連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 93

日頃の練習の成果を発揮! 特集:第68回 国民体育大会(スポーツ祭東京2013)

2013.10.23 UP

今年の国体で活躍した海洋センター・クラブのアスリートたち

スポーツの秋が到来! 今年の国体も9月から10月にかけて東京都で開催されており、全国各地の海洋センター・クラブで練習に励んでいる青少年の皆さんも、競泳やヨット、カヌーなどの大会で大いに力を発揮しています。
そこで今回の注目の人は、今年の国体に出場している選手の皆さんを大会の現場で取材し、出場までの経緯や競技に参加した感想、これからの抱負などをお聞きしました。競泳:5人(第1~2話)、ヨット:2チーム(第3~4話)、カヌー・スプリント:2人(第5話)の順にご紹介していきます。
●B&G海洋センター・海洋クラブ選手の入賞者を紹介!
●第68回 国民体育大会に出場した海洋センター・クラブの選手(OB・OG含む)リスト

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第4話東京の海で腕を競ったB&Gのセーラーたち(その2)

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カラフルなジェネカー(追い風用の大きくて軽いセール)が舞うセーリングスピリッツ級のレース。迫力のある走りが東京の海で展開されました

 東京オリンピックの開催予定地である若洲沖で熱戦が繰り広げられたセーリング競技。第4話では、和歌山県、ならびに兵庫県代表として活躍したB&G海洋クラブの女子選手3人の皆さんを紹介します。

OP級のコーチもしてみたい
少年女子セーリングスピリッツ級 和歌山県代表 竹本朱理亜さん(B&G和歌浦海洋クラブ/中3)

代表の座をつかんだ中学生ペア

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小学4年生のときからヨットを始めた竹本朱理亜さん。練習に励むにつれてレースの成績が上がっていきました

●いつ頃から、どんなきっかけでヨットをはじめましたか。

 小学4年生のとき、親が新聞で海洋クラブのセーリング体験教室の告知をみつけ、いろいろあるスポーツのうちの1つのきっかけになるといって勧めてくれました。

●実は、それが大きなきっかけとなって、今日の選手活動があるわけですね。

 体験教室で最初にヨットに乗ったとき、とても楽しいと思いました。風を受けて加速していく感覚が心地よく、すぐにヨットの虜になりました。

●初めて出た大会を覚えていますか。

 小学5年生のときに初めて大会に出ましたが、思うようにスタートできないうえ、なかなかコースもつかめず、ビリの結果に終わりました。
 そのときは最初だから仕方がないと自分に言い聞かせましたが、出場回数を重ねても成績があがらず、レースの世界の厳しさを味わいました。
 でも、その辛さをこらえて練習に励むうちに、次第にレースで走ることが楽しくなって成績もあがっていきました。

●小学生時代で一番思い出に残る大会は何ですか。

 小学6年生のとき、山口県で開催された大会で準優勝することができました。とてもうれしくて泣いたことを、いまでもよく覚えています。

●中学生ならOP級ヨットに乗っている年齢ですが、どのような経緯があって高校生や成人が乗るセーリングスピリッツ級にチャレンジしたのですか。

 監督さんに勧められ、昨年の冬に山崎さんと中学生同士のペアを組むことになりました。確かに、私たちの年齢で周囲に乗っている人はいませんが、とにかくこのヨットはスピードが出るので楽しいです。また、OP級などと違って2人乗りなので、練習でもレースでも、お互いにしゃべり合いながら乗れるとこが魅力です。スキッパーの私が一方的にしゃべって、山崎さんが受けてくれるパターンが多いですけれどね(笑)。

●中学生ペアながら、県大会で高校生チームを破って出場権を得ることができました。初めての国体だそうですが、感想を聞かせてください。

 監督さんやコーチのおかげで予選を通ることができました。対戦した他のチームの方々にも感謝しています。中学生は私たちだけだったので負けると思っていましたから、いまこうして国体の会場にいること自体が奇跡のように感じています。ですから、この貴重な体験を大切にしたいと思います。

メンタルの面で強くなろう!

