連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 102

カヌーを通じて、たくさんの親子に絆を深めてもらいたい

2014.07.16 UP

~地域に根付いたカヌー活動に励む、B&G宮崎シーライオン海洋クラブ~

今年6月8日(日)、宮崎市の海浜公園で「B&G杯 第2回サンビーチ 一ッ葉 カヌーアスロン大会」が、B&G宮崎シーライオン海洋クラブの主催で開催されました。カヌーとビーチランを組み合わせたこの大会を発案したのは、カヌーに魅せられて同海洋クラブを立ち上げた藏本政一さんでした。
「カヌーというよりも、カヌーに集う仲間の輪が大好き。大人と子供、親子みんなで海に出て楽しい時間を分かち合っていきたい」と語る藏本さん。カヌーアスロン大会をはじめとする、同海洋クラブのさまざまな取り組みについてご紹介します。

プロフィール
● 藏本 政一(くらもと まさかず)

1958年、生まれ。長崎県出身。海が好きで水産高校から大学水産学部に進学し、高校時代はカッター、大学時代はレガッタで活躍。卒業後は宮崎市に移り住んでシーカヤックを楽しむ傍ら、日南市の南郷B&G海洋クラブなどで子供たちにカヌーを指導。2012年には、地元の活動拠点としてB&G宮崎シーライオン海洋クラブを設立した。

● B&G宮崎シーライオン海洋クラブ

平成24年(2012年)1月、開設。宮崎市の海浜公園「サンビーチ・一ツ葉」の北ビーチを拠点にカヌー活動を展開するほか、バスやトラックにカヌーを積んで県内各地を移動しながらカヌー&キャンプなども実施。地元の小学生や修学旅行生を対象にした各種カヌー体験教室にも力を入れている。

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第3話海洋クラブの誕生

不安を抱えた申請

宮崎市の海浜公園『サンビーチ 一ッ葉』のビーチハウス(管理事務所)。海洋クラブのために、空いている部屋の一部を艇庫代わりに貸してくれました

 南郷B&G海洋センターのカヌー教室を手伝うようになったことを皮切りに、地元の公民館からも子供のカヌー教室を開いてほしいという要望を受けるようになった藏本さん。自分たちのシーライオンクラブも、当初はシーカヤックが好な大人の集まりでしたが、メンバーの子供たちが友だちを誘って遊びに来る機会が増えたので、子供用のカヌーが不足するようになりました。

 そのため、子供も乗れるカヌーを揃えていた半九レインボースポーツクラブ(宮崎市の総合型地域スポーツクラブ)にお願いして、必要な数のカヌーを貸してもらうようになりましたが、それでも限界がありました。

 そこで、藏本さんたちは南郷B&G海洋センターの勧めを受けてB&G海洋クラブの登録を検討。ところが、シーライオンクラブの艇庫に使っていた藏本さんの自宅倉庫は、海から30分の距離にあるため、「艇庫はできるだけ海に近いように」という海洋クラブの申請条件に合うかどうかが懸念されました。


登録が済んで2012年1月に誕生した「B&G宮崎シーライオン海洋クラブ」。同年5月には救助艇やカヌー、ライフジャケットなどの配備式が開かれました


 「道が渋滞すれば、海まで行くのにもっと時間がかかりますから、かなり気になりましたが、そこにちょうど良いタイミングでとてもうれしい話が舞い込みました。海洋クラブの活動拠点にしたいと思っていた、宮崎市の海浜公園『サンビーチ 一ッ葉』北ビーチにあるビーチハウス(管理事務所)が、空いている部屋の一部を艇庫代わりに貸してくれることになったのです」

 「サンビーチ 一ッ葉」北ビーチは、ディンギーやカヌー、ウインドサーフィンといった、非動力型マリンスポーツ専用の水面として宮崎市が整備した場所であり、ビーチハウスは海のすぐ目の前にありました。

 「ビーチハウスは艇庫として理想の場所にありましが、場所を借りて保管しておけるカヌーの数には限りがありました。ですから、もう1つの艇庫として海から離れた私の自宅倉庫も登録する必要がありました。そのため、不安を抱えながら、平成23年の秋に2つの艇庫を申請書に書いて審査の結果を待ちましたが、返事はなかなかいただけませんでした」

視察で得た確信

配備式で挨拶に立つ藏本さん。海洋クラブ代表として、さまざまな活動の先頭に立っていくことになりました

 審査の結果が届かなかったので、「やはり艇庫がネックになって却下されたのかも知れない」と、あきらめ半分の言葉を仲間と交わすようになってしまった藏本さん。ところが年の瀬のある日、1本の電話が入ってB&G財団の役員、担当者が視察に訪れることになりました。

 「役員の方にも来ていただいたので恐縮しましたが、実際に2つの艇庫を見ていただいたうえで、クラブ申請をした理由や活動の方針などを詳しく述べさせていただきました。すると、南郷B&G海洋センターで続けてきたカヌー教室や海の旬間イベントなどの協力活動を高く評価していただくとともに、『これからは、子供の活動、親子の活動に重点を置きたい』という抱負にも大きな理解を示してくださいました」

 視察に訪れた財団の役職員と意見を交わすなかで、自分たちがしてきことや、これからしたいと思っていることに間違いはないと確信を持つようになった藏本さん。やがて、年が明けると申請受理の知らせが皆のもとに届きました。

バランス感覚を養おう

 平成10年に発足して以来、さまざまな活動を重ねてきた「宮崎シーライオンクラブ」は、平成24年1月から「B&G宮崎シーライオン海洋クラブ」に改名して新たな歴史がスタート。5月に入ると、B&G財団から救助艇やカヌー、ライフジャケットなどの舟艇器材が貸与されて、海洋クラブ活動が本格的に展開されていきました。

 「海洋クラブが発足した当初、メンバーの数は大人と子供を合わせて約40人ほどでしたが、いまはさらに拡大しています。また、海洋クラブの活動に協力してくれる有志の皆さんも増えていて、ジェットスキークラブの人たちなどは、カヌーの大会やイベントのときに警戒監視役を買って出てくれています」

 海に出て喜ぶ子供の姿を見て、大人の賛同者が増えつつあると語る藏本さん。子供でも小さな頃から積極的にカヌーに乗せたいそうなので、イベントのときにジェットスキーで監視してくれる人がいれば心強い限りです。

 「子供でも3歳児ぐらいからカヌーに乗せてあげたいですね。なぜなら、カヌーに乗ることで知らないうちにバランス感覚が養われ、体の芯がしっかりしていくからです。幼い頃から体の芯が鍛えられていれば、将来、どんなスポーツをするにしても必ず役に立つと思います」

 カヌーのような不安定な乗り物だからこそ、それを乗りこなすことでバランス感覚が養えると語る藏本さん。5歳になる長男、汐音(しおん)君を含め、クラブにやってくる幼い子供たちは、たくさんの大人に見守られながら、さまざまなカヌーの活動に励んでいきました。(※続きます)

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藏本さんの自宅にある倉庫を改造した艇庫にも「B&G宮崎シーライオン海洋クラブ」の看板が掲げられ、活動拠点の1つとして機能していくことになりました

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『サンビーチ 一ッ葉』の北ビーチでパドルの使い方を子供たちに教える藏本さん。カヌーを通じて、より多くの子供たちに体のバランス感覚を養ってもらいたいと語ります