連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 88

体と頭を楽しく動かせば、たくさんの元気が沸いてくる

2013.05.29 UP

レクリエーションゲームの普及・指導に励む、東 正樹さん

37年間にわたって実施してきたB&G財団の体験クルーズ事業。その多くの航海に参加して、船上や寄港地で参加メンバーに楽しいレクリエーションゲームを提供してくれたのが、現在、(公財)日本レクリエーション協会専門委員を務めている東 正樹さんでした。
「レクリエーションゲームが人を元気づけ、元気が生きる力を育みます」と語る東さん。今年3月のラストクルーズに講師として乗船していただいた際に、これまでの振り返りを含めていろいろな話題をお聞きすることができました。

プロフィール
●東 正樹 (あずま まさき)さん

昭和25年(1950年)生まれ、三重県出身。大学で社会学や体育学を専攻しながら、ボランティア活動を通じてキャンプやレクリエーションゲームのノウハウを習得。卒業後は、東京都レクリエーション協会連盟(現:協会)の講師として、企業や学校などでレクリエーションゲームを指導するほか、B&G体験クルーズや指導者養成研修の講師としても活躍。TBSラジオ「全国こども電話相談室」の回答者や日本オリンピック委員会強化スタッフを務めるなど、幅広い活動を展開し続けている。
著書:「いちばんやさしいレクリエーションゲーム全集」(成美堂出版)ほか多数。

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第4話(最終回)ボランティアの輪を広めたい!

鬼は本当にいるの?

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ドッジボールの競技委員を務めた際、感想を求められた東さん。レクリエーション活動を通じてスポーツの普及にも励み、その豊富な経験から「全国子ども電話相談室」の回答者に選ばれました


 以前、東さんは11年間にわたって、子どもたちのさまざまな質問に即答するラジオ生番組、「全国子ども電話相談室」の回答者の1人として活躍しました。

 「番組には、実にさまざまな質問が寄せられました。私が答えたなかで、いまでもよく覚えているのは、『鬼は本当にいるんですか?』という質問でした」

 生番組なので、回答者はすぐに答えなければなりません。このとき東さんは、「あのねぇ、君が家で叱られたとき、叱ったお父さんやお母さんの顔が鬼に見えなかったかい?」と答え、番組終了後に「あれは楽しい回答だった」という感想の電話がたくさん寄せられました。

 「回答者は、番組が終わっても30分ぐらいはスタジオで待機させられました。というのも、感想の電話はさておき、『あの回答はおかしい』といった疑問を投かけてくる人もいて、場合によっては対応しなければならなかったからです」

画像子どもたちの視線を一手に受けながらレクリエーションの指導を行う東さん。現場で養った即応力が、「全国子ども電話相談室」でも役立ちました

 そのため、番組のある日は朝から気が気ではなかったそうですが、子どもが考えるいろいろな質問に接することで、ずいぶんと頭の体操になったそうです。

 「すぐに答えられない場合もよくありましたが、そんなときはゲスト回答者とチームワークで対応することもありました。

 たとえば、野球選手のゲスト回答者を指名して野球の歴史に関する質問があったとしましょう。そんなときは、野球選手の回答者に『そうか、君も野球が大好きか。いつも、どこを守っているの?』、『へえー、サードなんだ。打順は何番?』といったやり取りをしばらくしてもらい、その間に私のようなレギュラー回答者が答えを調べてメモを渡します。

 そこで、野球選手の回答者が、『ところで、さっきの質問なんだけどね』といって答えを言うわけです」

 ラジオを聞いていて、確かにそのようなやり取りがよくありました。単に調べた答えを教えるのではなく、指名したゲストの野球選手に答えてもらいたい子どもの気持ちを大切にしたところに、この番組の人気の秘密があったのではないかと思います。

皆でスポーツを盛り上げよう

 レクリエーションを柱に、さまざまな仕事に携わってきた東さん。最近はスポーツボランティアを育てる活動に力を入れています。

 「スポーツが好きな人はたくさんいますから、スポーツのイベントをする際にその人たちの力を借りない手はありません。会場の整理や入場の受付などをしてくれたら、選手や役員は競技に集中できるようになるし、ボランティアの人たちも仕事の合間に競技を見学することができるので、お互いにとってプラスです」

 現在、250人のボランティア組織を束ねながら、ある駅伝大会の運営を担っている東さん。若い人はもちろん、中高年の人たちにも、どんどんボランティアの輪に参加してほしいと語ります。社会に関わり続ける意識が、生きがいにつながっていくからそうです。

 「東京国際マラソンのボランティアで荷物係を務めたある中高年の人は、スタッフとして登録されたIDカードで会場のいろいろな場所に行き、都知事の傍に立つこともできたといって喜んでいました。当分の間、この人はそんな話題で楽しめることと思います」

 人の役に立って自分も楽しい体験ができれば、次の機会にも手を挙げてくれるようになると指摘する東さん。こうしてスポーツボランティアの輪が広まれば、スポーツそのものの普及につながります。現在、東さんは人の紹介を受けて新体操日本代表チームの統括マネージャーも務めており、選手やその家族など競技に関わるさまざまな人たちと交流を深めています。

 「統括マネージャーと言えば響きは良いですが、資金集めから機関誌の発行まであらゆる仕事を行っています。仕事自体は大変ですが、チームを支えることにやりがいを感じます」

 クリスマスにも関わらず厳しい練習が続けられているときに、サンタクロースの姿で激励に訪れて選手たちの緊張をほぐしたこともある東さん。どんなときでも、レクリエーション指導者の経験を活かして周囲を和ませていきたいと語っていました。(※完)

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転倒・寝たきり予防プログラム モデルセンター講習会で「高齢者のためのレクリエーション」を指導する東さん。高齢者こそ元気を出して社会に関わってほしいと語ります

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ロンドンオリンピック新体操日本代表チーム「フェアリージャパン」と東さん。現在は、次のリオデジャネイロ大会をめざして選手たちの活動を支え続けています