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No.006:静岡県掛川市 松井 三郎 市長 海洋センターを多目的化し、市民に健康と活力を提供
2017.08.01 UP

プロフィール 松井 三郎(まつい さぶろう)市長
1946年生まれ。70歳。掛川市青葉台に在住。
掛川西高校 卒業
早稲田大学政治経済学部政治学科 卒業
静岡県 勤務
旧大須賀町 出向
旧大須賀町助役 就任
静岡県 帰任
静岡県議会議員 当選(当選2回5年9カ月間)
掛川市長 当選(当選3回:3期目)



前編:海洋センターの有効利用で「生涯お達者市民」を増やす!

掛川市では、「健康・子育て日本一」を目指し、健康寿命のさらなる延伸を図り、高齢者の「お達者度」を向上させるため、かけがわ「生涯お達者市民」推進プロジェクトを進めています。「お達者度」とは、静岡県独自の健康指標で、65歳からの平均自立期間をいいます。その年数が高いほど、健康で過ごす期間が長くなることから、市では、健康長寿の三要素である「食生活」「運動」「社会参加」の重要性を市民にPRし、市民総ぐるみで取り組んでいます。また、スポーツ振興や文化交流、国際交流などにも積極的に推進し、「未来志向エネルギー」を次世代につないでいます。

- 市長のスポーツ振興への思いについて、お聞かせください -

 スポーツの振興は、健康の維持増進に結び付くため、重要性が高いものと考えます。市民がスポーツへ参加する動機付けとして、また、市民の多様なニーズに対応していくためにも、海洋性スポーツは重要であると考え、現在、市でも推進しています。毎年1月に東京の笹川記念会館で開催される「B&Gサミット」では、B&G財団の方々の様々なお話を聞き、自治体の特色を生かした諸活動を参考にしています。

 特に、日本財団の笹川会長のお話で、以前は、「海洋スポーツ振興」のため、施設を役立てていただくことが主旨でしたが、最近は、地域振興のために、今ある施設を多目的な活動に有効に役立てていただきたいとお話を伺っています。掛川市は、ちょうど旧自治体単位で三箇所の海洋センターを所持していますので、これらを効果的に利用することで『生涯お達者市民が大勢いるまち』につなげ、「健康・子育て日本一」の実現を目指しています。

 「生涯お達者市民」は「子どもから高齢者まで生涯にわたり、健康で生きがいをもち、自立して生活を送る市民」をいい、「運動」、「食生活」、「社会参加」の三つを中心に、健康づくりのスポーツ推進を市民に呼びかけています。

 スポーツに関連して、掛川市はB&Gの海洋センターを効率よく活用させていただき、お子さんから高齢者まで幅広い方々に、施設を有効活用していただきたいと思っています。その結果、生涯お達者市民が多い掛川市となるようにしていきたいと考えています。今後、施設利用を促進するキャンペーンを展開する中で、海洋センターを利用したイベントも、開催していきたいと考えています。

- 市民にとって、海洋センターはどのような存在ですか? -

 市の「生涯お達者市民を増やす」という点で、その実現のために、具体的には「運動、食生活及び社会参加」の3要素を推進していくことに尽きると思います。今まで海洋センターは、スポーツに非常に熱心な若い人たちが集う場でしたが、軽い運動をしながらでも健康長寿のためのこれら3要素を実践できます。一定の年齢を重ねた人も、海洋センターで、運動を含め多目的な活動が実現できるようにと、工夫を凝らしています。今後、掛川市では、『生涯お達者市民が大勢いるまち』を目指して全庁体制で活動を進めていく所存です。

スポーツ振興や交流で「未来志向エネルギー」を創出

- ラグビーワールドカップ開催への思いをお聞かせください -

 ラグビーワールドカップは、五輪、サッカーW杯と同様に、世界3大スポーツイベントとして世界中が注目する大会であり、スポーツ振興に寄与するものと考えています。エコパで世界最高峰の試合が開催されることで、次世代を担う子供達に世界観を広げ、夢と希望を与えるとともに、スポーツを通した教育文化が育まれることを期待しています。私は、いわゆるラグビーのスクラム(セットプレー)が大好きで、学生の頃に、試合の応援に行きましたが、当時からスクラムを組む時の応援は、「いけー!」と、腹の下から怒鳴るような感じで熱血感がありました。今は、スクラムを組むことが少なくなり、少し寂しい気がしますが、ラグビーの試合においてはどんなに選手の体型が小柄でも、低い姿勢のスクラムで踏ん張れるという面白さがあります。

