活動記録 2019年度 B&G指導員研修会 開催

活動記録 2019年度 B&G指導員研修会 開催

2020年1月30日(木)、31日(金)の2日間、日本財団ビル(東京都港区)で「2019年度B&G指導員研修会」を開催しました。

全国192ヵ所の海洋センターから213人の指導者が参加し、「子どもたちの変化に対応できる指導者とは」をテーマに最新の指導法を学ぶとともに、全国から集まった指導者が情報交換を行い交流を深めました。

開会あいさつではB&G財団の菅原悟志理事長が、「指導者は現場で直接利用者に接し、社会の変化をいち早く感じとる。感じた事を財団にも伝えて欲しい。同じ目的を持った仲間達と共に地域の活性化を進めて欲しい。」と話しました。

講義に真剣に耳を傾ける指導者の皆さん

1日目:基調講演

「信頼と個性の尊重でつなぐ組織論」

元ラグビー日本代表/神戸製鋼コベルコスティーラーズアンバサダー 大畑 大介

元ラグビー日本代表 大畑大介氏の基調講演は、「信頼と個性の尊重でつなぐ組織論」と題してお話いただきました。

現役時代の激しい試合と満身創痍から立ち上がる不屈の闘志を紹介する映像の後、大畑氏が登場されました。

小学3年生の時にラグビーを始め、「自分の居場所がないと感じていた時、様々な能力が集まりチームを作るラグビーでは、自身の俊足という特性で自分の居場所を見つけることができた」とラグビーから得た経験をもとに、チームの中で一人一人が自分の個性を発揮することの大切さについて語りました。

 

1日目:講義①

「子どもたちの健やかな脳発達のために~アウトドア育脳のすすめ~」

東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長 瀧 靖之

東北大学教授で医師の瀧靖之氏には「子どもたちの健やかな脳発達のために~アウトドア育脳のすすめ~」と題し、アウトドア活動が子どもの脳発達にもたらす有用性についてお話しいただきました。

講義冒頭では脳発達の仕組みについて、0~1歳児は感覚の分野が発達するので「抱く」、「笑顔を見せる」などの愛着形成が重要であることなど、年齢によって脳の発達する領域が異なることから、年齢に合わせて子どもへの接し方や与える刺激を変えることが脳発達に有効であると説きました。さらに人が能力を獲得する際には「模倣」から入ることを指摘、親や指導者が子どもと一緒に体験、楽しむことが大切だと話しました。

また、幼い頃何かに没頭した「熱中体験」が脳発達に大きく関わり、特に「自然体験活動~アウトドア育脳~」の効果が高いと話しました。その理由は、自分ではコントロールできない「自然」という環境の中では、状況判断能力、コミュニケーション能力が養われ、自然の奥深さを体感し知的好奇心が高まるのなど、脳発達に重要な要素がすべて詰まっていると説明しました。

 

1日目:講義②

「重大事故が起きる前に考えるリスクマネジメント~成育基本法の施行をふまえ考える、学びと事故予防の両立」

プラムネット株式会社 アウトドア共育事業部統括リーダー 渡辺 直史

教育や保育分野の従事者向け研修プログラムを年間100本以上開催している渡辺直史氏に、自然体験活動で起こりえる事故やリスクへの備えについてお話しいただきました。

リスクマネジメントの「3つのポイント」として、1つめに「過去の事故事例に学ぶ」を挙げ、一見不慮の事故と思える案件も、なぜその事故が起きたのか要因を洗い出すことによって、どうすれば避けることができたか、二度と同じような事故が起きないよう備えることができると話しました。

2つめに「リスク対処の優先度を見極める」を挙げ、事故が起きた時に与える身体的ダメージや発生する頻度などを総合的に判断し、優先度を決め、効率よくリスクに対処していくことが必要だと話しました。

3つめに「学びのリスクに対処する」を挙げ、自然体験活動のすべてのリスクを排除することは不可能であるが、危険だから実施しないではなく、リスクを最小化した環境を整えて実施することが大切だと話しました。これに補足して「子どもはケガから学ぶ」という考えはリスクの放置、指導者の過失につながることから避けるべきだと指摘しました。