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B&G和歌浦海洋クラブ代表で今回の国体監督(成年の部)を務めた中村和哉さんから、セールに関するレクチャーを受ける竹本さん(右)と、ペアを組む山崎杏那さん

●初めて国体のレースに出場して、どのような感触を得ましたか。

 各県の代表が集まる国体ですから、とても厳しいレース展開が続き、この世界は甘くないと思い知らされました。監督さんからは、いまのうち(若いうち)に国体の洗礼を受けておきなさいと言われました。
 また、東京湾の海面も難しく、潮の流れに加えて湾に入る川の流れもあり、陸が近いせいか風の強弱の変化もあります。

●国体を通じて、ぜひいろいろな体験を重ねてほしいと思います。これから先の目標や夢を聞かせてください。

 ヨットは続けていくと思いますが、将来的にはOP級ヨットの指導もしてみたいです。私が初めてヨットの操船を教わって感動したときのように、私も子供たちにセーリングの楽しさを教えたいと思います。

●それでは、いま海洋クラブでヨットの練習をしている子供たちにも、何か励ましの言葉を送ってもらいたいと思います。

 私自身、いろいろな大会に出ることで自信がついてレースが楽しくなっていきました。ですから、とにかくたくさんレースに出てほしい。経験積んで分かることがいろいろあるからです。特にメンタル面で強くなることができると思います。

 ― いろいろなお話、ありがとうございました。

もっと上をめざしたい!
少年女子セーリングスピリッツ級 和歌山県代表 山崎杏那さん(B&G和歌浦海洋クラブ/中3)

筋肉痛でも気分は爽快!

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初めてヨットに乗ったときは沈をしたという山崎杏那さん。竹本さんと2人で練習に励んで県の代表選手に選ばれました

●いつ頃から、どんなきっかけでヨットをはじめましたか。

 小学6年生の夏に、祖母が新聞で海洋クラブのセーリング体験教室の告知を見て、勧めてくれました。初めてヨットに乗ったときは沈をしてしまいましたが、夏だったので水面に落ちても気持ち良かったことを覚えています。
 クラブに入って練習をするようになってからは、風が強い日は怖いと思うこともありましたが、どんどんセーリングが好きになっていきました。小学生のときはバスケットボールもしていましたが、ヨットに乗るほうが楽しいと思いました。

●最初に大会に出たときのことを覚えていますか。

 クラブに入った翌年、中学1年生のときに初めて大会に出ましたが、緊張し過ぎてお腹が痛くなったことを覚えています。その後、経験を積んでレースの雰囲気にも慣れていき、前を走る艇を追い抜くときの達成感を覚えて、いろいろな大会に出たいと思うようになっていきました。

●そのようななかで、今年は国体選手に選ばれました。感想を聞かせてください。

 代表に選ばれたセーリングスピリッツ級は、監督さんの勧めを受けて昨年の冬から竹本さんと乗るようになりました。でも、中学生同士のペアは私たちだけで、周囲は高校生以上の人たちばかりだったので、まさか県予選を勝ち抜いて国体に出るとは思ってもいませんでした。ですから、決まったときはビックリしてしまい、あわてて母に知らせました。

●年齢的にはOP級になりますが、それより大きなセーリングスピリッツ級に戸惑うことはありませんでしたか。

 この艇は、セールが大きくてスピードも出るので強風が吹くと勇気が試されますが、トラピーズを使って艇の外でハイクアウトしたときの気分は爽快です(マストから張ったワイヤーで身体を吊って艇の外に出て風圧のバランスを保つ動作)。後で筋肉痛に泣かされることもありますけれどね(笑)。
 また、1人乗りのOP級と違ってこの艇は2人乗りなので、操船しながら竹本さんといろいろな会話を楽しんでいます。

辛いときでも笑顔が大切!

●思ってもいなかった初めての国体に、どのような印象を受けましたか。

 優秀な選手が集まったレースなので、とても厳しいレースを強いられています。今日は風も吹いたので無理をして沈をしてしまい、とても疲れました。

●監督さんは、竹本さんに「いまのうちに国体の洗礼を受けよ」とおっしゃそうです。今回の国体を糧に、これからどのような目標に向かっていきたいと思いますか。

 高校に入ったらインターハイが大きな目標になると思います。セーリングスピリッツ級だけでなく、いろいろな種目にチャレンジしながら、もっともっと上をめざしていきたいです。

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トラピーズを使って全身でハイクアウトする山崎さん。筋肉痛に悩みながらも爽快な気分を楽しんでいるそうです

