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No.007:福井県大野市 岡田 髙大 市長 ブランドキャッチコピーに込めた支え合い
「結の故郷」(ゆいのくに)

2017.09.15 UP

プロフィール 岡田 髙大(おかだ たかお)市長
昭和34年生まれ 福井県大野市出身
平成7年 大野市議会議員当選
平成13年 自由民主党福井県支部連合会青年局幹事長
平成18年 大野市長(第14代)に就任(平成22年に15代に再就任)
平成26年 大野市長(第16代)に就任 現在3期目
街の紹介 福井県大野市は、霊峰白山の支脈に囲まれた、歴史・文化・伝統が息づくまちです。
 越前大野城とその城下町は、織田信長家臣の金森長近により400年以上前に築かれ、「北陸の小京都」として風情が色濃く残っています。
 中でも大野盆地は、日本百名山のひとつ「荒島岳」などの雄大な自然に囲まれ、山を下りながら磨かれた美しい水は湧き水となって、たっぷりの恵みをもたらします。
 平成25年に越前おおのブランド戦略を策定した際に、「結(ゆい)の故郷(くに) 越前おおの」と定めました。これは、お互いに助け合う習慣や、他地域との絆を大切に育んできた大野市を「結」がたくさん詰まった一つの「故郷」と位置付けて表現したものです。


景観法できる前に「景観条例」作り
ふるさとにマッチした素晴らしさ 改修したB&G海洋センター

このたびB&Gは、「リーディング・カントリー」として知られる福井県大野市に「海洋センター改修、水、ソトコト(雑誌)、お城、産業 農業、観光」など、盛りたくさんの情報発信していただきたいと考え、お話を伺いました。
その中で最も感動したのは、B&G海洋センターの景観や街に適合したセンターの「センスの良さ」。現在、大野市では景観のよい建物が増えており、B&G海洋センターでは、住民がスポーツのみならず、多機能に施設を有効活用できている、と実感させられます。
大野市の市民がどのようにセンターを活用しているか、また市のいろいろな魅力に迫ります。

- 初めに、次世代の人材育成に取り組む中で、今後B&G海洋センターをどう活かそうと考えていますか -

 B&G海洋センターの存在意義について、昨今かなり方向性が変わってきたかと思います。当初の目的である「青少年の健全育成」のほかに、地域の高齢者にはB&G海洋センターで実施される行事により多く参加していただき、楽しんでもらったり、学習したりする場になればと思います。もちろん世代間交流の場としていかなければいけないのですが。

- B&G海洋センターの外壁改修後、センターはどのようにイノベーションされましたか。実際にセンターを拝見し、その外観が他の施設とほどよくマッチされていると思いました -

 地域の祭りの日に合わせて海洋センターの外壁改修のお披露目をいたしましたが、皆さんには大変喜んでいただき、また施設を利用したいという声があり、ありがたいと思っています。 市では、景観法が国で定まる前から独自で景観条例を作り、城下町の町並みや農村部の田園風景など、大野らしい固有の景観を引き継いできました。海洋センターも周囲の景観に違和感なく溶け込んでおり、良いものに仕上がったと思っています。 子供たちも海洋センターを見たときに、自分たちのふるさとにマッチした施設であると感じてもらえて、他にもそのように配慮された施設や住宅が大野市にあるのだ、と気づいてもらえるとありがたいなと思います。

  • 大野市B&G海洋センター

  • 城下町のまち並み(寺町通り)

ここは水の聖地「水への恩返し キャリングウォータープロジェクト」

- 市として「水への恩返し」プロジェクトについてお話をお聞かせください。 -

 平成27年から「水への恩返し キャリングウォータープロジェクト」を始めていますが、その前段として本市のブランド戦略の取り組みがあり、そのブランドキャッチコピーとして「結の故郷(ゆいのくに) 越前おおの」があります。「ゆい」というのは「結」という一文字で、「くに」は「故郷」としています。私たちはモノの豊かさや便利さばかりを追求するあまり、失うものも多かったのではないかと感じています。

 日本人が古来から受け継いできた、お互いに助け、支え合い、思いやるという心の伝統的文化を尊ぶ願いが「結」という一文字に込められています。お子さんから高齢者までが自分たちの生まれ育った地域に自信と誇りを持ってもらうことを柱として、今一度、原点である「結」に立ち返って人づくりをすることにより、結の故郷づくりを推進しています。

