるり。小島瑠璃子さんですね。あのような明るい性格で接する人が好きですね。

- 毎年夏にB&G海洋センターで子供たちにカヌー体験教室を開催されていますね。B&G海洋センターの後輩たちへの思いをお願いします。 -

定期的に子供たちにカヌーを教えている

定期的に子供たちにカヌーを教えている

 体験教室は一昨年から毎年1回やっています。普段B&G海洋センターを使わせてもらっていますし、少しでも恩返しではないですが、地域に貢献できればと思っていますので、そういう依頼があれば、精力的に受けさせていただくようにしています。

 そこでカヌーの魅力や楽しさを伝えていき、その子供たちが高校や大学でカヌーをやって、どんどんカヌー競技が発展してほしいという願いがあります。カヌー教室という機会で、カヌーに乗って興味持ってもらい、子供たちの未来への道が開くきっかけになりたいと思います。

- ありがとうございました! -

(文:田中 大幾

前編:カヌー人生の始まりは

近江八幡市安土B&G海洋センターの外観

海洋センターは、琵琶湖最大の内湖である西の湖の湖畔にあります。西の湖周辺のヨシ路は、水郷めぐりの名勝として琵琶湖八景の一つにも数えられています。海洋センターには隣接して西の湖自然ふれあい施設があり、カヌー体験をしながらデイキャンプも楽しめます。