水辺を学ぶ ヨット講座
小松一憲のヨット講座 オリンピック出場4回、2004年アテネオリンピック日本選手団監督
Lesson3 シングルハンドディンギーの艤装(仕組み)
シングルハンドディンギー(1人乗り小型ヨット)を例に、おもな各部艤装の役割について学んでみましょう。
ここで取り上げるのはミニシーホッパーという艇種で、キャットリグ(1枚帆)のシンプルな艤装が特徴です。
ヨットの主な各部名称・艤装
(1)ヨット(船舶)のおもな各部名称
おもな各部名称を覚えてください。これらは一般の船にも共通した名称です。
A:ハル(艇体)
B:バウ(船首)
C:スターン(船尾)
D:コクピット(操船する場所)
E:デッキ(甲板)
(2)ヨットのおもな艤装
シーホッパーに使われるおもな艤装の名称と、それらが艇のどの部分にあるのか、見てみましょう。
1:セール(メインセール)
2:マスト
3:ブーム
4:メインシート
5:ブームバング
6:ティラー、ティラーエクステンション
7:ラダー
8:センターボード
(3)おもな艤装の役割
各艤装の役割について学びましょう。
1:セール(メインセール)
風を動力に変える、いわばヨットのメインエンジンです。シーホッパーのセールは、端が筒状になっていて、写真のようにマストにカバーをかけるような格好で取り付けます。
2:マスト
セールが取り付けられる支柱です。大きなヨットになるとワイヤーを張って支えますが、シーホッパーのマストはホールに差し込むだけで簡単に立てることができます。
3:ブーム
セールの底辺(フットと呼びます)を支える支柱で、セールの両端を結んでセールとともに動きます。写真は、ブームにセールの端を結んでいるところです。
4:メインシート
ブーム(メインセール)の動きを調整するためのロープ艤装です。セールをコントロールするためのロープはシートと呼ばれ、シートを引くとブームはコクピット中央に移動します。
メインセールの開き具合を調整する、すなわちメインセールに当たる風の量を調整することになりますので、アクセルのような役割を担うと考えてください。
5:ブームバング
風にあおられてブームが持ち上がらないように、ブームのテンション(張り具合)を調整するためのロープ艤装です。テンションは、コントロールロープによって調整できます。
6:ティラー、ティラーエクステンション
舵を動かすための舵柄(だへい)をティラーといい、ティラーから離れた場所でも舵を切ることができる、ティラーエクステンションと呼ばれる延長棒も設置されます。
ティラーやティラーエクステンションを押し出すと、ラダーはその反対方向に動きます。
7:ラダー
舵のことをラダーと言います。なお、ラダーとティラー、そして艇が進む方向の関係については、イラストを見てください。ティラーを向けた反対方向に艇が進みます。
また、陸に上がっているとき、ラダーは写真のように跳ね上げた状態になっており(写真A)、艇が水面に浮かんでからコントロールロープ (写真B) を緩めてラダーを水中に下ろします。
ラダー、ティラーと艇が進む方向の関係
8:センターボード
船底に差し込んで艇の横流れを抑える板のことをセンターボードと言います(写真A)。
陸に上がっているときはコクピット内に収納されており、艇が水面に浮かんでから水中に下ろします(写真B)。
(4)覚えるより慣れろ!
ヨットには、さまざまな用語があります。ここに紹介したものを含め、一度に暗記して覚えようとしても無理がありますから、それぞれ実際に練習しながら覚えていくようにしてください。
マストの立て方やラダーの取り付け方など、艤装の手順についても同様です。まずは、ここに紹介したおもな艤装の役割を知り、そのうえでインストラクターから各艤装の取り付け手順を学ぶようにしてください。実際に経験しながらヨットの仕組みを全体的に理解していくことが大切です。