連載企画

 

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 97

元気な話題を、どんどん発信していきたい!


2014.02.27 UP

B&G広報大賞で全部門入賞に輝いた、雲南市加茂B&G海洋センターの活動

積極的な広報活動を通じてB&Gプランの普及に努めた海洋センター・海洋クラブを、毎年表彰する「B&G広報大賞」。2013年度は全国から2,140件もの報道作品が寄せられ、「加茂B&Gレスリングクラブ」の活動を紹介した「テレビの部」を筆頭に「新聞の部」や「地域広報の部」など全部門で優秀賞に選ばれた、雲南市加茂B&G海洋センター(島根県)が大賞に輝きました。
常時、19社のメディアにプレスリリースを配信している同センター。学社協働で独自のキャリア教育を進める同市教育委員会の取り組みを含め、その積極的な活動の様子を拝見させていただきました。

プロフィール
● 雲南市加茂B&G海洋センター(島根県)

昭和62年(1987年)開設(体育館・上屋付きプール)。同市は平成16年に近隣6町村が合併して誕生。市内にはヤマタノオロチ伝説を生んだ斐伊川が流れ、遺跡や古墳も数多い。センターは、テニスコートや野球場、サッカー場などが整備されたスポーツの丘・ふれあいの丘に隣接。年間を通じてさまざまなスポーツが楽しめる環境が整っており、体育館で練習に励む「加茂B&Gレスリングクラブ」からは複数の全国チャンピオンが生まれている。

● 「雲南加茂B&G海洋センター新聞」制作スタッフ(現役・OB)

昭和62年の開設以来、同センターでは歴代の指導員が「B&G海洋センター新聞」を手作りで毎月発行し、広報活動を支えてきた。左から現制作担当の大谷麻美さん、制作担当OBで現センター所長の毛利智史さん、新聞の創刊に尽力した教育長の土江博昭さん、そして制作担当OBで現在、「加茂B&Gレスリングクラブ」の指導に励んでいる原 恵介さん。

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第4話(最終話)学校や行政、地域がひとつになって、子供たちを育てたい!

インタビュー: 島根県雲南市 教育委員会 土江博昭 教育長

 雲南市では、学校・家庭・地域・行政の協働を進めるシステムづくりに力を入れています。このなかでも、とりわけ学校教育と社会教育の協働が大きなテーマになっており、社会教育の観点から学校教育を支援する複数のコーディネーター制度が立ち上げられています。学校の教育現場に行政や地域住民が加わり、ともに手を携えながら子供たちを育てていくことめざすこの斬新な取り組みについて、同市の土江博昭 教育長にお話をうかがいました。

ともに必要な教育の両輪

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雲南市で学校教育と社会教育の協働を進める土江博昭 教育長。海洋センター事業にも開設当初から大きな関心を寄せ続けています

●学校教育と社会教育の協働をめざすうえで、学校を支援するコーディネーター制度を採用されているそうですが、この取り組みが生まれた経緯をお聞かせください。

 ―学校教育と社会教育を比較した場合、後者はキャンプやスポーツイベント事業などが入ってくるため、教育というよりも体験活動的なイメージで捉えがちな人も少なくありません。

 しかし、子供の成長を考えた場合、社会教育は学校教育と同じぐらい重要ですから、この2つの教育を両輪で行っていくことが大切です。そのためには、子育てに関わる人たちが社会教育も教育として大切であるという共通した認識を持ち、同じ目標に向かって進むためのシステムが必要です。

 そこで考えたのが、学校教育の現場に加わって両輪の輪の1つである社会教育活動を支援するコーディネーターを設けることでした。雲南市では平成18年から、教育委員会職員を「教育支援コーディネーター」として市内7つの中学校区それぞれに各1名、計7名を配置しています。

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読み聞かせの活動に励む地域コーディネーター。地域の力が明日を担う子供たちを育てます

●教育支援コーディネーターは、具体的にどのような支援を学校内で行うのですか。

 ―たとえば、バイオリンを弾きたい生徒が音楽部にいても、教えることができる先生が学校にいなければ活動できません。つまり、これでは各学校の部活は在籍する先生の得意分野に限られてしまうわけです。しかし、こうした問題も外部の人材を学校に入れることができれば解決しますから、誰が誰にお願いするのかコーディネート役がいれば話が進みます。