水の精「みずのめぐみん」

 大野市は以前から水に恵まれていましたので、水がいかに大切か、自分たちの生活がいかに水と密接に関わっているかを考え、それを自信と誇りに繋げるとともに、当たり前だったものに「ありがたい」という意識が持てるように水への恩返し事業をさまざまな形で行っています。平成27年に開催された第7回B&G全国サミットの交流会に大野の水をお持ちしたこともあります。
 大野市には水の精「みずのめぐみん」がそこらじゅうにいます。

- 雑誌「ソトコト」との連携 -

 最初はどのような雑誌なのか知りませんでしたが、日本の移住・地域コミュニティ等の情報を提供している雑誌であることを知り、平成28年8月号に大野市の記事を載せていただきました。その後、「ソトコト」の指出編集長を講師として大野市へお招きしたことで、指出編集長にも大野市が「水の聖地」になりつつあるとして関心を持っていただき、お互いが出来る範囲で協力をしましょうということになりました。大野市としては「ソトコト」に記事が掲載されれば光栄ですし、雑誌社側としては連載することで「ソトコト」のグレードも上がると言われ、大変ありがたいと思いました。。

 今回は、「ソトコト」からオファーをいただき、平成29年度から「越前おおのみずコトアカデミー事業」を新たに実施することになりました。この事業は大野の水を主なテーマとした切り口で、首都圏在住の方を対象に、大野市との関わりを発見していくための連続講座を東京で開催いたします。参加者の大野市への移住や、首都圏での大野市に関心のある方同士のネットワーク構築を期待しています。この講座には、ソトコトの指出編集長にも講師として参加いただくとともに、誌面において参加者の募集、講座の様子などを取り上げていただく予定です。

 大野市にはまだ市街地や農村部に湧水地があります。子供の頃から、この湧水地のことを清水と書いて「ショウズ」と言っていましたが、時代の変化や社会構造の変化により、清水も失われつつありました。それを今一度、復活できるものは復活し、今残っているものを後世に伝えようと、昭和48年以降、取り組み続けています。現在も、市街地の約8千戸はホームポンプで地下水を汲み上げ、炊事、洗濯、風呂や洗車にまで地下水を利用しています。

 平成27年から「水への恩返し キャリングウォータープロジェクト」を進めていますが、「天空の城 越前大野城」などの観光資源の恩恵にあずかっているのも、水のお陰であると思っています。食べ物も飲み物も全てそうです。大野市では地下からポンプで水を汲み上げていて、蛇口をひねればミネラルウォーターがおいしく飲めます。しかし、最近の若いお母さん方が、子供が少年サッカーや少年野球などに行く時に、コンビニエンスストアでペットボトルの水を買って持たせているのを見ると、家の蛇口をひねって水筒に入れてあげればいいのに、と思っています。

 なぜ、ガソリンより高いペットボトルの水を持たせ、本当にミネラルいっぱいの天然の地下水を水筒で持たせてあげないのだろうと不思議に思っています。その辺の意識も水のプロジェクトで徐々に変わっていってもらえれば、自信や誇りに繋がるのだと思います。

 このプロジェクトの実施により、まちや地域づくり、また人づくりが上手く成功すれば、全国的に誇れる市になるだろうと思っています。これが日本中に広がり、世界にも発信していき、世界中で故郷に誇りを持てる人が増えれば、戦争は起きない。そんな時代がやってくればいいと思っています。

 大野市では学校、公共施設のほとんどは上水道を入れていますが、この上水道の水源も全て地下水です。ですから滅菌処理も厚生労働省が定める最低レベルで行っています。そのため地下水を飲む場合と比較しても、ほとんど味に違和感がありません。

(文:宮嵜 秀一

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大野市B&G海洋センターは市街地から国道157号線で南に下った南東部、特産作物「上庄里芋」の産地である上庄地区にあります。上庄公民館・八幡神社・上庄保育園に隣接しており、周辺には上庄小・中学校・上庄幼稚園・農協・郵便局の他、のどかな田園風景があり、里芋畑では収穫期になると大きなハート型の里芋の葉がいたるところで見られます。 体育館は年間を通して多くの市民がスポーツを楽しんでいます。屋外プールは毎年6月から9月までオープンしており、水泳教室も開催しています。