活動記録 B&G全国教育長会議

活動記録 「第14回B&G全国教育長会議」開催
日本財団助成事業

海洋教育のススメ~海でも山でも教室でも!~

  • 教育長81人ら関係者109人が出席

  • 開会あいさつするB&G財団の前田会長(11月7日午後)

 B&G財団は、11月7日(火)、8日(水)に東京・港区の日本財団ビルで、全国の教育行政トップによる第14回B&G全国教育長会議を開きました。

 2020年以降の次期学習指導要領に海洋教育の充実が盛り込まれ、今年は「海洋教育のススメ ~海でも山でも教室でも!~」をテーマに開催しました。44道府県から81人の教育長を含む109人の教育関係者などが出席。会議の最後に佐倉弘之甫会長(岩国市教育長)が、全国教育長会議の新たな提言として「海洋教育の積極的推進」を提案して、満場の賛同で採択しました。

 海を学び体験する積極的な海洋教育の実践が求められるなか、学校教育と社会教育の両面から講演や事例をもとに課題を共有しました。

正副会長で選任されてあいさつする佐倉会長(中)。佐々田副会長(右)、半田副会長(左)

 初日は午後2時に開会。冒頭、今年6月に就任した前田康吉会長(滝川市長)はあいさつで、「海の重要性やすばらしさを誰もが分け隔てなく体感できるよう海洋教育の積極的な取り組みが求められている」と述べました。

 来賓として、流通経済大学客員教授でB&G評議員の谷川真理さん(マラソンランナー)はあいさつで、「自分の体を裸足で支える」なかでビーチを走ったり歩いて、海のエネルギーをもらおうと呼びかけました。また来賓としてB&G理事の中村真衣さん(シドニー五輪競泳銀メダリスト)が紹介されました。

 この後、正副会長が選任され、佐倉会長、佐々田亨三副会長(秋田県由利本荘市教育長)、半田幸清副会長(北海道剣淵町教育長)からそれぞれあいさつがあった後、進行を務めました。

二度と泳げない体になっても、ごみからロボット
特別講演「海洋楽のススメ」海洋楽研究所 林正道所長

ロボットのウミガメを持ち込んで講演する海洋楽研究所の林所長

 特別講演として海洋楽研究所の林正道所長が「海洋楽のススメ」と題して、大手制作ではない自作ビデオ「UNIVARSAL FILM」(ウニバーサル)を写しながら体験を語りました。林所長は、水があるところすべてにおいて、楽しんでしまうのが"海洋楽"(かいようがく)だといいます。

 「いろいろな人に海のすばらしさを伝えたい。こんな奴もいたのかと思ってほしい」と前置きして始まったビデオは、自身のぎっしり詰まった半生の記録といえるものです。あっという間に時間は過ぎ、まさに浦島太郎が竜宮城を訪れたようでした。

 豊橋市出身で海が大好き、多くの人に海の大切さを伝えるため、15年ほど前までは、子供たちと海でイルカなどと遊ぶ海洋教室を全国で開催。その後、大病を患い泳げなくなったのをきっかけに、沖縄に移住。研究所を創設して浜辺のごみや漂流物などで本物そっくりのイルカやウミガメなど数多くの海洋生物ロボットを開発しました。子供からロボットを作ればと言われ、4年後に約束を果たしたのです。

 二度と泳げない体になった林所長は、泳ぐ車椅子を作るに至り、ついに障害者でも脳波操縦できる脳波感知型水中車椅子の開発にも成功したのです。さまざまな障害や難病によって海を体験できない子供たちに、自作の海洋生物ロボットを使って、長年病院などで慰問活動をしてきました。そして後継者の育成にも力を注いできました。

 アカウミガメの産卵から始まった映像は、「感動的で衝撃的なもの」(佐倉会長)に尽きるものでした。海や山がなくても、身体障害というハードルがあっても、海洋教育はやろうと思えばできる、という強烈なメッセージとなっています。これからは誰もが次世代ロボットを作れるように、本にまとめたいと述べました。

鹿児島県南さつま市の教育長事例発表
小中一貫坊津学園の特例教科「坊津学」

南さつま市の出口教育長

 続いて教育長事例発表が行われました。鹿児島県南さつま市の出口定昭教育長が、同市における「海洋教育」の取り組みとして、市立坊津学園の特例教科「坊津学」の実践を紹介しました。義務教育学校、小中一貫校として1~4年を前期ブロック、5~7年を中期、8~9年を後期で区切る「4・3・2制」。9年間で系統的に坊津学を学習するよう、各学年でユニークな海洋教育の実践例を紹介しました。

 例えば8年生は、杉の葉をイカの産卵床にする「イカ柴」を作り、生態などをまとめます。 さらに海洋教育の研究では、地元関係機関との連携としてB&Gを利用しているほか、地域の博物館「輝津館」や鹿児島水産高校とつながり、東京大学アライアンス海洋教育研究センターとの連携を挙げました。

神奈川県三浦市の先進事例発表
教員が当たり前に海洋教育へ取り組む

三浦市教育委員会の高梨指導主事

 続いて先進事例発表として、海洋教育の地域展開について神奈川県三浦市教育委員会の高梨真一指導主事が行いました。市内のすべての学校が海に接する利点を生かした取り組みで、三浦の海洋教育が目指すのは、日常の教育活動の一環として当然に海洋教育に取り組む教員の姿と社会をたくましく生き抜く人材の育成だとしています。

 平成24年3月の市と地元にある東京大学三崎臨海実験所とで交わした海洋教育の連携協定が始まりです。地域を見つめることが海の学びにつながると指摘。海洋教育推進の環境づくりとして、校長、教職員、子供たちの対象別に対応を、組織的・計画的に推進して、3カ年で全校に拡大してきました。

 その一方で、平成16年度から「みうら学」を推進。ユネスコの世界無形文化遺産に登録された踊り「チャッキラコ」などを例に、自然、産業、地理、暮らしを学ぶものです。ここでも多彩な海洋教育を実践しています。

 これらを推進をする中で、教員問題や理科以外に広がらないという課題が浮き彫りになりました。克服に向けて先輩教員と後輩授業の公開制度化、みうら学・海洋教育研究所を設立によるカリキュラム開発、人材育成、器材整備など、「子供たちの目の輝きが変わる」取り組みを紹介しました。その一環で平成28年12月に東京大学アライアンス海洋教育研究センターとの連携により、活動がさらに拡がるようになったと強調しました。

  • 質疑応答

  • 会場の様子

積極的な実践にB&G事業の活用を

 財団から海洋教育への取り組みについて説明しました。冒頭水辺の安全教室のなかで、今年10月に都内の河川で起きた小学生の友人の落水で、一命をとりとめた実例を紹介しました。小学生が1カ月前にB&G教室で学習したことを思い出し、自ら飛び込まずに大声で救助を要請した現場での対応だったと指摘しました。

 これまで水辺の安全教室に参加したのは累計で34万人。 浜辺から徐々に海に近づく形になる「砂ASOBeach」は、海レク体験者を増やすため本年度初めて開かれました。海洋教育事業の推進として「東京湾海洋体験アカデミー」の紹介があり、積極的な海洋教育実践にB&G事業の活用を強調しました。

 この後、佐倉会長から会議初日を振り返える概括的なコメントがあり、終了しました。

次のページ:二日目 基調講演「海洋教育の重要性とカリキュラム開発」
講師 東京大学海洋アライアンス特任教授 日置光久氏など