 また、校内にはイジメや不登校といった問題が日々出ますが、忙しい先生に代わって、ときには教育支援コーディネーターが家庭訪問をして聞き取りをするなど、いろいろな面で対処できるようになります。ですから、どのコーディネーターもデスクを職員室に置き、職員会議にも出て学校の諸事情を把握し理解することに努めています。

 こうしたことから、最初は「教育委員会から隠密が来た」などと学校内で揶揄されることもありましたが、学校が抱える諸問題が実際に解決していったので、いまでは「いてくれなければ困る」存在になっています。

ぶれてはいけない理念

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「夢」発見プログラムの一環で行った企業経営者の講演。「人生とは思い出を作ることなり」というテーマで、中学生に生きる喜びを語っていただきました

●平成20年からは、国が進める「学校支援地域本部事業」を委託して、地域の人材を学校に活用する「地域コーディネーター」を市内全小中学校(28校)に配置するようになりました。この制度はどのように運用しているのでしょうか

 ―地域コーディネーターは、児童への読み聞かせや盆踊りの指導といった課外活動を応援するボランティアの発掘や各学校への派遣調整、そしてボランティアになった人たちの人材バンク整備といった仕事を担います。生き生きとして輝いている大人と触れ合うことで、子供たちが意欲や自信、夢を抱く活動をコーディネートしてもらうわけです。

 その人選は各学校の校長先生に一任しており、公募もしていません。ですから、地域のなかで手を挙げる人もいれば、校長先生の依頼を受けてPTAが探す場合もありますし、校長先生の個人的な人脈で決めることもあります。

 また、このように学校サイドの裁量で決まる人事なので、教育委員会は任命して賃金を払うだけで、活動に関しては一切、口を出さないようにしています。

●教育支援コーディネーターとは、どのような関係になるのですか。

 ―教育支援コーディネーターは地域コーディネーターが活動しやすいように助言を行い、定期的な情報交換によって連携協力を図ります。前者は行政職員(教育委員会)、後者は基本的に地域住民ですから、行政や地域が手を取り合って学校を支援する、学社融合が推進されます。

●雲南市では、さらに平成22年から「社会教育コーディネーター」(教育委員会職員)を7つある中学校区内の拠点小学校に1名ずつ、計7名配置するようになりました。この仕組みはどのように機能しているのですか。

 ―先の2つのコーディネーターと比べると家庭や地域に焦点を置いた活動になり、学校外における体験活動の機会提供や、子供たちを支える大人の学習支援などを行いながら、「地域・家庭の教育力を高める社会教育の推進」をめざします。

 また、雲南市では、自立して生きていくために必要な意欲や態度、能力を身につけることを狙いに、「知育・徳育・体育」の調和の取れた発達を促すキャリア教育を、保育園、幼稚園から小中学校まで一貫して行っています。これは「夢」発見プログラムと名づけられており、生活リズムと食の関係や自然環境、歴史や文化、世の中の仕組みなどを学ぶ、さまざまなカリキュラムが組まれています。社会教育コーディネーターは教育支援コーディネーターとともに、こうした学習を実施していく牽引役となります。

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社会教育コーディネーターの養成研修。160時間のプログラムを終えてから、各学校に配属されます

●いろいろな学習をコーディネートしていくためには、相応の知識や指導力を伴うと思います。その点は、どのように対処されているのでしょうか。

 ―社会教育も大事な教育であるという理念がぶれてはいけなので、社会教育コーディネーターは160時間の養成プログラムを研修してから配属しています。学校教育も社会教育も、キャリア教育という大きな傘の下にあるのだと思います。その傘が傾かないように、2つの教育をバランスよく行いながら、明日を担う人づくりに励んでいきたいと考えています。

●学校教育と社会教育の協働に力を入れる雲南市の今後に大きな期待を寄せたいと思います。いろいろなお話、ありがとうございました。(完)