スペシャル 夢をつなげ!B&Gアスリート
No.005:高野 芹奈選手(リオデジャネイロオリンピック セーリング競技49erFX級出場) 国内セーリング競技史上最年少、最短のキャリアで五輪に出場!
2017.03.13 UP
2017.03.13 UP
第2話:風を味方につけ、オリンピックの大舞台へ
2016年3月に中東のアブダビで開催されたアジア選手権。参加する日本勢の中で一番良い成績を収めたチームがリオオリンピックの日本代表に決まる重要な大会でしたが、高野(クルー)/宮川(スキッパー)ペアを不運が襲いました。
「数日間に及ぶレースで、あまり成績が伸びず、『オリンピックは無理かもしれない』と、二人で意気消沈していたところ、ヨットハーバーが何数十年ぶりかの大規模な砂嵐に見舞われました。人が飛ばされる程の強い砂嵐が吹き荒れる中、私達の艇だけがハーバー内で横転してかなりの傷が付いてしまったため、メンタルもガタ落ちでした」
まさに泣きっ面に蜂の状態となりましたが、そこで思い切って開き直り、2人はミーティングを実施して気持ちを入れ変えました。
「『ここで折れたらいけない。絶対にオリンピックに行きたい』とお互いの強い意志を再確認しました。すると、次の日から絶好調。私達が得意とする軽風にも恵まれ、トップをとれるようになりました」
そして迎えた最終レース。日本の4チームが4位までを占め、上位3チームが同点という状況の大混戦となりました。
「最後1つのレースで、オリンピックに行くか決まる状況で、誰が勝つかわかりません。前日は夜も眠れないくらい皆が緊張していました。でも私達は『いつも通り会話して、お互いのペースを乱さずレースしよう』と声を掛け合ってレースに臨みました。結果は、軽風も味方しダントツで1位。運にも恵まれてオリンピックの出場権を手にしました」
アブダビでのアジア大会に出場した高野選手(中央)と宮川選手(左)
好きこそ物の上手なれ
「ヨットの機材や工具を買いに行く時は凄く楽しいです」。
高野選手は、今年3月1日で19歳になりました。10代の女の子といえば、買い物で洋服を見るとキラキラした目をする年頃ですが、高野選手はあまり興味がないそうで、ハイテク素材のロープやブロック(滑車)などに目が行くそうです。
競技を初めて3年半。リオオリンピックでは20位という結果に終わりましたが、過去最短のキャリアでオリンピック出場という快挙を成し遂げました。まさに「好きこそ物の上手なれ」です。
「次は、3年後の2020年、東京オリンピックの表彰台を狙いたいです。そして、ここまではペアになってくれた宮川選手の力に頼ってきたので、自分の力で勝ち上がれるような『世界一のクルー』になりたいです」と大きな目標を語りました。
リオオリンピックの開会式に出席する高野選手
高野選手 一問一答
― これまでの練習で辛かったことはないですか ―
「冬の日が辛かったです。でも風が冷たい時ほど、重くずっしりした風が吹くので、凄く良い練習になります。だから寒くても外に出ないと上達しないんですよ。そんな日に3時間も4時間も海の上で練習していると体が冷えて冷えて・・・それだけが苦痛でした」
― ヨットを続けるには何が大切ですか ―
「違う目線からヨットを楽しむことが大事ですね。私だったらスキッパーをやってみるとか。山に登って海を眺めてヨットを見たり、違う種目のヨットレースを見たり、色んな面でヨットを見るとめちゃくちゃ楽しいです」
― 今後の展望を聞かせてください ―
「ジュニアワールドトップ10入りして世界ランクを上げて、ランキング上位しか出場できない大会にバンバン出ていきたい。そして2020年東京オリンピックに出場して、入賞したいです」
― 最後に、B&G海洋クラブではヨットに励んでいる子供達がたくさんいます。そこで頑張っている子供達にメッセージをお願いします ―
「特別なことをやろうと思わず、ベーシックなことを真面目に取り組み続けたら、絶対に頭一つ飛び抜けることができるので基礎を疎かにしないでほしい。だから、陸の上でも挨拶や物を大事にするといった、生活の中でも基本的なことを大事にしてほしいと思います。そして、楽しむことを忘れないでください」
B&G兵庫ジュニア海洋クラブのメンバーと記念撮影。これからも笑顔の素敵なオリンピックセーラーとして頑張ってください!
※完
※次回《夢をつなげ! B&Gアスリート》No.006:<OP級ヨット>抜井 理紗 選手
(文・鈴木 慶)
高野選手ゆかりの
B&G兵庫ジュニア海洋クラブ(兵庫県芦屋市)
土日祝を中心に、兵庫県立海洋体育館(兵庫県芦屋市)で年中ヨットの練習を行っています。卒業生は、インターハイや国体、オリンピックナショナルチームで活躍しており、高野選手も、同クラブで約1年半練習に励みました。