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No.007:福井県大野市 岡田 髙大 市長 ブランドキャッチコピーに込めた支え合い
「結の故郷」(ゆいのくに)

2017.09.15 UP

大野へかえろう事業 多世代交流で生涯現役社会を作ろう

- 水にも関連しますが、大野市で進める、地元に愛着を抱き帰郷する運動は素晴らしいと感じます -

 実はこの「大野へかえろう」運動に関連した「大野へかえろう」という歌があります。ふるさとに自信と誇りを持った若い人々に、いつか大野に戻っておいでよと、地元の大人が期待しています。直接言えなくても、卒業式などで歌い市外に旅立つ高校生に向けて伝えています。

 平成27年度から毎年9月から2カ月、高校生自らが大野市内の事業所を紹介するポスターを作成し展示する「大野ポスター展」を開催しています。毎回市内の様々な商店にスポットがあてられ、高校生も地元にどのような企業、事業所、個人商店があるのか知らない中で、店主や経営者と会話をしながら、一緒になってどういったポスターを作ろうかと考えます。実際に開催してみますと「え、こんな仕事があるんだ」ということが分かりますし、出展関係者らと付き合いが始まるでしょう。高校生の地元への愛着に繋がってくれればという思いでやっています。

大野ポスター展 展示場(会場:結ステーション)

 ポスター展では、市民はもちろん大野に訪れた人が気に入った作品へ投票を行い、いろんな賞が決定されます。投票は直接投票箱で、またはネット投票も出来ますので、是非、一度ホームページをご覧いただければと思います。

 高齢者の方には、生涯現役で頑張ってほしいといつも思っていますし、生涯現役社会をつくろうと推進しています。 その中で、B&G海洋センターは生涯現役社会の一助に絶対になると考えます。世代間交流で活用していただき、子供はお年寄りから知恵をもらって、お年寄りは子供からエネルギーをもらう。そういった意味で、B&G海洋センターの果たす役割は大きいと思います。

  お年寄りを表に出す機会、社会参加していただく機会を、行政がこれから多く作っていかなければいけないのです。その機会を提供する場所として、B&G海洋センターは非常によい施設であると思います。

観光プロデュースと企業誘致

- 子供たちと市長の語り場、意見交換会をされているそうですね -

子ども議会の様子

以前は、「来(き)とっけの市長室へ」というものを開催して、小中学生等と意見交換会を行っていたのですが、平成27年度からは、児童が議会を体験する「大野市子ども議会」を市議会議場で開催しています。各小学校の代表者児童から質問をいただき、こちらが答弁するという形で、丁寧に答えてます。 また、平成29年度に市内中高校生を対象に「わたしが未来の市長」プロジェクトを始動しており、中高校生から自分たちの町をより魅力的にするためのアイディアを提案していただきます。

 このほかに市外・県外の高校生や専門学生・大学生から交流人口の拡大に向けて観光プランを募る、「越前おおの観光プロデュースコンテスト」を開催し、提案をしていただいています。市内には高校が2校ありますが、そのうちの1校は、全国高等学校観光選手権大会に3年連続出場し、平成29年度は銀賞(第3位)に輝き、大野市の観光資源を活かしていくための企画を発表していただいてます。

 そのようなプロデュースをいろいろやっていく中で、最近アウトドアメーカー「mont-bell」と連携を深めています。平成27年から同社の辰野会長とお付き合いが始まり、平成29年2月には登山などの野外活動の推進や防災協力で連携していくことを目的とした地方創生に向けた「相互連携・協力に関する協定書」を同社と締結しました。 百名山の荒島岳を含め、市内での活動プランをmont-bell会員向けに作り、登山コースの設定をしていただいてます。また、平成30年度の福井国体に向け、プレ国体として、大野市ではカヌー競技(スラローム・ワイルドウォーター)、相撲競技、自転車ロードレース競技を開催し、盛況の内に終えることができましたが、相撲競技を除く2種目の大会において、入賞者の副賞に協力をいただいています。

- 企業誘致にも力を注いでいますね -

 大野市では中部縦貫自動車道の計画が進んでいまして、それを見据えた企業誘致も進んでおり、大変ありがたいことと思っています。また大規模産業団地も建設中で、平成31年度を目処に造成を終わらせて企業に入っていただく方向です。

 その産業団地は中部縦貫自動車道のインターチェンジの近くになり、東日本大震災以降、東海地域などの太平洋側に所在していた企業が、日本海側に拠点を分散する動きがあり、その受け皿としてお手伝いできればという思いがあります。

