No. 102
カヌーを通じて、たくさんの親子に絆を深めてもらいたい


2014.07.02 UP
~地域に根付いたカヌー活動に励む、B&G宮崎シーライオン海洋クラブ~
今年6月8日(日)、宮崎市の海浜公園で「B&G杯 第2回サンビーチ 一ッ葉 カヌーアスロン大会」が、B&G宮崎シーライオン海洋クラブの主催で開催されました。カヌーとビーチランを組み合わせたこの大会を発案したのは、カヌーに魅せられて同海洋クラブを立ち上げた藏本政一さんでした。
「カヌーというよりも、カヌーに集う仲間の輪が大好き。大人と子供、親子みんなで海に出て楽しい時間を分かち合っていきたい」と語る藏本さん。カヌーアスロン大会をはじめとする、同海洋クラブのさまざまな取り組みについてご紹介します。
プロフィール
- ● 藏本 政一(くらもと まさかず)
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1958年、生まれ。長崎県出身。海が好きで水産高校から大学水産学部に進学し、高校時代はカッター、大学時代はレガッタで活躍。卒業後は宮崎市に移り住んでシーカヤックを楽しむ傍ら、日南市の南郷B&G海洋クラブなどで子供たちにカヌーを指導。2012年には、地元の活動拠点としてB&G宮崎シーライオン海洋クラブを設立した。
- ● B&G宮崎シーライオン海洋クラブ
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平成24年(2012年)1月、開設。宮崎市の海浜公園「サンビーチ・一ツ葉」の北ビーチを拠点にカヌー活動を展開するほか、バスやトラックにカヌーを積んで県内各地を移動しながらカヌー&キャンプなども実施。地元の小学生や修学旅行生を対象にした各種カヌー体験教室にも力を入れている。

第1話前を向いて走りたい!
海との再会

カッターの練習に励む水産高校時代の藏本さん。白い帽子をかぶって艇の中央に座っています

水産高校時代は実習船に乗ってハワイに行きました。写真はホノルルから帰国の途に着いたときのスナップです
長崎県の対馬で生まれ育った藏本政一さん。風光明媚な島で暮らしたこともあって、子供の頃から海が大好きで、鳥取県の水産高校を経て長崎大学水産学部に進学。高校時代には、実習船に乗り込んでマグロ漁を習いながら日本とハワイを往復したこともありました。
また、水産関係の勉強を続けながら高校時代にはカッター、大学ではボートの競技活動に力を入れ、海のスポーツも満喫。社会人になってからは、仕事に追われて海から離れた時期もありましたが、宮崎市に移り住んだある日、ふと海に親しむ気持ちが蘇りました。
「宮崎に移り住んだのは、起伏が激しくて坂の多い長崎と違って平地が広がる宮崎の風景に解放感を感じたからでした」
大学を卒業した後、28歳のときに宮崎の広々とした土地に魅せられ、長崎から転居して地元の企業に就職した藏本さん。しばらくは仕事に没頭しましたが、30代後半になって時間的な余裕が生まれたある日、学生時代を思い出して海が恋しくなりました。
「最初はモーターボートを買って釣りを楽しもうと思いましたが、調べてみるとマリーナに保管して維持する手間が大変であることが分かりました。そこで、もっと手軽に楽しめる遊びがないだろうかと探しているうちに、シーカヤックを紹介したテレビ番組を見て、『これはいい』と思いました。シーカヤックなら、マリーナに置かなくてもクルマに積んでどこにも行けるし、1人で気ままに釣りも楽しめます」
テレビを見ながら、シーカヤックを手に入れた場合の楽しい光景を次々に思い浮かべた藏本さん。すぐに地元のカヌーショップに足を運び、店員の相談も受けずに自分の好みで選んだシーカヤックを衝動的に購入。誰の助けも借りずに、勝手に自分で海に出ようとしましたが、何度も波にもまれて思うように進みませんでした。
「学生時代に漕艇をしていたこともあって、最初はカヌーを甘くみてしまいました。『シーカヤックなんて、すぐに何とかなる』と勝手に思ったのですが、パドルさばきもままならず、バランスを崩して沈を繰り返してしまいました(笑)」
旅する楽しさ
練習を重ねて何とかシーカヤックに乗れるようになると、藏本さんはカヌーショップに集まる常連のお客さんたちと仲良くなり、やがて一緒に海のツーリングを楽しむようになっていきました。
「お弁当や飲み物を艇に積んで仲間と一緒に海を散策し、陸からは行くことのできない入江に上陸して、昼食を楽しむ。そんな遊びに魅せられていきました。カヌーは前を向いて走りますから、後ろを向いて走るカッターやボートに比べて目に入る景色がまるで違います。また、シーカヤックで釣りを楽しむことも流行りはじめていたので、私もシーカヤック用の短めの竿を用意して、よく釣りに出掛けていきました」

大学時代は漕艇の選手として活躍。前から2番目が藏本さんです
学生時代の漕艇とはまったく異なるカヌーの世界に足を踏み入れ、あっという間に自分の生活の一部にした藏本さん。シーカヤックを始めたその年に、ショップの仲間と「宮崎シーライオンクラブ」を設立し、海のツーリングをはじめとする、さまざまな活動を始めていきました。
「シーライオンはトドの意味です。クラブに集まった仲間が皆、体重77キロ以上あったので、『トドの集まり』としたわけです(笑)。メンバーの多くは中高年で、皆、仕事のストレスを週末の海遊びで大いに発散していました」
子供たちの笑顔が見たい
頻繁に海に出るようになった藏本さんは、地元の漁師さんたちとも仲良くなっていき、クラブ活動が安心して行えるように、漁師さんから観天望気(雲や風の自然の変化を読んで気象や海象を予想する知恵)を学んで、海に出る際に活かしていきました。
また、活動を始めて何年かすると、クラブ仲間の知り合いを通じて県の南部にある日南市南郷B&G海洋センターを紹介され、クラブの有志が海洋センター、クラブに出向いて子供たちにカヌーを教えるようになっていきました。
「初めはカヌー教室だけでしたが、当時は海の日ができたことを祝う"海の旬間イベント"が盛んに行われていたこともあって、私たちもこの時期になると海洋センター、クラブの子供たちをバナナボートなどに乗せてあげるようになっていきました」
多いときには、日帰りのイベントで100人ぐらいの子供たちをバナナボートやカヌーに乗せてあげたと振り返る藏本さん。子供たちの喜ぶ笑顔が忘れられず、「また今年もやろう」という声がクラブ仲間の合言葉になっていきました。(※続きます)

シーカヤックに出合ってからは、海のツーリングに熱中。旅先の浜辺ではキャンプを楽しみました

「奄美シーカヤックマラソン in 加計呂麻」の2000年大会に出場したときの藏本さん。クルマに愛艇を積んで、どこにでも出掛けていきました