●2020年の東京オリンピックにも出たいですか。

 もちろん出たいですが、いまの私のレベルでは夢のまた夢です。ただ、オリンピックはずいぶん遠い道のりですが、ヨットは大好きなのでずっと続けていきたいと思います。

●最後に、海洋クラブで練習を重ねている子供たちに励ましの言葉をいただきたいと思います。

 どんなスポーツも同じだと思いますが、練習で辛いこともあるはずです。でも、そこで弱気にならないで、どうか笑顔を絶やさないでほしいと思います。笑顔で練習に励んで辛いことを乗り越え、レースに出て結果が出ればうれしくなるはずです。

 ― いろいろなお話、ありがとうございました。

少年女子シーホッパー級スモールリグの兵庫県代表に選ばれた鄭 愛梨さん(B&G兵庫ジュニアヨットクラブ/高2)は、スケジュールの関係でインタビューが取れませんでしたが、後日、メールでQ&Aに応じてくれました。
快挙! 鄭 愛梨さんは、見事に優勝を飾りました!

確実に上がりたかった国体の表彰台
少年女子シーホッパー級スモールリグ兵庫県代表 鄭 愛梨さん(B&G兵庫ジュニアヨットクラブ/高2)

思い出深い、初めてのトップ

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レース海面に向かう際、皆の応援に手を振る鄭さん。仲間を作ることがヨットを楽しくする秘訣であると教えてくれました

●いつ頃から、どんなきっかけでヨットをはじめましたか。

 2歳上の兄の影響を受け、小学4年生の春からB&G兵庫ジュニアヨットクラブに通い始めました。最初は海に出るのが怖くて、半ば強制的に出されていた感じでした。

●そのようななか、どのような経緯があってヨットが好きになっていたのでしょうか。

 練習を積み重ねていくと、だんだん自分でヨットを操れる実感がわいてきて、レースに出場するうちに、気がつくととっても好きになっていました。

●小学生の頃の大会に出た思い出。一番、心に残っている(練習、大会)は?

 小学6年生の夏に出た和歌山での大会。とても調子がよく、1日目だけでしたが初めてトップになれたことがうれしくて、いまでもあの時のコース取りは覚えています。

気がつけば終わっていた表彰式

●どんな目標を立てて今回の国体に臨みましたか。

 去年は初めての参加で落ち着いて臨めなかったですが、1年間練習を重ねてきて、今年は優勝したいと思っていました。安定した順位でレースを続け、確実に表彰台に上がりたかったです。

●優勝した感想を聞かせてください。また、今回はどんな点が上手くいきましたか。

 今回のレースは、風の振れやブローの差が激しく、コース取りにかなり慎重になりました。できるだけミスの少ないコース取りを考えてレースをして、それがうまく当たり、優勝できたのだと思います。第5レースで、前半7位から巻き返してトップフィニッシュした時はすごくうれしかったし、最終日に悪天候でノーレースとなり、優勝が決まった時は信じられなくて、実感がわいてきたときには既に表彰式が終わっていました(笑)。

●今後の目標、夢は何ですか。また、それに向かってどんな努力をしていきたいですか。

 これからのことは考えている最中です。来年の国体もできれば出場したいですが、大学受験もあるので、勉強もしないといけません。両立できるかどうかも考えながら決めたいです。また、大学に入ったらヨット部に入部してインカレで上位の戦いに絡むのが目標です。そのために、これからは2人乗りも練習していくつもりです。

●海洋クラブで練習に励む小学生たちへのアドバイス、メッセージをお願いします。

 ヨットは練習すればするほど上手くなるけど、ヨットに関わることが好きじゃないと練習する気にならないと思います。ですから、まずは練習仲間を作り、皆と仲良くなって楽しく練習してください。そして、レースにも参加して全国に友だちを作って、とにかくヨットに関わることを楽しんで、好きになってください。

●2020年の東京五輪が決まったことへの感想を聞かせてください。

 東京で開催されるので、世界中のトップセーラーのレースを身近で見ることができると思うと、ワクワクします。そして、もしかしたら私も一緒に戦えるかもしれません。いずれにしても、いまから楽しみです!

今回の東京国体には多くのB&Gセーラーが出場しました

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B&G財団理事でアトランタオリンピック銀メダリストの重 由美子さん(後方)も佐賀県代表として成年女子セーリングスピリッツ級の舵を取りました

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アドバンスト・インストラクターで、2009年のレーザーラジアル級世界選手権大会日本代表に選ばれた松苗幸希さん(中央)も、成年女子シーホッパー級スモールリグ北海道代表として出場しました