2日目:講義①

「ペップトーク やる気を引き出す魔法の言葉」

一般財団法人日本ペップトーク普及協会 代表理事 岩﨑 由純

ペップトークとは、スポーツの試合前に指導者が選手を励ますために行う、短い激励のスピーチを意味します。現在は、スポーツ界のみならず、教育現場やビジネスなど幅広い分野で注目を集めています。激励のプロである岩崎氏の講義はエネルギッシュかつポジティブ!時折ユーモアを交えながら軽快に講義は進んでいきました。

ペップトークの特徴は5つで「短く」「わかりやすく」「肯定的な言葉を使い」「魂を揺さぶり」「人をその気にさせること」。構造は、起こった事象の事実を受け入れ、とらえ方をポジティブに変換した後、「してほしいこと」へ変換し伝え、最後に「背中の一押し」の言葉をかけることと解説しました。指導の中で「ミスをするな」と否定的な表現をしてしまうことがありがちですが、これはかえって「ミス」をイメージしてしまい逆効果であるといいます。「~するな」ではなく「~して欲しい」ことに変換し相手に伝えることが重要だと述べました。

 

2日目:講義②

「海の現状 海洋ゴミ問題」

日本財団 海洋事業部 宇田川 貴康

現在地球規模で深刻となっている海洋ごみによる汚染問題について日本財団 海洋事業部 宇田川 貴康氏に講義していただきました。

世界では年間478~1275万トン、日本でも800万トンのプラスチックごみが海に流出しているといいます。プラスチックは分解しにくく、もろく粉々になりマイクロプラスチックとして拡散し、海洋生物の生命に危害を及ぼしています。

「これ以上海にごみを出さない」という社会全体の意識を向上させ、海の豊かさを守るための「CHANGE FOR THE BLUE」という日本財団の取り組みを紹介。またその取り組みの一つである海洋ごみ削減のための清掃活動はB&G財団でも「海ごみゼロフェスティバル」として実施しおり、28,000人の方にご参加いただきました。

 

2日目:事例発表①

「学生ボランティア養成による地域の活性化について」

大分県中津市耶馬渓B&G海洋センター 中村 大悟

地域の人材の活用をテーマに2センターより海洋センターでの活動事例を発表いただきました。

1つ目は大学生を活用したセンターの活動事例として大分県中津市耶馬渓B&G海洋センターの中村 大悟氏が登壇。

同センターは2017年に海洋クラブが誕生し2018年から活動を開始しました。海洋性レクリエーションを中心とした様々なイベントを実施してきましたが、指導者の人員が足らず参加者を制限することがありました。これを解決するためにB&G財団の「学生ボランティア養成事業」を活用。参加者の募集方法、研修の実施内容、学生ボランティアに継続的に事業協力をしてもらうコツなどについてわかりやすく解説していただきました。またこの制度を実施したことで人員不足解消のみならず、大学生と耶馬渓地区の交流が生まれ、地域の活性化にもつながったと話しました。

 

2日目:事例発表②

「あっソレ!いいかも!!」~八尾海洋センター流イベント企画~

富山県富山市八尾B&G海洋センター 伊藤 実花

2つ目は、地域住民を幅広く活用したセンター事業の事例として、富山県富山市八尾B&G海洋センターの伊藤 実花氏が発表しました。

同センターは温水プール施設でありながら水泳教室以外に、「新聞バッグづくり」や「お花見ウォーク」など様々な事業を展開。八尾流のイベント企画から実施までの極意を解説しました。

新たなイベントを企画する際に講師の確保に苦労するセンターが多い中、八尾センターでは、海洋センター利用者の紹介や利用者本人に講師を依頼しイベントを実施しています。また財団事業である「BG塾」を開催した際には、普段水泳のコーチとして勤務している外国人スタッフを講師に、英語教室を開催するなど、地域住民やスタッフを人財として有効に活用していました。

身近な方へ依頼することにより、無理せず実施でき、地域に新たな協力者が生まれ、同施設を中心に地域・世代間の交流が生まれるようなったと述べました。


最後にあいさつしたB&G財団古山透常務理事は「毎年B&G指導者が誕生しているのは社会が皆さんのような指導者を求めている証拠である」とし、「今後も資質向上に努め子どもたちや地域住民の皆様を支えていただきたい」と述べました。