スペシャル 夢をつなげ!B&Gアスリート
No.017:小梶 孝行選手(平成29年度日本カヌースプリント選手権大会 カナディアンペア1000m・500m 優勝)東京オリンピックを目指し、世界の舞台で活躍するカナディアンカヌー選手
2018.03.06 UP
2018.03.06 UP
プロフィール | 小梶 孝行(こかじ たかゆき) |
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カナディアンカヌーとカヤックの違い |
・カナディアンカヌー 片方のひざを立てた姿勢で漕ぐ種目。片側だけに水かきが付いたパドルで、ひざを立てた側のサイドを漕ぐ。 ・カヤック 座った状態で漕ぐ種目。水かきが両端に付いたパドルでカヌーの両側を交互に漕ぐ。 |
前編:カヌー人生の始まりは
- 中学時代まで続けていた水泳部が高校になく、新しい部活を始めようとしていた小梶選手。小梶選手がなぜそこでカヌー部を選び、カナディアンカヌーを漕ぐようになったのか、その始まり。また、今も地元で活躍しているご本人の、地元の好きなところなどを伺いました。
- カヌーを始めたきっかけを教えてください。 -
僕は高校1年生からカヌーを始めました。入学する八日市南高校には、中学時代まで打ち込んだ水泳部がなく、どうしようか迷っていた時に、中学校時代の水泳部の顧問の恩師に、カヌー部を勧められました。以前、僕の3つ上の水泳部所属の先輩が、八日市南高校のカヌー部に入っていたこともあり、「先輩も行っているし、もし何かスポーツするのであればカヌー部はどうか」と、八日市南高校カヌー部監督の饗場 忠佳(あいば ただよし)先生に、僕を紹介してくれました。
高校2年生での国体
すると入学式の日に、家に電話がかかってきて、「カヌー部入らへんか」と、饗場先生から直接電話がありました。後日、カヌー部に足を運んで、初めてカヌーに乗り、カヌーの楽しさと面白さを実感して、入部を決めました。
一緒に入部した同級生の男子は、僕ともう一人いました。男子二人で、比べるにも一人しかいないので、同級生に負けたくないという思いで常に練習に励んでいましたね。
- なぜカヤックではなく、カナディアンを選んだのですか。 -
半分以上饗場先生が勝手に決めましたね(笑)。
もともと最初にやっていたカヤックから、いきなり饗場先生が学校に、車の上にカナディアンカヌーを積んできて、「ペアでカナディアンやるぞ」「スコップどっちで持つんや」と言われました。
スコップの持ち方で、カナディアンのパドルの右左を選ぶそうで、僕の相方が右と言ったので、「じゃあ僕左でいきますわ」と言って、右と左に分かれました。それがカナディアンカヌーの始まりです。
饗場 忠佳さん
- 練習で工夫していることがありましたら教えてください。 -
高校時代から今現在も、他の選手のフォーム等を参考にして技術の向上を図っています。高校時代、饗場先生がよく試合に行くと、強い選手や速い選手の映像をビデオカメラで収めてくれていて、僕がその映像を家に持って帰って観ていました。他の選手の映像は、自分のフォームを修正するうえで、大変参考になります。
また高校時代、饗場先生は直接細かく教えてくれるというよりも、ある程度の大まかな部分を教えてくださり、あとは自分で見て学ばせる自由な指導でした。例としては、饗場先生が全国の様々なところから経験豊富な人や強い人に声をかけて、指導に来てもらいました。その人たちの技術を自分たちでうまいこと身につけるように学ばせる方針でした。
カヌーを担ぐ小梶選手
そのため単に言われたことだけをやって技術が伸びるというよりは、良い意味でほったらかしで、自分で調べたり工夫しないと伸びていかないので、考えさせてもらいながら練習できました。常にカヌーを研究し、自分の中で模索しなければいけないので、カヌーが好きではなかったら、たぶん速くなっていなかったですね。
この高校時代に確立した、工夫さえすればどれだけでも練習ができ、強くもなれるスタンスは、今の練習でも活きています。
- あこがれの選手は誰ですか。 -
もう引退されていますが、同じ立命館大学カヌー部出身の先輩で、元日本代表の丸山孝二さんです。僕が立命館大学カヌー部のとき、丸山さんはカナディアンの日本代表であり、大学OBとしてコーチでもありました。丸山さんの話は大変参考になりますし、今でも自分が困ったときに、連絡をとってアドバイスをいただいており、今も僕が目標としている方です。