- 今後の市の文化交流についてお聞かせください -

 こうした国際的なイベントを起爆剤として、今後は、文化・観光・産業・国際交流など、様々な分野での交流人口の拡大が期待できると思います。その中で、掛川市は、「エコパスタジアムへの玄関口」となります。予選プールで3試合と決勝トーナメント1試合が開催されると思われます。大会本番には、海外チームの選手や観戦者が来日するため、市として丁寧なおもてなしをすることで、海外との文化交流も着実に進められるようにしたいと思っています。そこで市では、こうした交流のチャンスを活かし、例えば「学校単位で応援する国を選び、その国を皆で応援する」などのアイデアを出すほか、昨年立ち上げた「おもてなし委員会」において、市民の方々と一緒に対応を検討していきたいと考えています。学校のみならず、まちづくり協議会なども巻き込み、おもてなしに参加していただけたら楽しいですね。

 試合は、9月開催ですが、選手の方々には、試合以外にも市の催事に参加して頂き、また掛川市に宿泊して頂くことで、ぜひ楽しい思い出を作っていただきたい。そうした仕組み作りも課題の一つです。掛川市では、ラグビーのワールドカップとオリンピック、パラリンピックの3本柱を目標にし、元気、活力、そして未来志向のエネルギーを創出していきたいと考えています。市の取り組みとして、オリンピック・パラリンピックに向けては、トランポリン、アーチェリー、ビーチバレーのオリンピック事前キャンプ地の誘致活動をしています。大東ビーチスポーツ公園やつま恋等は、全国大会や国体東海大会等の会場として使用している実績もあります。50年以上前の東京オリンピックが開催されたときのような、高度成長をもう一度、というわけにはいきませんが、これらが契機となり、市の活力に変えていきたいと思っています。

次世代につなぐ安心の絆「掛川潮騒の杜」

- 市の防災対策などで特色ある取り組みは何かございますか? -

 掛川市では、南海トラフ巨大地震により想定される最大クラス(レベル2)の津波による浸水被害が想定されています。そこで、"地震・津波による死亡者ゼロ"を目指し、最大クラスのレベル2津波に対応した高さに防潮堤を嵩上げし、クロマツや広葉樹を植栽する海岸防災林強化事業「掛川モデル」を、平成26年度より着手しました。市の取り組みとして、 盛土や植樹などの工事から維持管理までを、市民・企業との協働と、国や県などの事業との連携、協力により実施し、次代を担う若者や子どもたちが集う「掛川潮騒の杜」づくりを推進しています。この際、協働事業の一つとしてB&G「海を守る植樹教育事業」を実施しました。それは、どんぐりの実を拾い、苗を育て、植樹を行う「体験型の環境教育」を行うことを特徴としており、海洋センター所在3地域(掛川・大東・大須賀地域)の3学校(第二小・千浜小・横須賀小)において現在、実施されております。


※後編に続きます

(文:宮嵜 秀一

後編:希望が見えるまち・誰もが住みたくなるまち掛川


静岡県掛川市にある総合体育施設、東遠カルチャーパーク総合体育館さんりーなに隣接する掛川市B&G海洋センター。体育館の他、北側には艇庫があり大池調整池を使用した海洋性レクリエーションが楽しめます。
体育館は一般貸出可能。艇庫は体験会・教室・イベントを行っております。

大須賀海洋センタープールは、長さ25メートルのメインプールと、子供専用の小さなプールを兼ね備えており、7月~8月の間ご利用いただけます。(詳細は施設にお問い合わせください)

大東海洋センターは、市を流れる菊川の河口にあります。総合運動場(野球場、多目的広場、テニスコート、わんぱく広場、プール)に隣接しており、周辺には地中海風の温泉リゾート施設「大東温泉シートピア」や菊川に架る「潮騒橋」もあります。また、南に広がる遠州灘ではマリンスポーツを楽しむ若者で賑わいをみせます。