スペシャル 夢をつなげ！B&Gアスリート

幼稚園生の頃、海に入って溺れてしまい、お父さんに助けてもらったことがあった渡辺一平選手。そんな経験をすれば、しばらくの間は水に入りたくなくなるものですが、渡辺選手はちょっと違っていました。

「溺れたとき、なぜか怖かった記憶はありません。というよりも、幼い頃から水が大好きで、お風呂に入ると顔をお湯に潜らせて息をどれぐらい止めていられるかといったことなどして遊んでいました」

小学２年生になると、親しくしていた従兄の後を追って地元のスイミングスクールに入会。ABCと初心者向けのコースが段階的に設けられていましたが、わずか一週間ほどで全てを卒業してしまい、気がついたときには選手コースで１日４、５時間の練習に励んでいました。

「自分に見込みがあったのかどうかは分かりませんが、入ったばかりのスクールでいきなり猛練習が待っていました。ここは企業が経営しているスクールではなく、地元のボランティアが高校のプールや市営のプールを借りて練習していた地域の小さなクラブといった感じでした」

渡辺選手の地元には屋外プールしかなかったので、夏が終わると屋内プールがある佐伯市のB&G海洋センターなどに出向いて練習を続けました。

「佐伯市にはB&G海洋センターを含めて数カ所に屋内プールがあったので、交互に予約を入れながら使わせてもらっていたようですが、私が住んでいた津久見市から佐伯市まではクルマで40分ほど掛かります。そのため、毎日のように私の親を含めて保護者の皆さんが交代で子供たちの送迎にあたってくれました」

送迎にあたる親御さんたちの姿を見て、子供ながらに感謝の念が湧いたと語る渡辺選手。リオデジャネイロオリンピックの出場が決まったときには、親孝行がしたくてご両親と食事をともにしながら、これまで自分を支えてくれたことへの感謝の気持ちを伝えました。

家族やボランティア指導者に支えながら練習に励んだ渡辺選手。小学５年生のときに初めてジュニアオリンピックに出場しましたが、それ以降は思うようにタイムが出ず、中学卒業とともに水泳をやめようか悩んだこともあったそうです。

「中学時代は九州の大会では優勝することができましたが、全国大会で決勝に残ったことはありませんでした。そのため、中学を出たら水泳をやめようかと思いましたが、何日か泳がないでいると、無性に水が恋しくなってしまうのでした。そのため、自分は水棲人間なのかも知れないなんて思いながら練習を続けていきました（笑）」

中学時代に30センチも身長が伸びた渡辺選手。高校時代に入ってその成長が落ち着くと（（現在の身長は193センチ）、これまで記録が伸びなかったことが嘘のように、どんどん良いタイムが出るようになっていき、高校２年のときには2014年南京ユースオリンピック200m平泳ぎで見事優勝に輝きました。

「高校に入ってからも、あきらめずに水泳を続けて本当に良かったと思います。ユースオリンピックの前に世界ジュニア記録を更新していたので注目され、それが大きなプレッシャーとなったほか、大会前に足を捻挫して不安もあったため、優勝したときは喜びよりも緊張から解放されてホッとした感じでした」

翌、2015年には年齢的に最後となるジュニアオリンピック100m、200m平泳ぎで二冠を達成し、大会最優秀選手に選ばれた渡辺選手。この頃から「次はオリンピックだ！」と監督から言われ、自分でもそのことを意識するようになっていきました。
※第２話に続きます（1月19日木曜日に掲載予定）。