連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 88

体と頭を楽しく動かせば、たくさんの元気が沸いてくる

2013.05.15 UP

レクリエーションゲームの普及・指導に励む、東 正樹さん

37年間にわたって実施してきたB&G財団の体験クルーズ事業。その多くの航海に参加して、船上や寄港地で参加メンバーに楽しいレクリエーションゲームを提供してくれたのが、現在、(公財)日本レクリエーション協会専門委員を務めている東 正樹さんでした。
「レクリエーションゲームが人を元気づけ、元気が生きる力を育みます」と語る東さん。今年3月のラストクルーズに講師として乗船していただいた際に、これまでの振り返りを含めていろいろな話題をお聞きすることができました。

プロフィール
●東 正樹 (あずま まさき)さん

昭和25年(1950年)生まれ、三重県出身。大学で社会学や体育学を専攻しながら、ボランティア活動を通じてキャンプやレクリエーションゲームのノウハウを習得。卒業後は、東京都レクリエーション協会連盟(現:協会)の講師として、企業や学校などでレクリエーションゲームを指導するほか、B&G体験クルーズや指導者養成研修の講師としても活躍。TBSラジオ「全国こども電話相談室」の回答者や日本オリンピック委員会強化スタッフを務めるなど、幅広い活動を展開し続けている。
著書:「いちばんやさしいレクリエーションゲーム全集」(成美堂出版)ほか多数。

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第2話船の生活で育まれる仲間の輪

真似から入ろう!

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沖縄の指導者養成研修でレクリエーションの指導にあたった東さん。オフのときはマリンスポーツの教官とヨットを楽しみました


 大学を出た後、企業や団体の依頼を受けてレクリエーションゲームやフォークダンスの指導に励んだ東さん。やがて、B&G財団の事業でも腕を発揮していきました。

 「研修期間が短くなった現在では行っていませんが、かつては沖縄の指導者養成研修でも各種マリンスポーツの講義に加えて、私が担当するレクリエーションの講義がありました。企業や団体の人たちには楽しんでもらう目的でゲームを教えていましたが、指導者養成研修ではレクリエーションを教える立場の人材を育てなければなりません。ですから、とてもやり甲斐のある仕事でした」

 指導者養成研修では、誰もが熱心に学んでくれたと振り返る東さん。研修が終わって皆が海洋センターに戻ったらすぐ実践できるよう、東さんは自分が持つ指導のノウハウを1つ1つ伝えていきました。

 「研修が始まると、『まずは、私の真似をしてください』と言いました。人前で真似ができるようになればしめたもので、そこから自信がついていきます。また、研修生の誰もが真似をするうちにちゃんと自分の色を出せるようになっていきました」

 自分の色が出せるようになったのは、「皆が、指導者になるんだという強い自覚を持っていたからです」と、東さんは指摘します。研修を通じてレクリエーションの理解者が増えていくことに、東さんも大きな期待を寄せていきました。

おいしい仕事

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1986年のB&G「若人の船」に乗船したときの東さん。レクリエーションの若き指導者として船内に笑顔を広めていきました

 東さんは、B&G「体験クルーズ」にも初期の頃から講師として何度も乗船してきました。最初の航海は、昭和50年代に東京~沖縄間で実施した「国内体験航海(勤労・青少年の部)」でした。

 「これは、働く青少年に海を理解してもらうための航海で、私の役目はレクリエーションゲームを通じて、全国から集まった参加者同士のコミュニケーションを高めることでした」

 航海中はもとより、沖縄に着いてからもさまざまなゲームを提供した東さん。寄港地活動の拠点となった沖縄海洋センター(現:マリンピアザ オキナワ)ではキャンプファイアを行い、プールに浮かべたポンツーン(浮き桟橋)の上に焚き木を組み、参加者の代表がたいまつを手に泳いで渡って点火する演出を考えました。

 「この後、『若人の船』や『少年の船』などにも乗船しましたが、いずれの場合も、私の仕事は参加者の心を解きほぐして仲間のコミュニケーションを高めることでした。知らない者同士が船という限られた空間のなかで生活を共にし、ときには船酔いに悩まされることもあるわけですから、こうしたストレスから皆を解放してあげる必要があるのです」

 当時の航海では、英会話教室とかワープロ教室といった座学のプログラムも数多く組まれていました。そのため、揺れる船内で机に向かっていると気分が悪くなる人も出てきたため、楽しいゲームで体を動かすことができる東さんの講義は人気がありました。

 「揺れる船内では、気の緩みからケガをすることもあるし、海に落ちる危険もあるので、常に点呼を取るなどして船内生活にはそれなりの厳しさが求められます。ですから、こうした管理的な仕事にあたるB&G財団のスタッフの皆さんは、いつも神経を使っていなければならず、とても大変だったと思います。その一方、いつもゲームをしながら参加者の笑顔に囲まれていた私は、実においしい仕事をさせていただいたと思います」

 そう語る東さんですが、大勢の参加者の気持ちをつかんで笑顔を引き出す仕事は、誰もが簡単にできるわけではありません。東さんには、東さんなりの努力がありました。(※続きます)

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1986年のB&G「若人の船」は、オーストラリアまで行きました。現地でも東さんは笑顔を絶やしませんでした

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ふじ丸のホールで子どもたちにレクリエーションを指導する東さん。体を使って遊ぶことで、船酔いも吹き飛びます