丸山さんとの初めての出会いは高校1年生の春に開催された最初の大会です。その大会ではカナディアンとカヤックの両方に出場しましたが、カヤックの試合の際、波が強く、白波がおおきく立つほど荒れている中、スタートラインまで何回も転覆しながら向かいました。カヌーの中に水もいっぱい入ってしまって、その時救助艇が近づいてきて、手を伸ばして助けてくれた人が丸山さんでした。当時丸山さんは滋賀県で練習されていて、今回の試合をスタッフとして手伝っていたそうです。
高校1年生の時に知り合ったことは、実は大学に入ってから知りました。初めて会ったときは「僕をひょいっと軽く引き上げるなんて、えらいでかい人やな」と思いました。
- 普段の一日のスケジュールを教えてください。 -
近江八幡市安土B&G海洋センター前の西の湖と小梶選手
僕は2011年から株式会社たねやの企業所属アスリートとして、カヌー競技と店舗での販売業務の両立をしています。日本代表の合宿や大会で、県外や夏場は海外に行ったりすることが多いのですが、地元にいるときは近江八幡市安土B&G海洋センターで練習をしています。
仕事があるときは、朝は早ければ5時から7、8時までの、出勤ぎりぎりまで練習をします。日中仕事をして、大体19時くらいに仕事が終わったあとに、再びB&G海洋センターに来て練習しています。
夜はウエイトトレーニングや、真っ暗の中カヌーに乗るときもあります。B&G海洋センター前の西の湖は障害物がなく、夜は鳥ぐらいしかいないので、水面に出てしまえば特に危険はありません。月明かりがあれば、とても明るいですし、目が暗闇に慣れるので夜でも周りがよく見えるようになります。
- 所属企業の社員のみなさんは、応援してくださっていますか。 -
そうですね。会社でも僕の話題を取り上げて、社内報などに載せてもらうことがあるので、僕の知名度が上がってきていて、声をかけてくださる方も多いです。
社内の集まりがあった際は、僕が知らない人でも、相手が僕のこと知ってくれていて話かけてくれることが、嬉しいですね。
「たねや」の職場仲間。前列右から2番目が小梶選手。
- カヌーの練習後のリフレッシュ方法はなんですか。 -
合宿先などでの練習で疲れたときは、スーパー銭湯のようなお風呂に行ってゆっくりします。あとは、自転車に乗ることが好きなので、クロスバイクでぶらーっと出かけて、路地に入って珍しいお店を探したりしていますね。
- 地元の好きなお店はありますか。 -
最近通えていないのですが、高校時代からずっとお世話になっている「ABC食堂」という洋食屋さんです。そこのオーナーシェフが気さくで、とてもよくしてくれて、昔から応援してくれています。
ABC食堂のピザ(手前)
- 地元の好きな観光地や場所はありますか。 -
太郎坊山と、そこにある太郎坊宮ですね。そこは勝運の神様で、最近では、レスリングの吉田沙保里選手や陸上の桐生祥秀選手などが参拝に来て、「勝」の漢字が書かれたお守りを買って、少し有名になってきているところです。太郎坊山は僕の実家から近くて、小さい頃よく太郎坊宮までの階段で遊んだり、初詣に行ったりしていました。最近は山登りや階段ダッシュ、逆立ちなどのトレーニングとしてよく行っています。
太郎坊宮から、市内を一望できる
階段の上にある太郎坊宮からの景色は、市内を一望できるほど見晴らしが良く、リフレッシュにもなります。また夜は星がきれいに見えるのも、好きなところです。
でも仕事が終わった夜に走ったら、街灯もなくてとても怖いですけどね(笑)。
- 試合前に必ず食べるものはありますか。 -
試合の2時間前に、自社の和菓子である、斗升最中(ますますもなか)や栗饅頭を食べていますね。和菓子は、ただ単に甘くておいしいだけではなくて、糖質があるのでエネルギー源になりやすく、消化もしやすいので、試合会場に持っていきます。
※後編に続きます
(文:田中 大幾)
小梶選手ゆかりの
近江八幡市安土B&G海洋センター(滋賀県 近江八幡市)
海洋センターは、琵琶湖最大の内湖である西の湖の湖畔にあります。西の湖周辺のヨシ路は、水郷めぐりの名勝として琵琶湖八景の一つにも数えられています。海洋センターには隣接して西の湖自然ふれあい施設があり、カヌー体験をしながらデイキャンプも楽しめます。