 観光についてですが、ここ数年の間「天空の城 越前大野城」をPRしており、その効果もあって劇的に年間観光客が増えました。平成18年に約152万人だった観光客数が、平成28年には213万人まで増えました。
 当時は郊外型の観光、スキー場がありましたが、スキー場もいくつか閉鎖され、スキー人口も減りました。それをカバーしているのが「まちなか観光」です。平成24年に55万人くらいであったものが倍増して平成28年には108万人までになりました。

 郊外観光とまちなか観光の観光客数はだいたい同じくらいです。まちなか観光では冬の雪の中でも観光バスが入ってきて、碁盤の目の城下町を散策しています。

冬のイベント 「結の故郷 越前おおの冬物語」

天空の城 越前大野城

農業は大野ブランド 物流の利便で転機すぐ

- 農業も「大野ブランド」を立ち上げましたが、農業から見る市の発展や秘訣で何か一押しのものはありますか -

 大野の農産品は非常に優良なものとして評価されていますので、これを受け継ぎ、次世代に伝えていかなければと思っています。ただ国の農政のあり方も様変わりしてきました。水稲主体でやってきた地域なので、「米」の生産で生きていけるようにしなければいけません。不足部分を補う形で園芸作物や果樹の生産に注力するという方向にシフトしていく必要があるのかなと思います。先ほど道路建設の話をしましたが、今後、中部縦貫自動車道が繋がれば、朝採れ野菜が大消費地の名古屋方面の市場に出せるようになります。一つの転機がすぐそこにきていますので、それを見据えて大野市の農業を持続可能なものにしていく必要があると思います。

 もう一方、国民は安心で安全な農産物を求めています。生産者の顔が見えるものを多少高くても購入するという意識が高まっています。契約栽培なども一つの選択肢にできるのではと思っています。日本は農で成り立ってきた国で、毎年、天皇陛下は皇居でお手植えで苗を植えておられ、皇后陛下もご養蚕をなさっておられます。いかに農を大事にする国かということです。農を潰すわけにもいきませんし、むしろ発展させていくことを、国ではなく地方自治体がきちんと考えなければいけないという思いはあります。

 大野市の冬の味覚として冬場に食べる水羊羹があります。年明け2月上旬には、「結の故郷 越前おおの冬物語」が開催され、同時開催として大野市商工会議所が「でっち羊かんまつり」※というイベントを催し、市内の各菓子店が作る少しずつ味の違う水羊かんの味めぐりができます。夜には、お城の下で打ち上げ花火を上げる冬花火が行われます。 大野市は特別豪雪地帯になっていますが、夜には城や時計台の屋根に積もった雪がライトアップされ、景観は本当にきれいです。それを見ながらお城の下から花火がぼんぼんと上がるんです。写真家や写真が趣味の方もたくさん来て、花火を背景にした大野城とか、雪の大野城とかを撮っていらっしゃいます。

 ※でっち羊かん・・・大野市(福井県)では冬場に水羊かんを食べる風習があり、その水羊かんの呼び方

祝日の国旗掲揚で市民の団結をはかりたい

- 最後に一言お願いいたします -

 今、国民の祝日に国旗を掲げる運動をやっておりますが、実は市長に就任した時、市長室にも応接室にも国旗がなかったのです。国旗を掲げることは、人、地域が結の心を養うため必要だと考えています。

 「海の日」を7月20日に固定すべきかという論争がありますが、私は「海の日」は固定しないといけない、そう思います。従来固定化していた成人の日1月15日も、体育の日10月10日も連休とするために移動祝日に変わりました。東京オリンピックの開会式が行われたことを記念して10月10日に体育の日を作った経緯がありますのに。 ところで国旗を掲揚するメリットについて申し上げると、祝日の日に観光客の方が、「えっ、この町って祝日に国旗を出すんだ」と言って話題性が生まれることです。またこれもブランド化できるでしょう。

 もっと全国的に国旗を掲揚する運動を展開すべきだと思っています。祝日には全国の各家庭で、公共施設も含めて国旗を出すようにする。そうすると観光客もそれを見て「ああ、今日は祝日やったんや」と祝日をあらためて認識するようになります。

- どうもありがとうございました -


(文:宮嵜 秀一

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ふるさとにマッチした素晴らしさ 改修したB&G海洋センター


大野市B&G海洋センターは市街地から国道157号線で南に下った南東部、特産作物「上庄里芋」の産地である上庄地区にあります。上庄公民館・八幡神社・上庄保育園に隣接しており、周辺には上庄小・中学校・上庄幼稚園・農協・郵便局の他、のどかな田園風景があり、里芋畑では収穫期になると大きなハート型の里芋の葉がいたるところで見られます。 体育館は年間を通して多くの市民がスポーツを楽しんでいます。屋外プールは毎年6月から9月までオープンしており、水泳教室も開催しています。