水辺を学ぶ ヨット講座
小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督
Lesson6 タッキング(風上航での方向転換)
クローズホールドで走りながら方向転換する手順について学びます。
(1)ポートとスターボード
レッスン2で紹介したように、ヨットは風上の目的地に向かってジグザグに進んでいきます。クローズホールドで進む方向を変えることをタッキングといい、セールを展開する舷を変える動作を行います。
ちなみに、ヨットを含め船の左舷をポート、右舷をスターボードと呼び、左舷を開放して右舷にセールを展開する状態をポート・タックといい、その逆をスターボード・タックといいます。
タッキングとは、ポート・タックからスターボード・タック、あるいはその逆の動作となります。
ヨットの舷とセールの関係
(2)タッキングの手順
次のような手順でタッキングを行います。イラストを見ながら全体的な動きの流れを理解してください。
1:ティラーをゆっくり押してメインシートを引きます。
2:艇が風上に向かって回りだし、それに伴ってブームとセールが艇の中央に戻ってきます。
3:ブーム(セール)が、それまでとは反対側の舷に移動。乗員は頭を下げてブームをくぐります。
4:新しい舷にセールが移って風をはらみます。乗員は、それまでとは反対側のデッキに座ってティラーを正対(真っ直ぐの位置)に戻します。
5:風の強さや方向に合わせてメインシートの開き具合を調整しながら、新しいコースを定めます。
オレンジ色のブイを目安に、タッキングの動作に入ろうとしてティラーエクステンションを押し始めたところ。
マストトップ(頂点)に取り付けた風見のリボンは、これまで斜め前方から流れていましたが、風上に向かって舵が切られると、艇の正面から流れるようになっていきます。
風上に向かって舵が切られ、ブームが艇の中央でに移動してきたため、インストラクターと一緒に乗った乗員が、頭を下げてブームを避けようとしています。このとき、バランスを崩すと、後方の艇のように横転してしまいます。
(3)タッキングの実践
周囲に障害物や他船がいないか確認した後、タッキングの準備に入ります。慣れないうちは、頭のなかで動作をシミュレーションしてから実際の行動に入ると良いでしょう。舵を中央の位置にキープしながら、メインシートを詰めていきますが、ブロー(突風)が来たり、バウに波が当たってスピードが落ちたりしたときは避け、一定の風と波を受けながらスピードを保っているときを狙ってタッキングに移ってください。
視点の異なる動画を3点用意しましたので、見比べながらタッキングのイメージを組み立ててください。
1:メインシートを詰めながら、ティラーエクステンションをゆっくり押してバウを風上に向けていきます。
2:ブームが艇の中央に移動してきますので、頭を下げて体を反対舷に移動させます。なお、体の移動とともにティラーエクステンションを握り直します。
3:ブームが反対舷に移動するとともに、舵を中央の位置に戻し、詰めていたメインシートを緩めながらセールに風をはらませます。
4:新しい風を受けて艇が直進し始めたら、艇がヒール(傾斜)する度合いに合わせてハイクアウトに移り、艇のバランスを保ちながら次のタッキングポイントへ向かいます。
(4)タッキングにおける失速
タッキングを成功させるためには、バウをそれまでとは反対側のタック(ポート・サイド、あるいはスターボード・サイド)へしっかり回転させることが必要です。回転の勢いが十分でないと、バウが風上に向いた時点でセールが風をはらまなくなって失速してしまいます(ストールと言います)。
また、タッキングの最中にメインシートを緩めてしまうとセールは風に流されるだけになって、ストールしてしまいます。