No. 99
B&G指導員親子が獲得した、OP級世界選手権大会へのチケット
2014.04.23 UP
二人三脚でヨットの頂点をめざす、B&G時津海洋クラブの尾道さん親子
OP級ヨットの日本代表チームに入るためには、数々の国内大会で上位の成績を収めたうえ、全日本選手権大会や最終選考会レースを勝ち抜かねばなりません。
2014年度の日本代表チームを決める最終選考会レースは昨年12月に別府市で実施され、幼い頃からアドバンスト・インストラクターの父、輝寿さんの指導を受けながら二人三脚で練習に励んできたB&G時津海洋クラブの尾道佳諭君(中2)が準優勝を獲得。4位に入ったB&G兵庫ジュニア海洋クラブの藤原達人君(中2)とともに、今年10月にアルゼンチンで開催される2014年度 OP級ヨット世界選手権大会に出場する日本代表チームに選抜されました。
今回は、頂点の舞台に立ったら「少しでも上位をめざしたい!」と意欲を語る尾道佳諭君と、その活躍をサポートし続けるB&G指導員、輝寿さん親子の活動に注目しました。
プロフィール
- ● 尾道輝寿(おのみち てるひさ)さん
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昭和50年(1975年)生まれ。長崎県時津町出身。中学1年生のときからB&G時津海洋クラブでヨットを始め、大学を出ると町役場に就職。アドバンスト・インストラクター資格を取得して海洋センターに5年間勤務し、以後、別の部署に異動してからも海洋クラブで子供たちのヨット活動を指導し続けている。
- ● 尾道佳諭(おのみち けいと)くん
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平成11年(1999年)生まれ。長崎県時津町出身。小学1年生のときから、父、輝寿さんの指導を受けてヨットを始め、小学2年生でB&G OP級西日本大会Cクラス優勝。以後、数々の国内大会で頭角を現し、昨年はヨーロッパ選手権にも出場。今年は10月にアルゼンチンで開催される世界選手権大会への出場が決まっている。
- ● B&G時津海洋クラブ
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平成元年(1989年)、時津町B&G海洋センターの設立に併せて活動を開始。体育館の隣に建設された艇庫を拠点に、大村湾でヨットやカヌーの練習に励んでおり、会員は国体などの全国大会に積極的に出場している。

第4話初めての国際舞台
大切な仲間の輪

多くの参加艇が並ぶB&G OP級ヨット西日本大会の会場で、スタート準備に励む小学4年生当時の佳諭君(3186番のヨット)。この後から、OP級全日本選手権大会をはじめとする、さまざまな大会に挑んでいきました
小学6年生のときに出場したOP級全日本選手権大会で小学生の部3位に入り、日本代表メンバーを決める2次選考会レースの出場権を手にした佳諭君。残念ながら結果は振るいませんでしたが、ヨットをやめたいと悩んだときのことを考えれば大きな収穫となりました。
「いろいろな大会に出るようになると、たとえ成績が良くなくてもレースを通じて友だちがたくさんできるようになって、しだいにヨットが面白くなっていきました」
数え切れないほど大勢のヨット仲間ができたと語る佳諭君。仲良くなった子が次の大会に出ることが分かると、自分も出たくなって練習にも力が入っていきました。
「大会に出る機会が多くなり、それに伴ってレース会場で親しくなる友だちの数が増えていくと、以前のような『ヨットをやめたい』といった消極的な言葉は一切出なくなりました」
そう振り返る父の輝寿さん。気がつけば、佳諭君はOP級のさまざまな大会の常連選手となって、名前も知られるようになっていきました。
「OP級では小学生も中学生も一緒にレースを行うので、体格の大きな見ず知らずの中学生選手がひしめくなかでは、小さな小学生選手は委縮しがちです。

初めての国際舞台、ハンガリーで行われた2013 OP級ヨーロッパ選手権大会でのスタートシーン。海外の強豪と競り合いながら貴重な経験を積みました(写真提供:尾道輝寿さん)
しかし、その緊張を何度となく経験していくなかで、大きな中学生選手から一度でも声を掛けてもらえたら、それだけで仲間の輪ができて委縮する気持ちが解けていきます。
ですから、県外に出てステップアップできるかどうかは、他の選手と顔見知りになれるかどうかが大きな鍵を握ると思います」
ライバルたちと顔見知りになって、やっと競い合う舞台のスタートラインに立つことができると語る輝寿さん。子供の世界とはいえ、知らない選手がたくさんいるなかに飛び込んで仲良くなることが大切で、その壁を乗り越えながら選手として成長していくそうです。
海外選手との交流
友だちを作りながら、さまざまな大会に出て経験を積んでいった佳諭君。中学に上がった昨年には、念願の日本代表チームに選抜され、ハンガリーで開催された2013 OP級ヨーロッパ選手権大会に出場しました。
「ジャパンのユニフォームを着たときは、自分の力でここまで来たことを実感して、とてもうれしかったです」
日の丸が貼られたジャケットに特別な重さを感じたという佳諭君。ヨーロッパ遠征には父の輝寿さんも同行し、親子で初めての国際舞台に臨みました。
「レース自体は総合81位と不本意な結果で終わってしまいましたが、毎日、レベルの高いレースが行われてワクワクしました」
海外トップクラスの選手たちとの競り合いは、とても挑戦意欲を掻き立てられたと語る佳諭君。レース以外でも、積極的に海外選手の輪のなかに入っていきました。
「英語を使うのは初めてで、思うようにはしゃべれませんでしたが、単語を並べて何とか気持ちを伝えました。同じOP級の選手としてお互いに興味があるためか、言いたいことや聞きたいことは何となく通じていたようでした」
大会期間中、言葉を交わした海外選手は100人を下らなかったと振り返る佳諭君。ウェアや鉢巻などを交換しながら仲良くなると、宿泊先にあったビリヤードやトランポリンで一緒に遊びながら交流を深めました。
「レースは大きな湖で行われ、会場となったマリーナ周辺が観光地として整備されていたので、競技を離れると気分的にリラックスできました。サッカーができる広場もあったので、異なる国の子供同士が1つのボールを蹴り合って、よく遊んでいました」
ハイレベルなレースもさることながら、親子で過ごした湖のひとときは良い思い出になったと語る輝寿さん。また、海外の強豪と腕を競ったことが刺激になったのか、帰国してからの佳諭君のレース運びには、たくましさが増していきました。(※最終回に続きます)

日本代表選手として2013 OP級ヨーロッパ選手権大会を戦う佳諭君。慣れない英語を駆使して海外の友だちもできました(写真提供:尾道輝寿さん)

2013 OP級ヨーロッパ選手権大会の後には、全日本選手権大会で準優勝を獲得。「平成25年度 長崎県スポーツ表彰」を受賞しました(右端)