活動記録 B&G全国教育長会議

活動記録 「第14回B&G全国教育長会議」開催

日本財団助成事業

海洋教育のススメ~海でも山でも教室でも!~

基調講演「海洋教育の重要性とカリキュラム開発」
講師 東京大学海洋アライアンス特任教授 日置光久

東京大学海洋アライアンス特任教授の日置光久氏

 2日目は午前9時に開会。基調講演として東京大学海洋アライアンス特任教授の日置光久氏が「海洋教育の重要性とカリキュラム開発」について講演しました。

 日置教授は、全国初の海洋教育ナショナルセンターとして東京大学内に設置された「海洋教育促進研究センター」の立ち上げに携わりました。

 センターと連携する海洋教育促進拠点(全国21拠点)と海洋教育促進研究拠点(同5拠点)を中心として、海洋教育カリキュラムの開発などを行い、関係者と新しい教育実践に取り組むものです。海洋教育促進拠点は海洋教育の仲間づくりをしているもので、さらに増やしていくと述べました。

 海洋基本法が施行されて10年が経過し、現在第3次海洋基本計画を策定する時期に差し掛かっている中、次期学習指導要領に海洋教育が盛り込まれることも公示されました。しかし、同センターが実施した調査によると、子供たちの海への理解度を測る「海洋リテラシー」はまだまだ低く、学校教育で教科横断的に海を教える必要性を訴えました。

 「海は全部つながっている。その視点が大事で、クリエイティブなもの。海洋教育は大きな可能性がある」と述べ、海洋教育には「観光・レジャー・スポーツ」以外にも、「環境」や「経済・産業」など、幅広い12の分野があると強調しました。海と人とが共生する中で、「共生」を"ともいき"と読み替えることで、海への見方も変わると指摘しました。

 海が身近にない自治体でも十分海洋教育が実践できる根拠として、海なし県である山梨県内の小学校における実践例を詳細に説明しました。
富士川の河口から、土砂が南海トラフに流れ込み、四国沖まで到達し新たな大地となる事例を挙げ、身近な川を調べることが海への学びにも繋がると述べました。

 また「海洋教育のエビデンス(科学的根拠)がないので、エビデンスを作らなければならない」、「アグレッシブに海洋教育を進める」と講演のいたるところで熱を込めました。

新しい学習指導要領の考え方
文部科学省 春山浩康大臣官房教育改革調整官

文部科学省の春山大臣官房教育改革調整官

 続いて文部科学省の取り組みを春山浩康大臣官房教育改革調整官が説明しました。新しい学習指導要領の考え方、海洋に関する教育の推進に向けた経緯についてです。学習指導要領の改訂は、本年度に周知・徹底して、小学校が2020年度から全面実施、中学校は21年度からとなっています。

 学校教育を通じて、よりよい社会を創るという目標を共有するもので、社会に開かれた教育課程の実現を目指すとしています。そのために能動的なアクティブラーニングの視点からの授業改善で、学び続けるようにしていくものです。今年3月に公示された小中学校の学習指導要領について、変更部分を詳細に説明。海洋に関する教育の内容は、現行よりさらに充実したものとなりました。

 このほか先進的な理数教育を実施している高校などのスーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業、「次世代の学校・地域」創生プラン、土曜学習応援団などを説明しました。このうち土曜学習応援団の賛同団体として、B&G財団が活動していることも紹介されました。

 財団からはインクルーシブ活動の進捗について報告しました。昨年の教育長会議の提言である、誰もが参加できる海洋センター活動の推進に基づき、インクルーシブな社会を目指し財団と海洋センターが協力して環境を整えてきました。自然体験の機会がさまざまな理由で制限される体験格差の解消、B&Gセンター・インストラクター養成研修で障害者指導法の組み込み、各地の事例などを紹介。障害者だけでなく児童養護、ひとり親家庭支援を含め、課題となる施設のハードとソフト面の対応はバランス良くと強調しました。

 さらに2018年度のB&G財団主要事業を紹介。新規の中に子育て・学習支援「B&G夏休みマナビ塾」があり、海洋センターで午前中は塾、午後水泳をする「ついでに学習、ついでにスポーツ」、学習と自然体験が両立した教室だと説明しました。

 この後、佐倉会長は会議全体を総括的にまとめました。海洋教育はすべての教科を越えたもので、日本の未来のためにも海を学ぶ機会をもっと提供し、海を守る人材を育てていかなければならないことを再確認したいと述べました。最後に全国教育長会議の新たな提言として、海洋教育の積極的推進を提案して、満場の賛同で採択されました。会議は午前11時23分終了しました。

第14回「B&G全国教育長会議」提言

一.海洋教育の積極的推進
豊かな生活に欠かせない大切な日本の海を次世代に引き継ぐため、地域・学校・家庭等が連携し、子供たちが海を学び、海に親しむ機会を積極的に提供しよう。

※提言は2018年1月24日に開催される「B&G全国サミット」で報告される予定です。

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特別講演「海洋楽のススメ」海洋楽研究所 林正道所長など