大型のゲンジボタルが放つ光のシンフォニー
~遊歩道も整備してホタルの里の復活をめざす、岡山県美作市の河会地区~
6月16日に「まちレポ」中国版に投稿いただいた、岡山県美作市でホタルの里の復活をめざしているレポート。昨年までは「ホタル祭」が毎年開催されて、2千人余りの来場者で賑わったそうですが、過疎化による人口減、祭りの担い手の高齢化などによって今年は中止を余儀なくされました。
しかし、その一方で地元河会地区の人たちが「ホタルを守る会」を結成しており、平成10年からホタルの幼虫を放流しながらホタルの里の環境づくりに励んでいます。そんな地域の人たちの取組みについて、まちレポを投稿していただいた同市の平田さんに話をお聞きしました。

河会地区を流れる、きれいな河会川の水面を飛び交うホタルの群れ。
大型のゲンジボタルが多いため迫力満点です
地元小学校も授業の一環でホタルを飼育!
■美作市南部・旧英田町の河会地区では、きれいな河会川とホタルの里の復活をめざして平成10年から毎年ホタルの幼虫を放流しているそうですが、こうした活動はどのようなきっかけがあって始められたのでしょうか?
30年ほど前から、地元の青少年育成会が夏祭りの一環で“ホタル祭”を開催していましたが、子供が減少したことから20年前に会がなくなってしまいました。そこで、新たに地元の人たちが「ホタルを守る会」を結成。河会地区からホタルを絶やさないための運動を始めるようになり、“ホタル祭“も昨年までは地域のイベントとして続けられていました。

一見、どこにでもあるような風景ですが、中央を流れる河会川周辺はホタル舞う里として知られています

昨年まで毎年続けられてきた地元のホタル祭。今年は中止されましたが、ホタルの里は地域の力によって守られ続けています
■「ホタルを守る会」では、具体的にどのような取組みをされているのでしょうか。
会ができた当初は日本各地に赴いてホタルの飼育や保護について勉強し、その後は地元の河会コミュニティを飼育場にしてホタルの幼虫の繁殖を始めていきました。現在、40個の水槽を準備し、井戸水を引き、空調機を購入して水温を一定に管理したうえで、餌となるカワニナは近隣の小原地区から大量に採取しています。

ホタルの里に設けられた、ホタル人工飼育研究所。有志の手によって、さまざまな試みが行われています
また、地元の小学4年生も学校で6月~9月まで環境総合学習の一環として飼育しており、通常の授業でも出前講座などを実施したり、子供たちがホタルの生態について調べたりしています。昨年までは、毎年開催されていたホタル祭でも研究・観察の成果を発表していました。
今年度、この祭りは中止されてしまいましたが、シーズンになると多くの問い合わせがあります。特に、写真愛好家で毎年訪れる人が多く、地元の山陽新聞の読者投稿欄に写真が掲載されることもよくあります。

ホタルの幻想的な写真が新聞に掲載されることもよくあります
鑑賞用に800mの遊歩道を整備!
■河会川とほたるの里の魅力、特徴、見どころを教えてください。
大型のゲンジボタルが多いのが特徴です。また、カジカガエルの美しい鳴き声を聞きながらホタルを鑑賞できることで好評を博しています。
また、通常の道路の反対側を「ホタル遊歩道」として整備している点も、他のホタル観賞地にはない特徴ではないかと思います。この遊歩道は前岡山県知事の発案によるもので、通常の道路の対岸に約800mにわたって設けていますから、川の両側からホタルを鑑賞することができます。草刈等の管理はホタルを守る会の会員で行っています。

川沿いに設けられた「ホタル遊歩道」の案内。散策しながらホタルを鑑賞することができます

前岡山県知事の発案によって誕生した「ホタル遊歩道」。800mにわたって整備されています
■ご投稿いただいた、まちレポ[中国版]の記事は、職場体験の中学生が手伝ったそうですが、彼らはどのような手順でレポートを作成していったのでしょうか。
まず、B&G財団について、そしてまちレポの概要について説明したのち、自分だったらどういうまちレポを作るのかを考えてもらいました。
そして、『何についてPRする』のか、『どんなところがすごくて面白い』のかを整理したうえで掲載用の文章を書いてもらい、私が添削した後で投稿させていただきました。
また、写真については、『どんな写真があるといいか』を考えながら市のホームページや観光パンフレット、広報用写真、インターネットから画像を選び、チョイスしてもらいました。
■職場体験はどのような目的で行っているのですか。
「社会人としての基礎的・基本的なルールやマナーを身につける」「望ましい勤労観・職業観を育む」「今の自分をさらに向上させる」「自ら考え、判断し、行動する力を身に付ける」ことを目的としており、体育館及びラグビーサッカー場、市内の旅館、コンビニ、美容室、ホームセンター、電気店、スーパーマーケット、図書館等で体験が実施されました。
■いろいろなお話、ありがとうございました。職場体験の子供たちにまちレポを作ってもらったことをうれしく思います。地域の宝としてホタルの里を末永く守ってください。

国道に掲げられた大きな看板。県内外から大勢の人が詰め掛けるホタルの里は地域の宝です